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(26)年中行事

 別にやらなくてもいいのだが、それでもいつの間にか繰り返しているのが年中行事だ。春の祭礼の時期には作らなくてもいいのにお寿司を作り、夏ともなれば、年中行事のようにスイカを食べる。別にスイカでなくてもいいのだが、どういう訳かスイカを食べると夏が実感できるのである。^^ まあ、JAPANESE[日本人]だということだろう。

 一人の老人が停留所でバスを待っている。すでに待ち始めて、かれこれ小一時間が過ぎようとしているのに、老人はいっこうに停留所を離れようとしない。そのとき、一台の乗用車が停留所の前でスピードを落として停車した。車のフロントウインドゥがスゥ~~っと下がり、運転席の中年男が車から顔を出した。

「おじいさん! 待ってもバス、来ませんよっ! 前の谷で落石があって、当分、通行止めらしいです。復旧がいつになるか分からんそうで、私もUターンしてきたんですわっ!」

「ああ、そうでしたか。態々(わざわざ)、どうも…」

「よかったら、乗られますか?」

「いや! 私は、ここで待ちます、待っとります!」

「そうですかぁ~? 来ないかも知れませんよっ!」

「いや、それでも待っとります。私はあのバスを待たんと日が終りませんからなっ!」

「いやぁ~、待っていると日が終ると思いますよっ!」

「いいんですよ、それで私はっ! 年中行事ですからっ!」

「年中行事? そうですか、じゃあ!」

 中年男は、変わった人だなっ! とは思ったが、口には出さず思うに留め、車で去った。

 年中行事は、そう簡単にやめられない依存症のような性格を秘めるようだ。^^  


                  完

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