作戦のために⑤
ーーーーレア&シャーロット
「ぐうへっへっへぇ…こっちにして正解だったぜ!まさか王国の皇女さんを抱けるなんてよぉ〜」
「おっ、おい!俺にも回してくれよ?それまで、このちっぱいので我慢しとくからよ…」
ティファやルサリィと同じく、ジェシカ奴隷商会に攫われたレアとシャルは、お世辞にも綺麗とは言えない部屋で、ゴロツキのような男達に囲まれていた。
食べ物に睡眠効果のある薬を混ぜられ眠ってしまったレアは、通常であれば異常状態から回復するだろう時間になっても目覚めず、男達はようやくの出番だと張り切った声を出す。
シャルは両手を後ろで縛られ、寝起きのレアには魔法の詠唱を防ぐ効果がある『音無のマスク』を着けさせた上で、体には鉄線を織り込んだ特製ロープで亀甲縛りに仕上げられている。
…残念ながら胸のボリュームが足りず、決して色っぽくはならなかったのは内緒だ
「レアさん、大丈夫ですか?なんとか逃げてみせますからね…」
「……」
寝起きでぼーっとしているだけかもしれないが、マスクで話すことができないレアは、何を考えているのか分かりにくい表情で、ただシャーロットを見て頷く。
「ぶぇっひゃっひゃあ〜逃げれる訳ねぇだ!おんまえらはオラ達の慰みものだぁ…」
この部屋で一番偉いのか、太っちょ坊主の男がレアとシャルを交互に見ると、レアでため息をついて、シャルの細くて白い生脚へと視線を向け直し、ダラシない笑みを浮かべて手を伸ばし出す。
「ひっ…」
男は跪きシャルの踝に手を置くと、スカートをめくるように少しずつその手をふくらはぎ、太ももへと押し進めて行く。
しかし、抵抗するとレアに被害が及ぶと考えたのか、シャルは小さな悲鳴を上げるだけで、唇を噛み締めて恐怖を必死に堪えているようだ。
「なぁんつぅ綺麗な脚だぁ…さすが、皇女様のあんよは、そこらの女とは違うだなぁ〜」
ダラシない顔をして前傾姿勢になりながら、どんどんと手を押し上げて行く男の顔が、シャルの顔へと迫って行く。
そして…いよいよシャルの秘密の花園へと男の手が伸びようとしたその瞬間
…ドゴッ!
「ぴぃぎぃやぁあ!…あゔめ、かなつ○かはやぬた×なはさ!な○や…うゔぅぅ」
狙いすましたシャルの渾身の蹴りは、エロい妄想に油断してガラ空きになっていた、男の股間に炸裂し変態を床に沈める。
鈍い音を立てたシャルの蹴りに悶絶した男は、泡を吹いてその場で失神していた。
そして、それを見た周りの男達が騒ぐ。
「なっ!この野郎…まぁ、いいかっ?」
「…そうだな?せっかくだし!」
「いひひ…それじゃあ、俺達でいただきますかぁ」
一番手を独り占めしようとして馬鹿を見た男は放置して、他のゴロツキ達が二の舞を避けるため、シャルとレアに四方から一斉に襲いかかろうとする。
「いやぁっ‼︎」
「……」
さすがに、さっきの方法では仕留められないと、シャルは後ずさろうとするが壁に阻まれ動けない。
レアは完全無抵抗だが、亀甲縛りが硬くてゴロツキ達は中々手が出せないようだ…
「ユウトさん…」
…初めてをこんな奴らに奪われるくらいなら、寝てる時にこっそり触ろうとしてくる彼を撃退せずに、いっそ、あげてしまえば良かった。
迫る醜い男達の顔を見ながら、いつも優しく自分の事を一番に考えてくれる…挙動不審でエロい所もあるが、ユウトの方がましだとシャルは後悔し、目に涙を浮かべギュッと瞑る
「ぐえっへっへぇ〜」
……ズズスッ
涎を垂らしながらシャルに迫る男達の影から、男のシルエットに重なるように人影が浮かび上がる…
が、目の前のご馳走に必死な男達は、誰もその存在に気付かない。
ふと気配を感じたシャルは薄く目を開く…すると、男達の体が邪魔でその人物の顔を伺う事は出来なかったが、男の背後で青く揺れる髪を見てシャルは表情を明るくするのだった…
ーーーーエゼルリオ 北部 廃墟群
…ザッザッザ…
レンの支配によって人々が逃げ出した街は過疎化が進み、残った者は中心部に集まっていった。
