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(72)人と機械

 ここ最近、社会は機械なしでは存在し得ないまでに発展している。今、私が入力しているPC[パソコン]にしたってその一つなのだが、どうも今一つ実感にとぼしい存在なのである。とはいえ、それでもこうして使っているのは、使わないと時代に取り残される…という危機感がなくもないからだ。というのは建て前で、結構、重宝しているのは確かだ。機械の便利さというのはすごいもので、人を数人集めても到底とうてい勝ち目などないだけの力を保有しているのである。人は機械に比べ、正確さでは一歩いっぽおとるとはいえ、それでも機械にはない意外性、独自性、感情面などで機械よりはすぐれている。よくよく考えれば、機械を作ったのは人であり、機械が機械を作った訳ではない訳だ。^^

 未来のとある高等裁判所である。廷内ていないでは最高裁からの差し戻し審の審理が行われている。

「ですからっ! 何度も申しますが、見ていた機械がいるんですっ!」

「画像データが残る監視カメラならともかく、ただの案内ロボットじゃないですかっ! そんなもの、証拠にも何にもならんでしょ!?」

 丁々発止ちょうちょうはっしのやり取りが検事と弁護士の間で飛びっていた。そしてついに、弁護側が証人申請をしていたロボットが入廷し、証人席へと座った。

「あなたはロボットですか?」

『ハイ、ワタシ ハ、デキノイイ ロボット ノ グズオ ト モウシマス。ツクッテイタダイテ イウノモ ナンナンデス ガ ジブンノナマエ ハ スキデハ アリマセン』

 裁判長はそんなことはどうでもいいんだっ! …とは思ったが、口にはせず冷静な口調で審理を続けた。

「あなたは、事件を見ていたそうですね?」

「ハイ ヒコクニン ガ ヘヤ へ ハイルノヲ ミマシタ。デルノモ ミマシタ。ミマシタ ガ ハンコウ トカハ ミテオリマセン コックチョウ」

 裁判官は、私はレストランのコック長ではないっ! と怒れたが、グッ! と我慢して、さらに審理を続けた。

「被告人が出入するところは見た訳ですね?」

「ハイ ソレハ 98%ノ カクリツデ タシカデス」

「と言いますと、残りの2%は?」

「ヨク ワカリマセン ノデ コレニテ シツレイ イタシマス サヨウナラ」

 ついに、裁判は成立しなくなった。

 まあ、機械化が進めばこんな事態にはならないのだろうが、それでも人の存在は欠かせない。^^


                  完

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