(20)トラブル
人が生きていく上でトラブルは付きものだ。そうしよう! と行動したことが、そうさせまいっ! と阻止されたとき、トラブルとなる。軽度であれば、双方が、それでも! の程度を下げ、相手の意を汲むことで解消される訳だが、強情に一歩も引かないと、トラブルの火は益々、燃え盛ることになる。
小学生の兄弟が、食べた食べないで言い争っている。
「お前が食べたから無くなったんだろっ! 他に誰がいるんだ!?」
「僕は食べないよぉ~、兄ちゃんっ! パパじゃないっ!?」
「いや、探偵の僕が調べたんだっ! お前に違いないっ! 顔にそう書いてある。正直に白状しろっ!」
「そんなぁ~~!」
弟は必死に否定するが、それでも兄は一端の探偵きどりで追撃の手を緩めず、トラブルは続く。そこへ洗濯を終えた母親が現れた。
「何よっ! さっきから喧しいわねっ!」
「こいつが、僕が残しておいたお餅を食べたんだっ!」
「ああ、冷蔵庫のっ? アレはパパが食べたみたいよっ!」
「なんだ、お前じゃなかったのか…」
「ふぅ~~ん…」
そこへ父親が現れた。母親は慌ててキッチンへ去った。
「どうしたんだ?」
「ははは…パパが食べたのか?」
「なにをっ?」
「お餅」
「餅? なんだ、それはっ?」
「冷蔵庫のお餅、パパじゃないのっ?」
「? いや?」
「ママがそう言ってたよ」
「じいちゃんじゃないかっ?」
「じいちゃんは敬老会でいなかったよ」
「ばあちゃんも…」
弟が兄に追随した。
「そうか…。なら、ママだなっ! ははは…」
「スゥ~っと消えたからねっ!」
「だなっ!」
三人は小笑いし、トラブルは呆気なく解消した。
トラブルは、それでも! と熱くならなければ、割合簡単に消えるようだ。^^
完