(85)もの好き
他人がやることを僻目で見て、口にする言葉が、もの好きという言葉である。僻目とは、自分ならそうはしない…という気持を冷めた目で見たときに使う言葉だが、『おたくも、もの好きですなぁ~』などと、口にして使われる。言われた方は、苦笑いしながら「…」と黙っているだろうが、それでも内心は、『大きなお世話だっ!』くらいの気分で怒れるに違いない。^^
朝から、とある会場で一円玉彫刻会と名売った趣味の集いが催されている。この同好会に出席する場合、会員は自宅で一点、創作した作品を持ち寄り、会場でもう一作品、懇談しながら創作する・・という会則になっていた。会員になるには会員一人の紹介が必要だったが、会費などは一切、不用だった。というのも、主催者の会長が、とある大財閥のご隠居・・ということもあった。むろん、会の後は懇親会をかねた食事会、飲み会となっていた。
「おおっ! これは大作ですなっ!」
一人の会員が、となりの会員の作品を心では、『もの好きだなぁ~』と思いながら、それでも笑って褒め称えた。
「いやぁ~、さほどのものでも…」
言われた会員は、『もの好きだなぁ~と思ってるくせに…』と思いながら、それでも紋切り型で謙遜した。
このように、もの好き・・という言葉は、直接、口にすれば角が立つから、心で思うもののようだ。^^
完