(63)具合(ぐあい)
いい具合だ・・と言うことがある。具がピッタリと合う訳だ。^^ 具が合わないと不具合となる。それでも放っておけば、阿弥陀さまならいいのだが、悪いことにお釈迦になる。お釈迦さまがそう悪いとも思わないが、世間一般では物や事がダメになった場合によく使われる。お釈迦にならないようにっ! と人々は仕事をし、賢明に頑張っている訳だ。^^
とある家庭のキッチンである。主婦がせっせと料理を作っている。春ということもあり、料理は旬の筍の煮付である。小鍋がコトコトと音を立て、いい具合に煮えている。
「おお、筍かっ! もうそんな季節になったか…」
スゥ~っとどこからとなく幽霊のように現れた主人が、空々(そらぞら)しいことを言う。
「毎年、この頃でしょ!」
主婦がダメを出す。
「ああ。まあ、そうだが…。どれどれ、味は?」
主人は一端、矛を収めるが、小皿を手にして攻めに転じる。
「いいわよっ!」
邪魔とばかりに主婦は防戦する。それでも主人はお玉を手にして煮汁を小皿に少し掬い、味見をする。
「どれどれ…。少し薄いんじゃないか?」
「嫌な人ねっ! これで煮てきたら、いい具合になるのよっ!」
「いやぁ~! いい具合にはならんだろ…」
出来上がったあと、食卓の上に木の芽をあしらった筍の皿が乗る。主人はその一切れを箸で摘み、頬張る。
「オッ!」
「でしょ!」
主婦は、したり顔になる。筍は、いい具合に煮上がっている。
まあ、具合とはこんな感じがいい訳で、それでも! と追い求めることではないようだ。^^
完