第106話
今日もとある喫茶店の日常が過ぎていく。
ナナミさんがサンドイッチを頬張り終えると尋ねてきた。
「ねぇ、マスターさん……。『サンドイッチ』と『サンドウィッチ』は本当はどっちが正しいの……?」
「結論から言うとどちらでも良いです。似たようなもので『バイオリン』と『ヴァイオリン』がありますね」
「そう……、お笑いの方は『サンドウィッチマン』だけど……」
「ウィッチにした理由は知りませんが、由来は昔、真ん中にもう一人痩せたメンバーがいたトリオだったからだそうですよ。ちなみに『サンドイッチマン』と言えば昔は看板をぶら下げて宣伝して歩く人のことだったんですけどね。最近は見かけなくなりましたけど」
「そんなお仕事をされていた方もおられたのね……」
そのとき、柄の悪い男が身を乗り出して話に割り込んできた。
「なぁ、お嬢ちゃん、随分と金持ちそうじゃねーか。ちょっと金貸してくんねぇかなー? ちゃんと利子付けて返すからさー」
「お客様、他のお客様にご迷惑です。お代は結構なので今すぐお引き取りください」
「けっ! 金持ちなんざ俺らが日銭稼いだ上前はねて暮らしてんだ。いいご身分なこったぜ全く!」
――― カランコロン ―――
野郎……、体よく無銭飲食して行きやがったな......?
「ナナミさん、申し訳ありません。お怪我はございませんか?」
「びっくりした……。もしかしてあの方、昔サンドイッチマンのお仕事でもされていたのかしら……?」
「いや……、そんな地道な仕事をするようなタイプじゃないでしょう」
―― あれはただのルサンチマンだから。
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