(30)補強
補強をしておけば安心できる。これは、あらゆることに共通して言えることである。物や心構えetc.様々な分野に及ぶが、それでも補強するのか? と周囲の者に思われようと、意固地に補強しておくことに越したことはない。そうしておけは゛、気分にゆとりめいたものが生じ、心が落ち着く訳だ。^^
ここは、とある町役場のとある課である。
「揉川君、決算は順調に進んでるのかね?」
「ええ、まあ。それなりに…」
「それなり、ってことはないだろ。議会で攻められないよう、しっかり補強しておかないとっ!」
「補強って言われましても…」
「いらぬ質問をするお方もおられるからねぇ。去年なんか『あの予算はどこへ消えたんだっ!』って、こうだよ」
「はあ、私が異動で来た前ですね?」
「そう。前任の肩凝君、分からないもんだから四苦八苦して、間違った答弁書を私に渡してさ。『訊ねてるのはその科目じゃないっ!』って、こうさ」
「課長が答弁されていれば、そんなことにはならないでしょうしねぇ~」
「ああ。俄かに指摘されれば、間違うことだってあるよ」
「ですね…」
「だから、そうならないために前もって補強しておかないとっ!」
「補強ってのは、質問対策ですねっ!?」
「そう、答弁書の補強! あんな場合は、こんな場合は、そんな場合は・・とねっ!」
「分かりました! 事細かに補強しておきますっ!」
「頼んだよっ!」
「はいっ!」
後日、議会が開催され、スンナリと前年度の決算は認定された。補強の成果が出た訳である。
補強した場合でも、こうスンナリとはいかない場合もあるが、一応、安心はできる。^^
完