王都への招集
ーーーーーシルクット 東部地区
ルサリィからのクエストを無事完了させた俺達に、シャーロットとレンは、王都への招集命令を持ってきたと言った。
し、しかし…
さすがに砂漠終わりで王都に向かうのは、いくらなんでもキツイ。
ルサリィを送り届ける必要もあったので、少しだけ待ってもらうようにお願いしたんだが…
何故か二人が、「王都に戻るのは嫌だ!」 と、ダダをこね出したので、仕方なくシルクットのウチのアジトへ招待する事になってしまった。
…急ぐ必要無いのかよっ!
まぁ正直、疲れもあったし休めるのは良いんだが…シャーロットを屋敷に招くなんて、緊張するからイベントは、万全の体制で臨みたかったんだけどなぁ
そういえば、たしか前回の時は…
「公人が一般人の邸宅に泊まるのは良くありません。」
と、きっばりお断りされたのに、今回は「お邪魔しても良いのですか⁈」と、エラく乗り気に変わってたんだが…
一体、何がそんなにシャーロットの心境を変化させたのだろう?
まさか…
ティファが「どうせなら、泊まりに来ますか?」と、言ったのが良かったと言うのか?
俺の時はダメで、ティファはOKとか…
シャーロットたん、それダメージでかいっす…
……
そんなやりとりをした後、俺は今…疲れからかネガティブ思考全開で、ルサリィを東地区の自宅へ送り届ける為に三人で歩いている。
レンとシャーロット達の相手は、レアとアスペルの本部にある、メイド商会から派遣してもらったメイドのシアンに対応してもらうよう無理矢理にお願いしてきたんだけど…
ったく、こんな時に頼りになる、メリッサは何処に行ったんだ?
…もう二日くらい戻っていないらしいし、多少は心配した方が良いのだろうか?
……ギュッ
俺は繋がれている左手が強く握られたので、掴んでいるルサリィに視線をやる。
「お兄ちゃん…心配な事があるの?」
俺のポーカーフェイスを読み解くとは…
ルサリィちゃま、素敵…
俺がそんなアフォな事を考えているのまでは、さすがに読めなかったのか、首を傾げるルサリィ
…今は都市内に居るので、フードを深くかぶっているからケモ耳は見えないが、つぶらな瞳の彼女が見てくるので、視線を合わせて笑いかける。
そして、
「ルサリィとお別れは寂しいな…と思ってさ。
それだけだよ?」
少しからかうよう言ってみる。
「…えっ……そんな…」
「いつでも遊びに来て大丈夫ですよ?ユウト様はお優しいので歓迎してくれますから。」
照れて俯くルサリィに、俺と反対の手を繋いでいるティファが優しく語りかけている。
…どうやら、ティファは小さい子の面倒を見るのが好きなようだ。
シャーロットは背が小さいから、ルサリィと同じような扱いで、優しく接してあげてくれているのだろうか?
俺は、笑い合う二人を見ながら、改めて見ると、この状況は…"親子"のように見えるのでは?
と、勝手に解釈してドキドキする。
ティファは美人だし良い母親になれそうだ、ルサリィは可愛いし…そうなると俺だけか?微妙なのは…
…うるせぇっ!
自分の心に突っ込んでいると、いつの間にかルサリィの家に着いてしまった。
…コン、コンッ
…
……
ガチャッ
「…ルサリィ!?あなた、いったい何処まで行っていたのっ!…心配したのよ…本当に」
ルサリィの母親は、元気なルサリィの姿を見て泣きながら抱きしめる。
そして、俺たちに気付いて顔を上げた。
「…あっ、あの、あなた方が、この子を連れ帰って下さったのでしょうか?」
ケモ耳を生やした顔は少しキツそうだけど、スタイルのよさそうな母親が尋ねて来たので、俺は事の顛末を説明する。
「…そうでしたか。この子は少し出掛けるとしか…私の体の為に…申し訳ありませんでした。」
話の途中で、自分のケモ耳が出ている事に気付いて少し焦っていた彼女だったけど、ルサリィが俺達に差別の心配はいらないから大丈夫だ。
と、説明してくれたので、落ち着きを取り戻し話を聞き終わると「迷惑を掛けた上に、娘の命を守って頂きありがとうございます。」そう言い深々と頭を下げてくる。
俺とティファは乗りかかった事だったし、事前に危ないから…と、止めたりきちんと伝えているのかを確認しなかった自分達も悪かったと、逆に謝っておいた。
…是非、中でお茶でもと言われるが、体調の良くない人に気を遣わせる訳にはいかないので、ルサリィに「いつでも遊びにおいで!」と伝えて、その場を後にした。
ルサリィは俺達の姿が見えなくなるまで手を振ってくれていた。
…
屋敷への帰り道…
「…あの女性は、一体何の病気なのでしょうか?」
「そうだな。頬は少しコケていたけど、普通そうに見えたよな?ティファは最初に何か聞いてないのか?」
「申し訳ございません。あんな少女が単身で砂漠に向かうのを、何とかする方に意識が行ってしまっており…」
