表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/100

(1)それでも

 生きていれば、ガックリ! と肩を落とすことに出くわすことがよくある。こういうときには、それでも! と、不屈の精神でギブ・アップしないことこそが肝要だ。それが人が人生を歩む上で大事な目指すべき道なのでは? と偉そうに思う次第だ。^^ 馬鹿だなっ! のんびり楽しむ方がいいに決まってらっ! と思う方もおられようが、それも人生だと思うから、取り分けてブツクサ言うつもりは毛頭ない禿はげ頭ということだ。^^ 

 これからつづるのは、日常で起こるそんなお話の数々である。

 破れたぬのい合わそうと、しなくてもいいのに裁縫さいほうを始めたとある男が針に糸を通そうとして難儀なんぎしている。かれこれ、もう小一時間が過ぎようとしているのだから不器用ぶきようというほかはない。それでも男は何かに取りかれたように必死に続けている。

「あなたっ! どうしたのよっ! さっきから呼んでるのに、返事はア~ウ~だけじゃないっ! めてしまうわよっ!」

 しびれを切らせた男の妻が夕飯の催促さいそくに現れた。男は糸を通すのをやめ、妻の顔を見ながら、ふと言った。

「そういや、そんな総理大臣、前にいなかったかっ?」

「… そういやいたわね、ナントカ首相! かなり前よっ!」

「ああ、昭和の終わりの頃だったな、確か…」

「ええ。… そんなことより、早くしてよっ! どうしたのよ、いったい?」

「コレさ。針が通らないんだっ!」

「針じゃないでしょ! 糸!」

「ああ…」

「ちょっと、してみなさいよっ!」

 妻はなかば、ふんだくるように、男から針と糸を取り上げ、一回で通してしまった。

「お、お前、器用だなっ!」

 男は驚き、感心したように言った。

「あなたが不器用なのよっ!」

「…」

 男は返せず、沈黙した。

 男がその後、食事をしたのか、あるいはそれでも! と、裁縫を続けたかまでは定かでない。これが、それでも話の始まりの一話である。^^


                  完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