2 ルート確認をします1
放課後、クラスには帰ることなくクラスメイト同士で話している人がちらほらと見える。
私はそろそろ帰宅する準備が出来たので帰ろうと席から立ち上がる。横にはクレアが私の席まで来てわざわざ待ってくれている。
「エサルリーゼ様……いえ、エサルリーゼさん。お疲れ様です」
「ええ、お疲れ様。あの、慣れないなら無理に呼び方を変えようとしなくてもいいのよ?」
挨拶も程々に、荷物を持ってそのまま一緒に帰ろうということになった。勿論、貴族なので馬車で屋敷まで帰るのだが、それまで一緒に行こうということだ。
「エサルリーゼさん……は、変わりましたね。とっても優しくて、今は凄い好きです」
「あの、前ははっきり言ってどんな感じだった?」
「えっと……少し、怖かったかも知れません。でも、今は怖くありません。なんだかエサルリーゼさんと話すのは楽しいし、色々気遣ってくれて……本当に信じられないくらい。貴族でも今のエサルリーゼさんみたいに優しい人はそうそう居ませんよ」
やっぱり、以前の私には良くない印象があったのね……、でも、今の私もそんなに優しい人ではないんだけどね。
そんなことを考えながら、クレアと他愛ない会話をしていると、いつの間にかの馬車の前に到着し、「またね」と別れを告げながら馬車へと乗り込む。
色々あったけど、取り敢えず家に帰ったら今後のことを考えなくっちゃ!
そのまま、馬車はゆっくりと動き出して、家へと走っていった。
***
馬車での下校を終えて、無事に家に帰宅した。
いきなりだけど、学校での今の状況を整理しよう。
先ずは私自身、つまりエサルリーゼの周りからの評価である。
クラスメイトからは、普通に挨拶をすると、どうしました?と怪訝な目で見られて、全体的に終始私に対して怯えていた様子だった。
過去に些細なことで威嚇とかをして、クラスメイトとは軋轢が生じている。とにかく、私のクラス内での評価は絶対的な暴君。クラスのトップであり、孤高の存在、逆らえるものなど居ないというような感じだった。
クラス外では、授業の移動中に下の階級の貴族男性から告白されたり、やたら話しかけられたりしていた。
容姿端麗、家柄もかなりのもの、学校での評判は悪くとも、下級貴族にしたら、お近づきになりたいわけだ。
といっても、学園にいる殆どの生徒は平民出身のために、それ以上の人には話しかけられなかった。
今まで通りのことであるが、前世の記憶を思い出したことによる客観的な視点からものを見ることにより、現在置かれた位置関係をより詳細に把握することが出来た。
記憶が戻っていなければ、多分そのまま攻略の誰かしらのルートによって、私は断罪されて、幽閉されていたことだろう。
しかし、今はそんなことにならないように、前世の知識というアドバンテージが存在する。
これを使わない手は無い。
早速だが、ヒロインがこの学園に入学してくるのは約一週間後、そこからゲームが始まる訳だから、なるべく今の環境を少しでも変えて、微々たるものでもルートに変化を与えたい。
そのために、私は悪役令嬢であるエサルリーゼの取るであろう行動とは別のことをすることに決める。
最初の入学式イベント、婚約者であるミストが彼女と会話をしているところに嫉妬して、そこから苛めに発展していく。これがゲームでの展開。
となれば、入学式にミストとヒロインの子が会話をすることはゲームの進行上変わることは無い。そこで私が嫉妬したりしなければいいのだ。
……アレ?これで今後私が彼女を苛めるきっかけが無くなった。ということはこの時点で私の幽閉バッドエンドは回避された?
──いや、違う。
根本はそこではないのだ、今思い出した!
結局、王族であるミストと仲良く会話をしてしまうヒロインは貴族から目を付けられる。私が彼女に対して何もしなくても、ゲームの進行で、彼女は苛められる可能性が高い。
そう、この学園でもっとも力のある、真の黒幕、公爵家令嬢のグランディア・アルケニアが学園に居る限りは──。
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