(76)もう、ひと息!
最終目的に近づいてはいるが、その目的には到達していない状況・・こんな場合を人は、もう、ひと息! と言う。最も辛いところだが、それでも人は最終目的を目指して、なにくそっ! と頑張る訳だ。この根性が人の心理面のいい肥やしとなり、人はひと皮、剥けることになる。まあ、中には全然、剥けないお方もおられるのだろうが…。^^
ここは、とある飲み屋である。二人の男が飲みながら小皿の肴に箸をつけている。
「もう、ひと息! じゃないかっ! がんばれっ!」
「お前は他人ごとだからそう言うがなっ! 俺の正義感からすりゃ、絶対に許せんのだっ!」
「検面調書か…。あんなもの、なけりゃいいのになっ!」
「いや、そういう訳じゃないんだが…」
「実況見分、供述とか調書が多いよなっ! 公文書はっ! ありゃ長所じゃない、短所だっ! 俺は事務方だから検面は関係ないが、支出負担行為支出調書っていう長~~い名のがあるぜっ!」
「調書は短所か。ははは…上手いっ!」
「お二方、調書づいてますなっ! 調書づいたいいところで、今日はサービスの一品をっ!」
二人の間に割って入った店主は、二人が座るカウンターへ追加の小皿を置いた。
「調書づいた・・調子づいた。ははは…親父さんも上手いっ! ごちになりますっ!」
「いいんですよっ! 私ゃ正義の味方ですからなっ! 罪を括って人ほどくぅ~ と願いたいもんでねっ!」
「よっしゃ! もう、ひと息! やってみるかっ!」
「そう、こなくっちゃ!」
そのあと、三人の笑う大声が店内に谺した。
まあ、もう、ひと息! と、それでも頑張る価値はあるようだ。^^
完