(4)明日(あした)は明日の風が吹く
明日は明日の風が吹く・・などと偉そうに嘯いたものの、内心ではそれでも気になって、密かに考えを巡らせたり、影でコソコソと動く場合がある。こういう場合の[それでも]は、実に頼りない[それでも]だ。
「ははは…大丈夫だよ。てるてる坊主を吊るしたんだっ! 明日はきっと晴れるさっ! ははははは…」
家族で楽しみにしてたキャンプ旅行へ出かける前の日の夜、父親は小学2年の息子と1年の娘に落ちついた声でそう言った。
「おやすみ…」「おやすみなさい…」
少し安心したのか、二人の子供は寝室へと去った。父親としては、親としてそれなりの格好をつけたつもりだった。それでも内心では、子供以上に明日の天候が気になっていた。無理を言い、やっと取れた会社の休日だったこともあり、父親としては降ってもらう訳にはいかなかったのである。
てるてる坊主を吊るした願いが通じたのか、次の日は快晴だった。しかし気になった父親は夜中に何度も起き、挙句の果てに風邪を引き、熱を出した。そうなると、キャンプ旅行相場の話ではなくなる。それでも、子供が楽しみにしていたキャンプでもあり、父親としてはここで威厳をなくす訳にはいかない。父親は仕方なく居候の弟にピンチヒッターを頼んだ。
「ああ、いいよっ!」
居候の弟としては御の字である。留守番か…と思っていた矢先の朗報だったからで、願ったり叶ったりとは、まさにコレだ…と内心では思えた。そんな弟に比べ、出かけるはずだった父親は散々で、熱に魘され留守番をする破目になった。
このように、[それでも]は、念を押せば押すほど裏目に出ることがあり、注意が肝要だ。明日は明日の風が吹く…と、心から思えば、それでいい訳である。^^
完