表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/100

(39)ペース

 人には人のペースというものがある。食事一つにしても、あっ! という間に食べてしまう早いペースの大食漢たいしょくかんから、数十分かかってようやく食べ終えるペースが遅い人まで様々(さまざま)だ。まあ、どちらが良くどちらが悪い・・というしつの問題ではないことだけは確かだ。ただ、ペースが遅いと、早い人に比べて腕が落ちたり程度が低いと見られがちになる。あながちそうでもないことは、ウサギとカメの童話が物語っている。

 わんこ蕎麦そばの食べ比べ競争がとある地方のとある会場で行われている。すでに順位はほぼ決定し、残るは決勝のみである。二人の選手が目を閉ざし、合図の笛が吹かれるのを静かに待っている。二人とも今まで食べた分が体内にあるから、余り食べたくない気分で笛が吹かれるのを待っている。

 実況アナウンサーの声が感情のたかぶりからか、幾らか震えている。

「さあ、どうなるでしょう!!?」

「えっ? いや、まあ、なるようになるんでしょう!!」

 解説者が落ちつきはらった声で返す。しばらくして笛が吹かれ、競技が始まった。飲み込むようにペースが早い男は、瞬く間に数杯を片づけた。片や、ペースが遅い男は、もはや限界が近いのか、ゆっくりとむように食べ、ようやく二杯目である。

「もう決まりましたねっ!」

「いや、分かりませんよっ!」

 そしてしばらくして笛が吹かれ、競技が終了した。それでも食べ続けた早いペースの男は八杯を、片や遅いペースの男は、かろうじて四杯だった。

「おめでとうございますっ!! 優勝者は八杯を食べ」

 アナウンサーがマイクでそこまで絶叫したときだった。

「オ、オェ~~~!!」

 八杯を食べた男がにわかに奇声を発し、口からもどした蕎麦をき、その場で卒倒した。

「… でしょ?」

 アナウンサーは黙って頷いた。

 このように、それでも! とペースを上げれば、逆の結果をまねくこともある。^^


                  完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