(50)ノボォ~~
ノボォ~~という言葉は普通、使われない。というか、使われる機会が少ない・・と表現した方がいい擬態語の一つだろう。『あの人はノボォ~~としているな…』とかなんとか言われて使われる場合が多い。全国各地で使われるか? は疑問で、? と、首を傾げる人もあるだろう。ノボォ~~とは、まあそんなノボォ~~とした言葉なのである。^^ このノボォ~~は、なかなかのもので、周囲から急かされるように迫られても少々のことでは動じない強みがある。
とある都会の大店舗の新商品売り場である。売り場の前には長蛇の列が出来ている。いっこう前へ進まない列に、ほとんどの人がイライラしている。そこへ一人のノボォ~~っとした人が現れた。この人も列に並ぶ人々と同じように新商品を買いに来た一人だ。
「あの…どれくらい並ばれてます?」
ノボォ~~っとした人は、最後尾に並ぶ人に、ノボォ~~っとした声で訊ねた。
「もう小一時間ですよっ! 進んだのはほんの2mほどですっ! ちっとも進みゃしないっ!! おやめになった方がいいですよ」
「ああ、そうなんですか。どうも…」
ノボォ~~っとした人は、それでもノボォ~~っと並び始めた。
「並ぶんですか?」
「はい、他にすることもないんで…」
ノボォ~~っとした人は、バッグから折り畳み椅子をノボォ~~っと取り出すと、広げてノボォ~~っと座った。
しばらくすると急に人の動きが激しくなり、人々は蜘蛛の子を散らすかのように消え去った。
「どうしたんです?」
ノボォ~~っとした人は、最後尾から二番目に並ぶ人にまた訊ねた。
「売切れみたいですよ。…じゃあ!」
最後尾から二番目に並ぶ人も消え、店の前はノボォ~~っと人だけになった。小一時間したそのとき、店の主人がシャッターを下ろそうと出てきた。
「? お客さん、どうされました?」
「つい、ウトウトしてしまいました。そろそろ帰るとしますか、ははは…」
ノボォ~~っとした人は、そう言うと折り畳み椅子からノボォ~~っと立ち上がった。
「なんだ、まだ並ばれてたんですか? そりゃ~お悪いことをしました。いいでしょ! 一つ、取ってあるのをお売りいたしましょ!」
「いや、それはそれは、どうも…」
ノボォ~~っとした人はノボォ~~っとした声でそう言うと、新商品をノボォ~~っと買い、ノボォ~~っと帰っていった。
このように、ノボォ~~は、それでも続ける持続力があり、しかも、目に見えないオーラのようなご利益を得られる優れた力がある訳である。^^
完