表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/106

希望と指針

 湖の表面が発行し、人の形へとゆっくり集約されていく…

 俺は有り得ないと思いながらも、その光景に目が釘付けになっていた。


 普段なら、すぐに飛び込んで来るはずのティファが俺の側に居ないんだ、これは其れ程、異常事態だって事が分かる。



 半分警戒と、半分何が起こるのかと期待する自分の心に理不尽さを感じながらも、やはり期待せずにはいられないんだ…


 だって、精力増強の湖と言われる場所で、不能者の俺が飛び込んだら、珍しい反応が起こったんだ!



 つまりこれは、俺の体に転機が訪れるかもって…そういう事だろう⁉︎


 だから、俺は注意深くその光を見つめる。

 何も見落とさないように……



 光はようやく落ち着き、


 そこに現れたのは……




 爺さんだった…



「「…?」」



 完全に意味不明な状況を打開すべく、俺は爺さんに話し掛けてみる。


 …直ぐには攻撃なんてされないよな…?



「…あの〜貴方はどちら様でしょうか?」


「……ふむ。」


「あの〜……」


「聞こえておるわ。」

「……」

「儂の気配を忘れたのか?のぅ、漆黒の双剣」

「なっ⁉︎」


ーータタタッ! … バシャーン!


 漆黒の双剣と言う言葉に反応して、ティファが湖に飛び込んで俺の隣に来て、爺さんから庇うように前にでる。


 …俺はゲーム時代の名前を言い当てられて、多少驚きはした、けど…相手のペースに呑まれるのは良くないな。



 …そして何とか気を取り直し、さらに質問した。



「俺を見て、漆黒の双剣…と?何故ですか?」


「気配で分かるじゃろ」

 …いや、分かんねーよ!漫画じゃあるまいし!


「いやぁ、俺にはそんな力無いんですけど、勘違いですかね?」


「儂を倒した、貴様を間違える訳がなかろう…」

 周りの温度が少し下がったか?と思う程の気配を感じる。

これは、さすがに俺でも分かるレベルだな…


「俺が倒した……?」


「本当に分からん…と?そっちの娘はどうじゃ?」

「……グランドドラゴン」


 …はい?

 いや、あのラスボスドラゴンと爺さんは全然違うでしょ…何を言っちゃってるのかな?ティファさん


「やはり分かるか…では、やはり貴様は漆黒の双剣よ。」


「…はいっ⁈マジでグランドドラゴン?」


 くどい。とか言われるけど、分かる訳ないって!

 だって、画面越しにクリックで戦っただけだし、俺みたいな凡人に気配で…とか冗談にしかならねーって!



「…で、そっ、そのグランドドラゴン様が、爺さんになって何用で?」


 爺さんは、想像と違う展開に面倒くさそうに溜息を吐いて、やれやれと言った表情で何をしに出てきたのか聞いてみる。


「貴様の呪いの事じゃ」

「えっ⁉︎これ、解除してくれるのか⁉︎」


 俺の返答に、「たわけ!」とか言いながらも、グランドドラゴン…もとい爺さんは説明してくれた。


 あの時、俺を画面越しに転移させるのに、強い制約が必要だった事。


 その為、転移の他に俺が言った、「ハーレム」と「無双」に制限を掛ける事で、やっとこちらに召喚できたんだ…と。



 なんだよそれ!しょぼい…と思いながらも、俺は続く言葉を待った、一縷の望みをかけて。


「儂が力を取り戻し、再戦する時に、貴様がそれでは興が醒める。故に、チャンスをやろうと思うてな。」


 …そっ、それですよ!

 それを待ってました!!


 俺はドキドキしながら、爺さんが言うであろう条件に想いを馳せた。



「そうじゃな……」

 爺さんは二つ条件を言った。


 一つ、

 この世界で一番有名な人間になる事。


 二つ、

 この世界で一番強い人間になる事。


 1個目を解放すると、LVに掛かっている制限を解き、2個目を解放すると、不能を治してやると言うものだった。



 …いや、世界一って、どこリサーチ基準だよ!

 っと、突っ込む前に説明される。


「今の儂は思念の塊みたいなもんじゃ。故に、貴様が人々の思考内で有名になり、世界で一番の知名度を得れば分かるでな。」


「なっ、なるほどな…でも、条件が厳しくないでしょうか?」


 あんまりな条件に下手に出ながら、もう少し優しい条件はないか聞いてみる。


「否、その程度を達せぬ者と戦っても、意味が無かろう?」

 …いや、全然わかんねーっす!


 世界一とか無理ゲーだよ…

 何さ!強さ世界一って何さ…


 あぁ……オワタ…


 俺の転生人生オワタな…


 したかったなぁ……子作り。










 ……ま……まっ……まだだ!

 「諦めたら、そこで試合終了ですよ。」だっ!


