(11)怖(こわ)さ
夏ともなれば、各地でホラーとか怪談といった類いの怖さを求め、人は映画、ドラマ、あるいは心霊スポットといったその手の内容に夢中になる。よくよく考えれば、キャ~~! とかギャ~~! と驚くような場所や内容を避ければいい訳だが、それでも人は自らの意思で近づく。^^ いわば、ある種のマゾ的な快感を追い求める訳だ。暑さを怖さで冷やそう、忘れよう・・という気分が見て取れなくもないが、強ちその手の内容を、好奇心も手伝ってか、人は嫌いではないようである。
夏の時期限定で開かれる、とあるお化け屋敷の前である。暑くなるこの時期、サーカス同様、毎年やってくる一座だ。
地元の老人が二人、一座の小屋がけを見物しながら何やら話をしている。
「今年もやってきましたなっ!」
「はいっ! 私はコレが楽しみなんですよっ!」
「ですなっ!」
「怖いんですが、その怖さが堪りませんっ!」
「そうそう! 毎年、趣向が変わりますからな。それが楽しみでっ!」
「それでも…と、行きたくなりますなっ!」
そこへ顔馴染みの座長が現れた。
「ああ! これはこれはっ! また、今年もお世話になりますっ!」
「いやいや、こちらこそっ! ははは…入らないと夏が来ないっ!」
「いやいや、そう言っていただくと。今年も、とびきり怖いのを用意しておりますので…」
「楽しみにしております」
その二日後、約ひと月に渡るお化け屋敷が盛大に開演される運びとなった。人並みは片田舎にもかかわらず増え続けているという。
怖さは、それでも…と癖になるようである。^^
完