(79)のんびり
誰しも、のんびりしたい…と思うだろう。しかし、世の中はそう甘くなく、そうすることを許さない。やれやれ、やっと片づいたか…と茶でも啜ろうと思っていると、また片づけなくてはならない雑事が舞い込んでくるものだ。それでも、人はめげずに頑張っている訳だ。頑張らないと人ではいられなくなる・・ということもある。これは決して豚になるとか鶏、牛になるといった類いの話ではない。^^ 飽くまで、人として生活できなくなる・・という意味だ。
とある温泉である。一人の老人が、いい風情の景色を眺めながら、のんびりと露天風呂を楽しんでいる。少し離れた別の一角の露天風呂にも一匹の猿がのんびりと湯に浸かり、いい風情を楽しんでいる。老人は、ようやく人心地ついたのか湯から上がろうとした。そのとき偶然、猿も猿心地がついたのか、湯から上がろうとした。両者は、バッタリと鉢合わせした。
「ああ、お宅もお入りでしたか?」
老人は思わず猿に語りかけた。
「キキキィ~~~![いいお湯でしたなっ!]」
猿ものんびりしたのか、赤ら顔を一層、赤くして返した。両者に会話が成立したのである。
のんびりすることで緊張の糸が解れ、両者間に会話ムードが生まれることになる。^^
完