第2話 お買い上げありがとうございます(中條利昭さんからのお題「焼きそば」)
香ばしいソースの匂い。それから鰹節と青のり。
はふはふと途中で息をしながらずるずる軽い音を立て吸い込まれていく麺。
美味そうに食べてもらっている焼きそばを見ながら俺は頬を膨らませる――いや頬ではなく体全体か。
そもそも膨らませているのではなく丸められているのだが。
熱い鉄板の上でコロコロ転がされているお手軽な俺とは違い、あいつは腹を満たす食事として認識されている。
悔しい。
真ん丸な俺。
ほっそりとしていてスタイルがいいあいつ。
キャベツとタコと紅ショウガしか詰まっていない俺と、たくさんの野菜を侍らせてつやつやと光るあいつとでは勝負にすらならない。
なに?お前にはたこがあるじゃないかだって?
ふざけるな!俺にはタコしかないんだよ!
あいつは野菜だけじゃなく豚肉もいるんだぞ!?
そもそも小腹を埋めるたこ焼きと腹を満たす焼きそばでは同じ舞台にすら上がれない。
これが泣かずにはいられ――あ!いって!?
まてまてまてまて!お前、今、刺しただろ!?おい!あ、やだ!いったぁい!?
やめて、いたいのぉ。
こんの!ヘタクソめ、あ?え?終わり?ん?お客さま?
あ、お買い上げありがとうございます。え?え?うそ?ちょ、好みなんだけどこの子……俺のたこ焼き人生も捨てたもんじゃないな!
こんなかわいい子に食べてもらえるなんて――って!いったぁあああいい!!