(37)馬鹿
素晴らしい自然が少しずつだが消えつつある。樹木が切り倒され益々、人々の心は和むどころか荒んでいく。その益々(ますます)、荒んだ心が益々益々、人の心を荒廃させる。それは恰も、負[下降]のスパイラル[螺旋状の渦巻曲線]が増幅しているかのようだ。それでも・・と、なぜ人はそんな愚行を重ねるのか? そこには、鬱屈した逃げ場のない憂さ晴らしの心が観てとれなくもない。そんな馬鹿な人はバッサリと自分の手足を切られないと、切られた痛みが分からないだろう。そういう馬と鹿が同居したような馬鹿な人は、植木にでもして愛でるにかぎる。^^ 春の季節なら当然、花[俳句では桜らしい^^]だろう! ^^
満開の桜を愛でながら、樹々の下で二人の老人が花見をしている。馳走が入った折り詰めと酒。雪洞の灯りが宵闇の桜を照らし、風情を誘う。二人はすでに出来上がり、赤ら顔でホロ酔い状態だ。
「いい陽気になりましたなっ!」
「さよですなっ!」
「こういう場では馬鹿になるのが一番ですなっ!」
「そうそう! 馬鹿が一番、馬鹿がっ!! ははは…」
「ははは…」
誰もいなくなった深夜まで、それでも二人は花見を続けた。本物の馬鹿になったのである。^^
馬鹿にもいろいろあって、こんないい馬鹿は増えて欲しいものだ。^^
完