(51)雰囲気
同じ内容だとしても、周りを取り囲む雰囲気が違えば、その時々に生じる結果は自ずと異なることになる。いい雰囲気ならいいが、悪いとコトは上手く運ばない。それでも! と抗ってやろうとしたところで、相手は見えない雰囲気だから、人が敵う訳がない。^^
とあるコンサートホールである。夕方近くより始まったクラシック演奏会は、いよいよ佳境[クライマックス]へ入ろうとしていた。当然、ホールはいい雰囲気に包まれ、観客は微動だにせず聴き惚れている。ただ、その中のひと組の男女だけは少し様子が異なった。女性は聴き惚れていたが、男性はウトウトと首を時折り項垂れ、うたた寝をしていた。そして、ついに座席の前へ倒れ落ちそうになったとき、女性が慌てて身体を受け止めた・・と、話はこうなる。^^
「眠ってらしたのっ!?」
「ははは…どうもっ! 残業続きで少し疲れてましてねっ!」
実のところ、男性にとってクラシックは余り興味がなく、管弦楽団が奏でる演奏は、もっぱらいい雰囲気の子守唄だったのである。
「あら、そうなんですの?」
「ええ、まあ…」
このように、自分が好む雰囲気でない場合、それでも言い訳の口実はなんとかつくのである。^^
完