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ごみステーション

深夜2時、私はごみをまとめはじめた。

ごみステーションのルールでは、ごみは当日の朝6時半から8時半の間に出すことが取り決められている。

しかしそれを律儀に守っている者は多くない。

私もその一人で、毎度こんな時間にごみを捨てに行く。

誰に見られることもなく、車も通らない路地。

私は視力が悪いのだが、面倒くさがりな性分のため眼鏡をかけずにごみを捨てに行くのが常だった。


アパートを出て徒歩2分の場所にあるごみステーションまでは、目をつぶっていても分かる。

薄ぼんやりと灯る街灯の下がそれだった。

よく見えない目でこらして見ると、白い袋が既に置かれていた。

どうやら私の他にもごみを捨てている輩はいたようだ。

一抹の罪悪感もこれでなくなり、手にぶら下げた袋をゆっくりごみステーションに置いた。

あとは帰るだけ。そう思って振り返る。

私のすぐ後ろには、小柄な老婆が立っていた。


すんでのところで悲鳴を抑えた。

老婆は私を憤怒の顔で睨みつけている。

左手には包丁を持っていた。

「猫がなぁ、荒らすん。カラスもごみ、漁るん。ごみがなぁ、ごみがなぁ」

老婆は私の横をすり抜け、ごみ袋に何度も何度も包丁を突き立てた。



彼女はこの界隈で有名な、ゴミ屋敷に住む徘徊老人なのだという。

あれ以来、深夜にごみを捨てる事はなくなった。


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