謝るティファに大丈夫だからとフォローをしつつ、お互いの意見をすり合わせ分かる範囲の情報を整理しておく。
ティファは結果的にルサリィの母親に謝罪させてしまった事を、申し訳ないと謝ってくるがそんな事は気にしないでいいからと伝え考える。
…そう言えば、確かにそうだよな。
ルサリィのレベルで砂漠にソロで挑むなんて、普通に考えれば無茶だ。
特に理由を聞きはしなかったけど、「誰かに言われたから」って言ってたような気がする…
今度、あの砂水晶花を、その"誰か"に渡す時は、俺も着いて行った方が良いのかもしれないな…
騙されたり、危ない事に巻き込まれるのは防がないと。
…あんな可愛い少女に何かあったら、世界レベルの損失だ‼︎
そして、俺が考えた事を伝えるとティファも同意し、同行したいと言ってくれた。
…なので、明日にでも再度、ルサリィの元を訪ねて見ようと言う事で落ち着いたのであった。
ーーーーーシルクット ユウト邸
「……」
「…」
「……」
「あっ、あの、どうぞ、お召し上がり下さい!冷めてしまいますので…」
シルクットのアイアンメイデン支部に派遣されているメイドのシアンが、自分が用意したお茶に手を付けない三人に、オロオロしながらも伝える。
「…ずずっ……」
「ほな、もらおか」
「…ええ、いただきましょう。」
俺やレン達が屋敷に戻り、レアは俺に二人の相手を任されてから終始無言を貫いている。
この時レアには何故、自らの主人を狙った奴らが客としてこの屋敷に来たのか、サッパリ分からなかった。
説明も無く「任せた!」と、良い笑顔で出て行った、某ご主人に心の中で唾を吐くとレアは無表情で考える。
…今この屋敷には、甘やかしてくれ…頼りになるメリッサ姉様は居ない。
新人のメイドと私だけだ。
せっかく帰って来たティファ姉様も、ご主人様と出掛けて行ってしまった。
…そもそも私の役目は、
食う、寝る、遊ぶ、仕事をする、だ!
…割合で言うと、
7、2、0.5、0.5
と言った所か。
当然、客の相手をしたり、相手が何を考えているか…そんな事を探るなんて、範疇外も良いところだっ!
それなのに、敵と思われる二人とテーブルを挟んで向かい合い、何をどう相手しろと言うのか?
皆が何を考えて招いたのか、理解に苦しむ。
ここは、新人メイドのシアンに全て丸投げし、自分は部屋に戻ってオヤツを食べるべきなのでは無いか…
すっとシアンに視線を向けると何かを察したのか、肩を跳ねあげて、シアンはキッチンに逃げてしまった。
…ちっ、どうしよう、この二人を殺せと言われれば殺るが、帰ってきた時の感じだと逆にダメと言われる可能性もある。
…やはりココは皆が戻ってくるまで、無言を貫くべきだろう。
レアは頭の中で検討を終えると、瞼を閉じる。
……ぐぅ〜…くぅ。
…はぁ、おなかへった。
ーーーーレン視点
ユウトの屋敷にお呼ばれしたんはいいけど、向かいに座ってる、このちっこい嬢ちゃんは終始無言や…
シャルがエライ乗り気になって、「屋敷に泊めてもらいましょう!」って、なったんはエエんやけど…ずっとこの状態は、マジで勘弁やでっ!?
…ここは、大人として俺がトークをリードする必要があるっちゅう事なんかっ?よしっ。
「…あ〜、さて皆さ」
「貴方は、確かレア…さんですよね?」
「…そう…」
「実は、私達は、貴方の主人であるユウトさんと、お姉様?のティファさんに大変お世話になりました。」
「…そう…」
「…なので、先日、私達がしたユウトさんへの行為は、全面的に謝罪させていただきます。」
俺の気の利いた軽快な筈のトークを掻っ攫って行った上に、なぜか詰めの謝る部分だけ、俺に振ってくる無茶苦茶なシャルに、ジト目を向けてみたけど
…無視された。
「…あん時は、すまんかった!堪忍や!」
諦めて謝ったけど、俺は確か、攻撃を受けただけで、自分からは何もせんかった気がするんやけどな!
「…レンもこう言っていますので、水に流して頂ければ幸いです。」
「…ん、事情は分かった。…何かたべる?」
「おっ!ええん…」
…バシッ!
「あたっ⁉︎」
飲み込みの早いお嬢ちゃんが、気の利いた提案してくれたから、お言葉に甘えて頂こう思ったらシャルにどつかれた…
「ユウトさんや、ティファお姉さんが帰って来てからで、大丈夫ですよ?」
ニコやかにシャルが答えるけど、貴族の礼儀とか、俺ら地球の現代人にはカンケーあらへんのになぁ…
「…じゃあ、お先に」
「…へっ⁉︎」
「…あっはははっ!ふげっ!?」
ユウトを待つて礼儀で返したら、嬢ちゃんの方が食いモン求めてキッチンに旅立とうとしてるもんやから、シャルが変な声だしとる。
…思わず笑てたら肘打ちくろたし、
普通に痛いわっ!
