(31)稼(かせ)ぐ
安定して生きるためには衣類や食べ物、それに住居といった所謂衣食住が整う必要がある。そのためには稼ぐことが必要となる。稼ぐことで衣食住が実現するお金が手に入るからだ。その稼ぎが多くなれば当然、お金の入りも増えることになる。それでもより以上の生活をしたいから、人は必死に世の中で稼ぐ。もちろん、色欲、食欲、自己顕示欲などの個人的な欲望を叶えるいろいろな支出先がある・・ということもある。^^
とある一人身の中年男性が、懸命に働いている。その姿を遠目に見ながら、二人の男が語り合っている。
「あんなに稼いでどうするんですかねぇ~」
「そうそう! 死んであの世へお金なんて持ってけないのにねぇ~」
「ですよね。大して使う人じゃないから…。私が変わりに使って上げてもいいんですがねっ。ははは…」
「はははは…そりゃ、いいっ!」
「この前、冗談半分にそう言いましたらね。あの人、なんと言ったと思います?」
「なんて言われました?」
「稼ぐのが私の趣味ですから…ですよ。なんでも、一万円札を数えるとき、無上の喜びが湧くそうです」
「ははは…変わったお人ですなぁ~」
「将来の夢は札束の上で眠ることだそうです」
「ほおっ! 札束の上でねぇ~! そりゃ、稼がないとっ!」
二人は小声で笑い転げた。そんな二人を知ってか知らずか、男は必死に稼ぎ続けた。
稼ぐ必要がないのに、それでも趣味で稼ぐ人が、この世にはいる。^^
完