その為…元々、人の集まりが悪かった街の北部は建物が遺棄さてれいき、その空き家には犯罪者が住み着いて、最後には定住する者を持たない廃墟群と化した。
その廃墟群の中を、俺は指定された場所を目指し独り黙々と歩く。
「…待ってろよ、二人とも。」
言葉に出さないと悪い想像ばかりが先行して、不安になるので、自分を鼓舞するためにも力を込めて台詞を吐く。
手紙に指定されていた建物は、この辺りで一番大きな元貴族の建物だ
「大体この辺だと思うけど…」
キョロキョロしながら建物を探す俺の目に、周りの建物よりも少し小綺麗にされた目的の屋敷が見えてきた。
…ギィィ…ィィッ
俺は建て付けの悪くなった扉を押し開いて、屋敷の中に足を踏み入れた。
中はガランとしているが、奥から人の気配と騒めきがする…
「こんにちは、お兄さん…」
「…っつ⁉︎」
警戒しながら奥に進もうとすると、隣にあった部屋から突然少年が現れ、俺は驚いて準備していた攻撃アイテムを発動しかける…
「…こっちです。」
だが、少年は俺の態度を気にする様子もなく、奥の部屋へと俺を案内する。
「…なんか違和感が、あるよな?」
自分で自分に尋ねながらも、様子のおかしい少年の後を追い、奥にある部屋と続く…
そして、そのまま部屋に入ると目に飛び込んで来たのは、大量の子供達…そして、奥に座る街道で逃がした奴隷商の素早い奴に、雑魚っぽいゴロツキ共
…そして、ティファとルサリィだ。
「ようこそ、いらっしゃいでやんす!待ち侘びたでやんすよ〜?…このお二人は、お兄さんにとって重要では無かったんでやんすかねぇ〜?」
「…ふざけんなよ。」
冷やかすように言う、奴の言葉に俺は怒りで頭が真っ白になりそうなるのを我慢して、アイテムを取るため腰につけたポーチへと手を動かす。
「おおっと、動かないで欲しいでやんす。これが見えないんでやんすか?」
子分っぽい喋り方の男は、ルサリィの首にナイフを突きつける少年を指差す。
少年は操られているのか、目は虚で口からは涎すら垂れている…
ティファの方には急に動いたりしないよう、ティファの体を縛るロープと子供達の首とが繋がれていた。
…あれじゃ、ティファの援護を期待するのは無理だな。
俺は、メリーと相談していた策の一つを頭から消去する。
そして残り二つの内、平和的な方を選んで優しく語りかけてみる。
「なぁあんたら、俺はさ…こう見えても結構金持ちなんだぜ?それに地位もあるし、俺の仲間になれば思いのままの生活を約束してやれる。…俺に付かないか?」
「…さすが、侯爵様は言う事が違うでやんすね。だけど、そんな手には乗らない、ジェシカの姉御は裏切れないんでやんすよ。」
下っ端口調の男は、俺の提案に呆れたように手を挙げると「やれやれ」と言った表情を浮かべ拒否してくる。
…どうやら、アイツと奴隷商会の長ジェシカには深い関係性がありそうだな。
俺は「取り込めるなら恨みを我慢してでも飲み込むべき」とメリーに言われたので、我慢して提案した平和的解決案を拒否された為、これ幸いと最後の武力による作戦を実行に移す…
「…分かった。それが駄目なら俺には手がない、もう降参するから二人だけは助けてくれ。」
「ユウト様⁉︎」
「…お兄ちゃん」
俺が両手を上げ、いかにも諦めた表情をすると、ティファとルサリィは愕然とした顔をした後、ルサリィは泣きそうな顔を、ティファは「自分がやるしかないか」と、そんな表情になる。
「…本気でやんすか?」
下っ端口調の男は怪訝な顔をしていて、俺を疑ってるようだけど…他のゴロツキ達はニヤニヤと自分達の優位を疑っていないようで、その場の雰囲気が少し緩んでいく
…コツコツ
「何してるでやんすか?」
俺が靴を鳴らすと「足下に何かあるのか?」と男達が一瞬、視線を俺の足に向けた。
昔に取り決めた俺の足を鳴らす合図を聞き、それと同時にティファが頷くと行動を開始する。
「すみません!はっ!」
…ドゴッ!