ユウトの周りには、オモロい奴がいっぱい居るみたいやし、屋敷に居る間は退屈せんのやろなぁ…
ーーーーシアン視点
…この屋敷に住む方々は変な人ばかりだ。
ウチの近所に住んでいた、サリ姉・サル姉の二人が、メイドとして通ってる屋敷の主人が、「シルクットで働けるメイドを募集してる。」って、教えてくれて…給金も良いし、身元の確かな人間を探しているから、希望するなら紹介してあげると、言われて喜んで来たんだけど…
…本当に変わった方ばっかり。
真面目で模範的な人そうなのに、たまにぶっ飛んだ言動をするティファ様。
いつも完璧だけど、エッチな事をしてくるメリッサ様。
食事やオヤツを用意したのに瞬間で消して、用意されてないと言い張るレア様。
…そして、いつも美人に囲まれているくせに、ただのメイドな私にも、偶然助平を求めてくるし、「メイドたんもえ〜」とか、訳の分からない事を言い出す変なご主人様。
…あんなに美人を揃えて、こんな一般人の何が良いと言うのだろうか?
…本当に理解に困る。
そりゃ、確かに給金が良い筈だわ…
サリ姉達は二人で雇ってもらってるから仕事も分担して出来るけど、私は全部一人だもの…
はぁ、誰か追加で雇ってくれないかなぁ。
それに、今だって…
ユウト様は突然出掛けたと思ったら、突然、王都のお偉いさん?のような方々を連れて帰って来るし…対応してくれている筈のレア様からは、私に任せようとする気配が漂ってきてたもんね。
…焦って、逃げたけど。
一体、この屋敷の住人はどうなってるの?
私は普通のメイドで十分なのよぉっ!!
あぁ、サリ姉に騙された……
ーーーーユウト視点
ティファとアレコレ話しをしながら帰ると、ノックと共に、新人メイドのシアンが裏で待っていたかのごとく、即座にドアを開けて俺達を迎え入れてくれる…
「おっ!お帰りなさいませっご主人様!ささっ、お客様達がお待ちですよー!」
「お…おうっ。」
妙に力のこもった、お帰りの挨拶に俺は気圧されながら屋敷に入り部屋を覗く。
「…おっ、おうユウト!待っとったでぇ!」
「お邪魔しています。」
「…おかえり…さい。ご主人様……ティファ姉様」
「あ、あぁ…た、ただいま!レアはちゃんと相手してたのかな〜?」
「…ん、もんだい無し。」
「どこがやっ!?」
大丈夫だと親指を立ててくるレアだけど…
レンの反応からして、おそらくは何の役にも立たなかったのだろう。
シアンが飛び出して来たのも、この空気に耐えられなかったからか…
俺はレアの頭に軽くゲンコツを落とすと、「ちゃんと頼んでおいたろ?」と言って叱っておく。
…めちゃめちゃ反抗的な目で見られたけど
…もしかして、ちゃんと相手してたのか?いや、そんな感じには見えんかったのだがなぁ
……
シアンに追加のお茶を頼んで、俺達は二人の前に座り話を聞く。
「あのチビちゃんは、ちゃんと届けて来たんか?」
「あぁ、もちろん。お母様と挨拶も済ませて来たさ!」
「自分も、すっきゃなぁ…」
俺とレンで、たわいない話しをする横で、シャーロットとティファも話しをしていた。
「あの、ティファ…お姉さんは、お体は大丈夫ですか?」
「…私は、貴方の姉ではありませんよ?」
おぉ、ティファの天然返しが炸裂しとるぞ!負けるなシャーロット、頑張れ頑張れ!
でも、シャーロットたんが照れてる…可愛いなぁ…
「…あっ、ハ…ハイ。」
「ちゃうがな!シャルは、ベッピンさんの人柄に惚れたから姉さんと呼びたいって…」
……ドスッ!
「ぐほぉぉっ!」
「人前ではシャーロット様と呼びなさい!」
シャーロットの繊細な想いを簡単にバラすレンに、綺麗な肘打ちが入りレンはその場で悶絶する。
「…仲が良いのですね?別に呼び名は気にしないので、好きに呼んで構いませんよ。」
「はっ、はい!」
「それに、あなたの方こそ大丈夫?」
お姉さん呼びを認められて喜ぶシャーロットは、俺にもらったポーションで回復したから大丈夫だと言っていたが…
その話になると俺の方を向いて改まる。
「…ユウトさん。貴方にも色々とご迷惑をお掛けしました。このお礼は、王都に行った際に必ずさせて頂きます。」
俺は、あの程度なんて問題無いからと手を振ったけど…やっぱり俺には、言葉使いが、ちょっと硬いよねっ!?
でも、シャーロットたんが俺の名前を呼んでくれるだけでも、ご飯三杯は…
…いやいや、違うか。
真面目に考えないとな。
そうだっ!この前、和解して帰ったばかりの二人が、何故すぐに俺を王都に連れて行こうとするのか…これについて、しっかり話を聞いて対応を考えないと。
…俺は気を引き締め直して、真面目な顔で二人に問う。
「…さぁ汝らよ、我に何を求めるのだ!」




