表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/100

(41)花見(はなみ)

 春の陽気に誘われ、植物は一斉いっせいに様々な花を咲かせる。中でも桜は花のトップに君臨くんりんし、どういう訳か人々は桜で花見はなみをする。別に桃だろうが水仙だろうが他の花でいい訳だが、それでも人々は桜の樹々の下に陣取り、飲めや歌えやの花見で盛り上がる。梅見もあるが、どうも梅では今一つ飲めや歌えやにはなりにくい。^^ 桜がそれだけ人々に愛されるのには、どうも日本人の脳内に植えつけられた潜在意識がそうさせている向きがある。それを物語るのが桜前線とか何分咲きなどという言葉だ。日本人は桜を花見することで春の到来とうらいを実感しているふしがなくもない。

 満開の桜の樹の下で二人ふたりのご隠居が恒例こうれいの花見で盛り上がっている。毎年、満開の頃になるとスゥ~っと現れ、同じ樹の下で盛り上がっては、またスゥ~っと消え去る連中だ。

「今年も咲きましたな…」

「はいっ! 忘れずに咲くんですから大したものです。私なんか、ははは…昨日きのうのことも忘れとります」

「ははは…いや、それは私もですなっ!」

 二人は自虐じぎゃくネタで大いに盛り上がった。

 月日は巡り、二人の姿が一人ひとりになった。多くは語るまい。まあ、…そういうことである。それでも一人は花見にスゥ~っと現れ、ブツブツといない相手と話して盛り上がり、スゥ~っと消え去った。

 そして、また月日は巡り、二人の姿は消え去った。それでも、二人はまたスゥ~っと現れた。

『今年も咲きましたな…』

『はいっ! 忘れずに咲くんですから大したものです。私なんか、ははは…昨日きのうのことも忘れとります』

『ははは…いや、それは私もですなっ!』

 あの世から花見に現れた二人は、恒例の自虐じぎゃくネタで大いに盛り上がった。

 花見は、それでも! と人を引きつける魅力があるようだ。^^


                  完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