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ボクがお姉様と呼ばれるなんて  作者: ユーリー
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乙女の園にきちゃいました

 すれ違うほぼすべての生徒が私と、隣を歩く天童天音様に挨拶をかわす。

「ごきげんよう、お姉様!天音様!」

「ごきげんよう。」

私と天音はすれ違う皆々に挨拶を返しながら教室へ向かう。

ここは日本でも有数のお嬢様学園、聖アリエル女学園。私の隣を歩く天童天音様は、一流企業である天童グループの御令嬢だ。そして私は天音お嬢様のお付きを任されている一条葵。私にはお嬢様にしか知られていない秘密がある。これが周りに知られれば人生が終わると言っても過言ではない。私、一条葵は。いや、僕は男だ。

(あ〜、どうしてこんなことになったんだろう・・・。)


 ある日、僕は雇い主である天童会長に呼び出された。

「突然だが葵くんには天音と同じ学園に通ってもらうことになった。」

「お嬢様と同じ学園って・・・。え〜〜っ!!??どういうことですか!?会長!!女学園ですよね!?」

僕は驚きのあまり叫んでしまった。

「実はな、敵対する企業から狙われていてな。しばらくの間、安全のため天音には学園の寮に住まわせることにした。そこで天音の護衛のため、天音と同い年の君を転入させることにした。もちろん天音と同室だ。理事長には私が話をすすめておく。一応形式として編入試験は受けてくれ。まぁ君なら問題ないだろう。」

「でも女学園に男の僕が編入するわけには・・・。」

「だから君には女装してもらうことになった。幸いにも葵くんは男の割には細身で顔もかなりの美形だ。あ〜、天音。女装のことに関してはお前にまかせた。」

会長が私の隣で話を聞いていたお嬢様に話しかける。

「まかせてください。お父様。さぁ、葵。ちょっとこっちにいらっしゃい。」

お嬢様がそう言うと僕を部屋へ連れて行った。

そして、軽いメイクを施し胸にはシリコン製のリアルな乳房が貼り付けられた。よほど間近で見なければ本物と区別できないほど精巧に作られている。そして女学園の制服を着せられ会長のところへ戻る。

「いや〜、予想以上だっ!誰がどうみても女生徒にしか見えないな。これなら全く問題ないだろう。葵くん、これから天音のことは君に任せたからな。これは命令だ。」

「う〜・・・。かしこまりました。」

そして僕、いや私一条葵は女生徒としてお嬢様学園に編入することになった。


 そしていよいよ運命の編入初日がやってきた。

(どうかバレませんように…)

担任教師が壇上でみんなに話しかける。

「今日は転入生を紹介します。一条さん、中に入って自己紹介をお願いします。」

私はゆっくりと教室に入り、壇上にあがる。

「みなさま、はじめまして。今日からこのクラスに編入することになりました一条葵と申します。どうぞよろしく申し上げます。」

自己紹介を終えると、あちらこちらでひそひそ話が聞こえる。

「はい、じゃあ一条さんの席はあそこの空いている席にお願いします。」

先生が指差した席に着席すると、となりの席の子が小声で話しかけてきた。

「私、東雲しののめ円香。まどかでいいわよ。よろしくね。わからないことがあれば何でも聞いていいから。」

円香さんはボーイッシュな感じの女の子だ。

「あ、はい。よろしくお願いします。私のことも葵でお願いします。」

小声で返事を返す。

「はい、じゃあ今朝のホームルームはここまで。」

先生が出ていくと同時に私の席の周りは人だかりになった。

「一条さんっ!編入試験の成績が満点という話は本当ですの!?」

「どうしたら一条さんみたいな美しい女性になれるんですか!?」

次々と質問が飛び交う。

「いえ、試験の点数なんて私は知らされておりませんのでわかりかねます。」

1つ1つ質問に答えていく。どうやら男であることはバレていないようで一安心した。

「みなさん!そこら辺で質問責めはやめていただけますか?葵が困っているわ。」

止まらない質問に答えていたらお嬢様が話しかけてきた。

「あ、天音様!申し訳ありませんでした!一条さんもごめんなさい。」

「いえ、大丈夫です。」

すると円香さんが口を開く。

「葵ちゃんって天音さんと知り合いだったの?」

「はい、実は私天音お嬢様とは幼馴染なんです。小さい頃に天童会長に引き取られてお嬢様の側役をさせて頂いております。」

幼少の頃、天童グループの子会社の社長だった父が亡くなった時、身寄りがなくなった私は会長に引き取られお嬢様の世話をするため様々な教育を受けさせてもらった。家ではお嬢様の家庭教師まで任されてもらえるほどになった。


