(38)ど~~でもいいこと
人とは困ったもので、ど~~でもいいことでも一度気になり固執すると、何がなんでもやってしまわなければ気が済まない生き物なのである。しかし、そういつも上手くやる機会があるとは限らない。それでも気になるのが人だから、なんとかやろうとする。重要なことならまだしも、ど~~でもいいことでも、である。^^
とある一般家庭の日曜である。どういう訳か、朝から兄の努が物探しをしている。
「困ったやつだっ! あんなもの、ど~~でもいいじゃないかっ!」
昼から草野球の練習があるから、これから予習を済ませておこう…と考えていた矢先、努は妹の深久に、とあるモノを返して欲しいといわれたのである。それは去年の秋、深久が作った一枚の押し花だった。上手く出来たからか、自慢げに「お兄ちゃんにもあげるっ!」と、くれた押し花だったが、お友達が欲しいと言ってるから返して欲しいと言われたのだ。最初は、「ああ、いいよっ!」と安請け合いをした努だったが、よくよく考えてみると、どの本にその押し花を挟んだか? が分からない。で、朝から物探し・・をする破目になった訳である。
「ないなぁ~~!」
「んっ、もうっ!! なんとか探してねっ!」
「ど~~でもいいじゃないか、押し花なんてっ!」
「そうはいかないわ。お友達と約束したんだからっ!」
「どこかへいった・・って言えばいいだろっ!」
「ダメよっ! 私にもプライドがあるからっ!」
深久は一歩も引かない。
「兄ちゃんなっ! 昼から練習があるからさぁ~。昼まで予習、やっときたいんだ…」
努は俄かに弱音を吐いて引いた。こういう場合、引いた側は大よそ負ける・・としたものだ。案に相違せず、努は深久に負け、午後も探させられる破目となった。当然、草野球の練習を休ませてもらう旨の電話をしてから、である。
このようにど~~でもいいことでも、それでも…と意気込めば、手間取る場合が多々、あるのだ。^^
完