第7話 選別者(深海さんからいただいたお題「たまご」)
ぼくはたまごがだいすき。
神さまから好きなものを好きなときに食べてもいいっていわれているから、いつもこうしてお空のうえから下界を見てる。
夜空にうかぶお星さまみたいにピカピカひかるたまごはそれぞれ色も味もちがうので、ぼくはいつだって夢中になってこれだ!っていうたまごをさがしてるんだけど。
なかなかないんだよね。
たまごには食べごろっていうのがあって、さいしょは小さな白いたまごなんだけど少しずつ温められて大きくなって色づいていく。
小さいたまごは固くておいしくないんだ。
乳歯を噛んでいるみたいなかんじ。
おすすめしない。
さくら色のたまごはほんわか甘くて、黄身色のたまごは味が濃い。
すみれ色のたまごはお花の香りがして、空色のたまごはソーダ水みたいに口の中で弾けて楽しいんだ。
みどり色のたまごはちょっぴり苦くて、赤い色のたまごはきゅんっと甘酸っぱい。
茶色のたまごは香ばしくて、銀色のたまごはピリリと刺激的だ。
だけどぼくのお気に入りは金色のたまと虹色のたまご。
食べるとしあわせになれる。
ふわふわと温かくて優しい気持ちに包まれるから。
金色は誰かのために頑張って努力した人のたまご。
虹色は無理だって言われても夢を諦めなかった人のたまご。
それをぱくりとぼくが食べれば神さまがOKをだす。
そうするとそのたまごは羽化して育てた人へはご褒美が与えられるんだ。
でも。
成功、名声、地位、お金。
それらはなぜか人を狂わせるから。
ぼくは食べるのをちょっとためらっちゃうんだ。
それでもぼくはたまごがだいすきだから見つけたら食べちゃうんだけどね。
そのあとでどうなるかなんて、ほんとはぼくには関係ないことだから。
さあ。
今日は見つけられるかな?
おいしいたまご。
すてきなたまごを。