 「あ、そうだ。東雲さん。私と葵なんだけど、今日から寮に住むことになったのだけれど良かったら案内をお願いしてもらえるかしら?」

お嬢様が円香さんに話しかける。

「あ、うん、わかったわ。じゃあ放課後一緒に帰りましょう。」

同じ寮に住む円香と3人で帰ることになった。

そして放課後、学園と同じ敷地にある寮に到着した。

「ここがこの学園の学生寮よ。あ、下履きはここで脱いで靴箱に入れてスリッパに履き替えてね。」

そして中に入るとリビングがあり、向こうには広々としたキッチンがあった。

「食事は各自用意して食べてね。キッチンは自由に使ってもいいそうだけどこの寮には料理できる人が一人もいないからみんなお弁当とか外食ばかりね。」

キッチンを見回すとなかなか使い勝手がよさそうだ。

そして寮内を見て回る。お風呂はかなりの広さがある。

「お風呂は24時間いつでも入れるわ。まぁみんな大体夜11時までには済ましてるわね。」

なるほど、なら私が入るなら11時以降ということになる。

「ここが天音さんと葵ちゃんの部屋みたいね。もう荷物が運び込まれてるわ。」

部屋の中に入るとダンボールがたくさんあった。

「あとでみんなに紹介するから、全員揃ったら呼びにくるわね。」

円香さんがそう言うと自室に戻っていった。


 「葵、初日お疲れ様。疲れたでしょう。」

お嬢様が話しかける。

「そうですね、バレないか緊張しっぱなしでした。」

「バレるはずないわ。誰がどこからどうみても美少女にしか見えないもの。私より美しいのが腹立つくらいよ。」

それはそれで落ち込むなぁ・・・

お嬢様と荷解きをしながら会話する。

「それから、これからはお嬢様はやめてちょうだい。クラスメイトになったのだから。」

「わかりました。では天音様と呼ばせていただきますね。」

「様も禁止!」

「では、、天音さん?」

「まぁそれでいいわ。」

 

 しばらくすると円香さんが呼びに来た。

そしてリビングに行くと円香の他に2名の女生徒が座っていた。

「はじめまして。私はこの寮の寮長をしてます鳳凰院ほうおういん結衣と申します。一条さんとは同学年ですね。クラスは違いますが。」

結衣さんはいかにも大和撫子な感じの女性だ。

「あ、あの。はじめましてなのです天童お姉様、一条お姉様。はるかは1年の皆本遥なのです。」

小柄で幼く見える後輩の女の子だ。

「みなさん、よろしくお願いします。私のことは葵って呼んでいただいてかまいません。」

「じゃあはるかは葵お姉様って呼びますなのっ!」

遥さんが答えた。


「じゃあ、これからよろしくね。葵ちゃん、天音さんっ!それで、今夜は2人の歓迎会をやりたいんだけど、何か食べたいものはある?出前をとろうと思うんだけど。」

円香さんの提案に私が答える。

「えっと、それなら私に作らせてもらえませんか?私どうも外食とか出前は苦手でして。」

「えっ!?でもいいの?葵ちゃんは主役なのに・・・。」

「はい、私料理が趣味みたいなものですから。ちょっと買い物に出てきますね。」

立ち上がり出かけようとすると結衣さんが話しかけてきた。

「あ、葵さん。領収書をお願いしますね。食材は寮費で落ちますから。」

「わかりました。では行って参ります。」

そして食材を買い出しにでかけた。


 買い物から戻り、早速料理を始める。

前菜、オードブル、スープなど順番に作っていき、完成した頃みんなを集めた。

リビングに集まったみんなが驚いていた。

「なにこれすごいっ!みんな葵ちゃんが作ったの!?」

「葵さん素晴らしいです。この寮でこのような豪華な食事は初めてお目にかかりました。」

「葵お姉様すごいです!」

次々と声が上がった。そして天音さんも話しかける。

「さすがね葵。いつもながら美味しそうだわ。」

「ちょっと今日は特別なので頑張ってみました。みなさんのお口に合えばいいのですが。」

そして全員で食事を始めた。

「わ、これめっちゃ美味しいんですけど!」

円香が前菜を一口食べると声を上げた。

「そうですね〜。口の中がとろけそうです。」

結衣も賛同していた。

「葵お姉様すごいです!こんな美味しい料理は初めて食べました!これに比べたら学食なんてファストフードです!」

遥が興奮気味だ。

「みなさん大げさですよ。私なんてまだまだです。」

「いいえ、葵の料理は素晴らしいわよ。でなければ天童家の食事は任せてもらえないわ。」

天童家にいた頃は専属料理人がいるにもかかわらず時間がある時は私が料理を任されていた。

食べていると円香さんが話しかけてきた。

「葵ちゃんのこと色々教えて?」

そんな話をしながらみんなで食事をしたのだった。


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