(33)押(お)さない
春ともなれば、動物達は繁殖行動を活発化させる。特に♂[雄性]は子孫を残そう! とムラムラして、^^ その行動が激しくなる。♀[雌性]に対し、しきり、やたらとモーションをかけて押す訳だ。^^ 押しても相手にその気がなければ空振り三振で、ションボリとダッガウトへ撤収せざるを得ない。それでも! と押せば、益々(ますます)嫌がられて、分が悪くなる。━ 押してもダメなら引いてみな ━ とは格言めいてよく言われるが、確かに押さない方が得策なのかも知れない。『あらっ? どうしたのかしらっ?』と相手の方が出てくる可能性も生まれるからだ。^^
春休みのとある有名中学校である。T大への合格率が高いK高への受験対策としての補習授業が春休み抜きで行われている。その光景を校庭から眺める二人の落ちこぼれ気味の生徒が二人、何やら話をしている。
「ヤツら、スケジュールが目一杯に詰まってるらしいぞっ!」
「ああ、そうらしいな。俺は落ちてもいいから、のんびりとやるよ。押されるのは嫌いだからなっ!」
「ああ、俺もだっ! それよか、そこのコンビニの特性弁当が安売りらしいぞっ!」
「ほう! よしっ! 行くかっ!」
「お茶は熱いほうがいいな…」
「販売機のホットでいいだろ?」
「そうだなっ!」
話はスムーズに纏まり、二人は校庭のベンチから立った。
月日は巡り、翌年の春である。二人はどういう訳かK高へ合格していた。片や、それでも! とギンギンに押した補修組は半数以上が不合格となった。まあ、フツゥ~~は押した方がいいのだろうが、押さない方がいい場合もある・・というお粗末なお話である。^^
完