表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はんぶんこ天使  作者: 和泉 利依
聞いてないよ!
18/30

- 4 -

「アンケートの結果でーす。はい、どうぞ」

 私も手元のプリントを眺める。夕べ遅くまでかかっちゃったけど、間にあって良かった。


 にこにことそれを眺めていると、向こうの方から瑠奈ちゃんたちが話しているのが聞こえた。

「谷本さん、大変だったねー。よくまとめてあるじゃない」

「手伝わなくてごめんねー」

 それは、四組の委員の人だった。

 そっか。前回瑠奈ちゃんがこれをやるって委員会で話がでたから、みんな瑠奈ちゃんがやったと思ってるんだ。


「数が多かったから大変だったよー。でも、委員会に必要なものだもんね。副委員長の仕事だし」

 え? 

 瑠奈ちゃんは四組の人の言葉を否定することなく、次の人へとプリントを渡してる。

 瑠奈ちゃん、その言い方じゃまるでこれ、瑠奈ちゃんが作ったみたいだよ。

 私は、もやっとした気分のまま同じような会話を繰り返す瑠奈ちゃんの後ろ姿を見つめた。

 今頃きっと、私の背中にもあの黒いもやがにょきにょきと伸びている気がする。


「最後に、中尾先生、お願いします」

 すべての議題が終わって、中尾先生が立ち上がる。

「年が明けたらすぐ、会長選挙が始まる。それにあわせて委員会の方も引継ぎを……」

 先生の声が遠くで聞こえる。


 結局、あのアンケートは瑠奈ちゃんがやったことになってしまったみたい。本当は、私がやったのに。でも、実は私がやりました、なんてここで声を上げるのも変だし……

 がんばったのに。颯太だって、遅くまで手伝ってくれたのに。


「次の委員への引継ぎの資料も用意しておけよ。今回のようにぎりぎりで資料の提出をすることのないよう、次回は気をつけるように」

 じろり、と確かに中尾先生は私の方を見て言った。また胸が、ぎゅ、と苦しくなる。

 違うんです。

 そう言いたいのに、声が出せない。

「はあい、わかりました。ね、美優ちゃん」

 そんな私のとなりで、瑠奈ちゃんが笑いながら言った。私は、こくり、と頷くことしかできなかった。

 どうしよう。泣きそう。


「これで委員会を終わります。でもその前に」

 楓ちゃんが、ノートを閉じながら言った。

「みなさんのお手元にある全校からのアンケート集計ですが、これは昨日、副委員長の相葉さんが一人でまとめてくれたものです」

 え? 

 私は、勢いよく顔をあげて楓ちゃんを見た。委員のみんなも、驚いた顔になっている。

 同じように驚いた顔になった瑠奈ちゃんをまっすぐに見ながら、楓ちゃんが続けた。


「前回の委員会で、この集計を副委員長にお願いした時、谷本さんがやりますと言ってくださったのでお願いしました。ですが、このアンケート集計も各班長へ配布するはずのプリントも、昨日まで全く手が付けられていなかったようです。それを、相葉さんががんばって今日の委員会に間に合わせてくれました。どういうことですか、谷本さん」

 教室の中がざわざわとうるさくなる。瑠奈ちゃんは、何も言わずにうつむいていた。その背中に黒いもやが大きくふくらんでくる。

 答えない瑠奈ちゃんから、楓ちゃんが私に視線をうつした。


「相葉さん、私も児童総会の準備にかまけてて確認をおこたっていてすみませんでした。一晩でこれをまとめるのは、大変だったでしょう。ありがとうね」

 にっこりと楓ちゃんが笑う。

 楓ちゃん、知っていたんだ。

 ふと思い当たって、六年の席を見ると、日比野さんが目を合わせてうなずいてくれた。勝屋さんも、に、と笑う。

 『委員長に言っておくから』

 昨日言った通り、日比野さんが楓ちゃんに話してくれたんだ。


「谷本さん」

「……はい」

 私にかけた声よりも、少し強い口調になって、楓ちゃんは言った。

「確かに副委員長はあなたと相葉さんですから、仕事の二人に責任はあります。あなたは手伝うと言った相葉さんに、一人で大丈夫だから、と前回言っていましたね。もちろん、やってみて大変だと思ったら、そう言って手伝ってもらえばいいと思います。けれど、直前になって丸投げするのは、相手にとって大変な負担になります。今後は、もう少し自分の言葉に責任を持って行動してください」

 何か言うかと思ったけど、瑠奈ちゃんはそのまま荷物をまとめるとあっという間に教室を出て行ってしまった。


 瑠奈ちゃんが出て行くのを見て、委員のみんなも席を立ち始めた。なんとなく気まずい空気の中で私も席を立つと、楓ちゃんが私に近づいてきた。

「楓ちゃん、あの……」

 ありがとうと言っていいのかごめんなさいと言っていいのかわかりかねて私が口ごもると、楓ちゃんが真面目な顔で言った。

「美優ちゃん、何があったか聞かせて?」

「楓ちゃんはさっきの話、日比野さんから聞いたの?」

「うん。けど、美優ちゃんからちゃんと聞きたい」

 私がうなずくと楓ちゃんはさっきまで瑠奈ちゃんのいた席に座ったので、私も座りなおして昨日の出来事を話し始めた。


「……だから、私も確認しておかなきゃいけなかったの。今度は、気をつけるね」

 話し終えた頃には、教室には私と楓ちゃんの二人だけになっていた。

「そうね。美優ちゃんも確認不足だったわね。もちろん、私も」

「楓ちゃんも?」

「うん。だって私、委員長だもの。人に頼んだ仕事がどうなっているかちゃんと見ておく責任がある。それで美優ちゃんに負担をかけちゃったんだもの、本当にごめんね」

「楓ちゃんだって、総会の資料作りで忙しかったんでしょ?」

「そんなの委員長の役割分担だもの。言い訳にもならないわ」

 きっぱり言った楓ちゃんはかっこよくて、思わず見とれてしまった。すると楓ちゃんは、困ったように笑う。


「でも美優ちゃん。美優ちゃんにも、一つ悪かったところがあるわね」

「え、何?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=177137354&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