 俺は気力を振り絞って聞く。


 最後の悪あがき、ストレート勝負だ。



「他に、解除してもらえる条件は…?」


「…無い」


 ……や は り かっ!……


「分かりました。」

「…えっ?」


「私が…私達が、ご主人様の呪いを解いて、もう一度、貴方を倒しみせましょう。」


「ほっほっほ〜!お前の従者の方が物分かりが良いのぅ…頼もしいではないか。」


「…覚悟していなさい!」


 ティファの捨て台詞に、「楽しみにして待っているぞ…」と、そう返した爺さんは、光になって消えていってしまった。




 スッキリとした表情をするティファを見て、俺は自問自答する…


「…ぃっゃるの?…ぃゃ、無理でしょ…」




 こんなはちゃめちゃな湖体験をして、ティファとは少し仲良くなれた、と言う俺の大切な思い出は、爺さんとの話で台無しにされたのだった…









ーーーーーユウト邸 地下室ーーーーー


 あれから湖を後にした、俺とティファは街に戻ると、さっそくメリッサとレアを屋敷に呼び戻し、『緊急対策会議』を始めた。



「…以上の出来事があったので、皆に知恵を出してもらおうと思って集まってもらったの」


「…と言うか、何で私達は除け者でしたの?」

「…ねぇーさま、ずりぃ……ずるいー」


 何だかピクニックに置いて行かれた子供の様な反応を示す2人に、少しイラッとした表情を浮かべるティファ

 …そんな顔するの珍しいな。



「私は、真剣に言ってるのです!ご主人様の為にあるのが私達の役割でしょう⁉︎」


「…はぁ、分かりましたわ。お姉様がそれ程に言われるのでしたら、真面目に考えますわ。」


 不服そうなメリッサに睨みを利かせながら、どうすれば良いのかティファが聞き直した。


「…まずは、大金持ちになって…それから、さいきょーになる」


 おぉ、珍しいな!レアから意見を言うなんて…

せっかくなので、俺からも聞いてみる。


「なぁ、なんで大金持ちになる必要があるんだ?」


「…お金持ちなら…ゆーめーになりやすい……」


「その通りですわ!それに、二つ目の課題は一つ目をクリアする事が前提条件ですもの。」


 メリッサの補足にオレも頷く。


 …確かに、世界一の富豪なら目標が立てやすいし、分かりやすく目指しやすい。


 例えば、各地にある商業組合なんかを乗っ取っていって…そして、それを各地で宣伝してもらえば、一つ目はクリアの目処が立つかもな。



 ただし、この広い大陸で達成させるのはかなり難しい事には変わりないし、仮にそれができたとしても…

 二つ目の課題はどうやって解決すると言うのだろうか?




 少しの間にを置いてから、二つ目の方法もメリッサが教えてくれた。


「…そして、その蓄えた財を掛けて、武道会を開くのですわ。」


「なるほど!その優勝者が、一番強いものになると言う事ね?」

 メリッサの案にティファが乗っかる。


 …おぉ、天○下一武闘会か……



 …うん。

 筋は通ってるし、なんか正論っぽい。


 …いや、確かに話を聞いただけなら、何だか出来そうな気がするけど…

 だけど、言うのとやるのは、全然違うとも思うんだよなぁ。



 俺の不安は考慮されず、いかにして課題を乗り越えて行くかと話し合う、3人の会話は熱を帯びて行くのだった…



 …そして、俺はそれを蚊帳の外で聞きながら考えていた。


 実際湖に行った事で、全てがやはり呪いだと分かったのは良かったし、3姉妹と俺のアイテムがあれば、時間を掛ければ出された条件のクリアも可能だろうと思う。


 でも、爺さん…グランドドラゴンと、生身扱いになった今の俺では正直戦いたく無い。


 あの時は、デッド&リトライが可能だったから、時間のある限り何度でも挑戦出来たけど、生身になった俺達は、一度で殺されたらゲームオーバーだからな。



 …ただ、俺の転生人生を楽しもうと思うと、爺さんの課題はクリアしないと絶対に訪れない。


 そう、特に二つ目だ。


 一つ目と二つ目を交換してしてくれりゃ、不能者開放で、それ以上は無理しないってのも有りだと思ったのに…

「あの、ドラゴンジジイめ……」

 思い返しても容赦の無い条件に、頭の中で考えていた恨み言が、思わず口に出てしまった。


言葉に出た事に気付いて、俯いていた顔を上げると、3人がこっちを見て


 …睨んでらっしゃる。


「…い、いや、き、聞いてたよ?」

「「ご主人様!!」」




 …その後しばらく説教されてしまった。


 俺の為に、色々考えてくれているのに、当の俺が乗り気じゃ無いのは良くないよな…



 よし!やるだけやって見るか!

 …無理なら謝ろう。


 うん。そうだな。



 3人が検討した結果、まずはこのアスペルを完全に掌握し、近隣の都市を順次落としていくそうだ。


 …皆に愛想を尽かされないよう頑張りますか!




 アスペル掌握の為に、まずは裏組織である我がアイアンメイデンと、都市内で双璧をなす表の商業組織、『まん丸商会』を潰す事に決まった。



 …よし、いっちょ、やってみっかー!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