(99)企業
企業とは個人では成し得ない生業を企て、世の中に貢献する組織である。決して金儲けで肥え太ることを最終目的とする組織ではない・・とは、いつぞや聞いたような聞かなかったような夜間の講義である。^^ それは分かっているのだろうが、厳しい生存競争をかけ、それでも企業は企業を続けねばならないのが辛いところだ。^^
ここは、とある中堅企業である。なんとか同種の大手企業に打ち勝とうと社長の皺宮は、社長椅子で腕組みをしながら策を練っていた。そこへ、入ってこなくてもいいのに秘書室長の若肌が社長室へ陽気に入ってきた。
「ははは…いつもながら、お元気そうでなによりでっ!」
「君はいつも、そんな馬鹿なことを言って入ってくるが、なにか心配ごとは他にないのかねっ!」
「はあ、そういう社長は、いかがなんでございましょうか?」
「私かっ!? 私はいつも会社のことで悩んどるよ。能天気な君と一緒にしてもらっちゃ困るっ!」
「いや、それは余りにっ! ははは…」
若肌は血色のいい頬を紅潮させて愛想笑いした。愛想笑いで気持を暈すところがこの男の得意とするところで、今まで一度も社長の機嫌を損ねたことがなかったのは、ある種の特技とも言えた。
「それはそれとして、大手に打ち勝つ、何か妙案でもないかね、君?」
「と、申されますと?」
「分からないか? 長髪グループに先を越されそうじゃないかっ!」
「ああ、長髪グループですか…。でしたら! こちらは角刈りの束子頭でやり返しゃ、いいじゃありませんかっ! ははは…」
「ほう!! 束子頭ねっ! …それは気づかなかったぞっ! よしっ! すぐに専務を呼んでくれたまえっ!」
皺宮は何が頭へ浮かんだのか? 急に相好を崩した。
「分かりましたっ!!」
若肌は陽気な早足で社長室から出ていった。
危機に瀕した企業が、企業としてそれでも存続していくには、奇抜なアイデアが必要なのかも知れない。^^
完