(68)ちまちま
ちまちま・・聞き慣れない方も多いだろうが、この言葉が日本語として国内の各地で通じるのか? さえも私は知らない。ただ、使ったり聞いたことは過去に何度かある。『ちまちました話だ…』とか『ちまちまやってるな…』などと言って使用される。^^ そう言われて、それでも続けるには、心に一本、筋が通っていないと、『そうだな…』と引いて、やめてしまうことになる。要は、メンタル[心理]面の根性が必要ということだ。人になんと言われようと、それでも引かない信念である。まあ、そんな大げさな話でもないが…。^^
大型連休だというのに、大掃除を一生懸命している奇特な男がいる。隣のご隠居が垣根越しに声をかけた。
「ご精が出ますなっ!」
「ああ! これはご隠居。ははは…ちまちまやっとります」
「いや、結構、結構!」
「ははは…なにぶん、掃除をする暇がないもんで、この機会に…と、始めたようなことで…」
「それは兆条至極っ!」
ご隠居は得意のお武家言葉で労った。
「いや、実はですなっ! 去年の連休は出かけたんですが、大渋滞で難儀をしましたっ!」
「なるほどっ! 真田攻めに梃子摺られ、関ヶ原に遅参された訳ですなっ!」
「? …まあ、そんなとこでしょうか。ちまちまといっこう動かぬ車の中で、それでも待っとりました。ははは…」
「いやいや、失敗は成功の元! これで、同じ失敗は、まずなされますまいっ! ははは…身体にて覚えるが肝要!」
「はあ…」
「ちまちまと長話にてお手を止めてしまいましたなっ! では、これにて失礼つかまつる!」
「ははっ! 申し訳ございませぬっ!」
男は思わず頭を下げ、お武家風の挨拶を返した。
ちまちまとそれでも話していると、いつの間にか気分が移るようだ。^^
完