「ぐぺっ!」
一瞬の隙をついて放った、ティファの横蹴りがルサリィを脅していた少年の横っ腹を貫き吹き飛ばす。
だが、ティファは子供達の首と繋がれているので、その場からそれ以上は動けない…
…が、十分だっ‼︎
「全員捕まえろグラチェス!」
俺の言葉に反応して地面が隆起したかと思うと、床を突き破り植物の蔦が現れその場の人間全てを搦め捕ろうと動く。
「またこいつでやんすか⁉︎」
素早く避け距離を取ろうとする男には、爆弾型アイテム『モーリスの誓い』を放り投げてやる。
「なにっ⁉︎」
ドカーンッ!…
第四位魔法のボム程度では、致命傷は与えられないが、奴にダメージと隙を生み出したので、蔦が捕まえようと襲いかかる
「…うぐっ!帰還の巻物でやんす!」
俺がティファのロープを切っていると、下っ端男は巻物を発動させて蔦をかわして逃げてしまう…
…
「…申し訳ございません、ユウト様」
「お兄ちゃーん!」
「二人とも無事で良かった、遅くなってごめんな。」
安心した顔で胸に飛び込んでくる二人を、笑顔で迎え入れる俺はティファの尻と、ルサリィのケモ耳を撫でながら、「取り返した」と実感するのであった。
…
……
ひとしきり撫で回して、二人が感動の表情から微妙な表情に変わり始めたので、真面目な顔で次の作戦を伝える。
「二人には申し訳ないんだけど、レアとシャルも助けに行かないといけないんだ…行けるか⁈」
「はいっ!」
「うんっ!」
二人の返事に頷くと、俺は最終目的地である、シスタージェシカが運営する養護院…ジェシカ奴隷商会へと向かうのであった。
ーーーートプの大森林
「うわぁっ!サーベルタイガーだっ、助けてくれぇ!」
…ヒュンッ!
「こっちにはイレブンスライムがっ!ひぃぃ〜」
…バシュッ…ボォウッ!
大森林を切り開き、帝国領からグデ山脈を迂回できるルートを作ろうとする帝国兵達
普通であれば、モンスターの警戒や討伐には相当の戦力が必要だが、兵士の悲鳴を聞いた直後にはモンスターの悲鳴が重なって聞こえる。
なぜなら、兵士達を警護するのは自治国家『日の本』を治める黒崎秋人と、配下で元NPCの小春だからだ。
60〜80レベルのソロモンスターが多く存在するトプの大森林でも、LV100のシュウトとLV85のコハルなら苦労なく敵を狩ることが出来る。
「…しかし、モンスターとのエンカウントが多すぎないか?」
「何者かが意図的に集めていると?」
シュウトが険しい顔で意見を求めると、コハルが乱れた黒髪を耳にかき上げながら質問で返す。
「その可能性はあるな…もし、それらしき者がいたら殺さず捕まえておけ。ちょっと体に聞いてやろう。」
「…はっ、畏まりました。」
短い会話を交わすと、二人は再び聞こえてくるる兵士から聞こえる悲鳴の元へと走り去って行く。
…
「サスガ、異界ノ者ハ強イナ…」
「ダガ、ボスヘノ恩ガアル、出来ル限リノボウガイヲセヨッ」
「「ハッ!」」
トプの大森林に種族を構える、狼人族の人々は族長の息子であるペルの指示に従い、整地作業を行う帝国兵達に向けてモンスターを誘導しているのだ。
森で生きる彼等は、モンスターの扱いに長けており、それぞれの特徴にあった方法で誘き寄せぶつけている。
しかし、当然に自分達が襲われてしまうリスクもあるため…ユウトなどと言う見た事も無い人族の為にこれだけの行動を起こすのは、いかにペルやその父親である族長の信頼が厚いか、と言うのが見て取れるだろう…
そして、この行動は種族の危機を脅かす出来事の起死回生の恩となるが…
それはまだ、先のお話であった。
次で作戦完了です。
…長かった。




