願い事の束
たくさんの願い事がある。
あるのはわかっている。
わかっているのに
はっきりと言えない。
そんなに願っていない
からか。
よくわからない。
よくわからないままの
願い事を集めて、
この秋に、並べてみようか。
願い事コレクション。
観客は、自分だけ。
ぼんやりとでも、
浮かんでくるものから。
えっと、えーっと
なかなか浮かばない。
死ぬときに何を後悔するか、
これなら浮かびそう。
そうか、嘘をつかないこと。
人にも自分にも、
ありのままを伝えること。
いい格好、しないこと。
人にも自分にも、
背伸びして見せないこと。
願い事コレクションの、
初めに出てきたことは、
人のことでも、物のことでもない。
自分の内側のことだった。
この二つを気にしたままの死は、
たいそう、後悔する気がする。
つまりは一番の、願い事。
何はさておき、願う事。
それだけ嘘をつき、
それだけいい格好をして、
生きて来たんだな。
生きることは後戻りのないこと。
さあ、それからなんだろう。
一つ一つ並べてみよう。
願い事コレクションは、
どうやら詩人の役目らしい。
一つ一つ並べていって、
束にして、心のスワッグへ。
アコースティックギターの
音が好きで、路上の演奏が
生きがいだった。
またいつかと日々を流してきた。
そのいつかに、願い事が叶って、
好きな音を奏でていると喜んでみた。
頭に浮かんでくる姿は、
年をとり、折れそうになっても、
顔は笑っていて、嬉しそうだから。
こんなに嬉しそうな自分を、
見ることができて、
夢見ることなら素晴らしいだろう。
だから、夢見ることなら、
あの人にも見せてみようとした。
こんな人だよと見せようとした。
あの人は、もしかしたら、
振り向いてくれるかもしれない、
そんな衝動が刹那に散らかった。
どこかしら頼りない。
どこかしら足りてない。
夢見ることなら素晴らしいだろうに。
心のスワッグを壁に飾って、
ときおり、静かに眺めてはどうだろう。
夢見ることなら、それも必要だった。
願うこと、夢見ることなら、
ちょうどいいくらいの思い方があって、
誰もがそれを見つけたいのだろう。
自分の頭の中は、生きている間中、
外側を動かすハウツーもので溢れ、
誰もがそれを感じていることだろう。
ねえ、心のスワッグ、飾ろうよ。