ジグザグな恋模様
タイトルにセンスは無い。
それは今に始まった事では無い。
俺こと、佐野悠大はこの日人生で最も緊張していた。高校に上がりどんどん綺麗になって、意識し出してしまった幼馴染みの少女、加藤里奈に付き合ってくれと告白をしたからだ。
「……………………ごめん」
「えっ?な、何で?」
「他に好きな人が居るの…………」
「はっ?だ、誰だよ!?俺の知ってる奴?」
「…………………………………………」
そしてその結果がこれだ。
何で黙り込むんだよっ!!
そんなに言い出しづらい相手なのか?も、もしや教師か?教師なのか?
「相手は誰だよっ!」
「………その………」
「はっ!もしかして、俺を振る口実に好きな奴が居るって嘘を付いてるのか?」
「っ………!ち、違うわよっ!」
「うおっ……………」
俺の推理が当たったのか、里奈は突如大きな声を出してきた。お陰でびびってしまったじゃないかっ!
お、落ち着け俺の心の臓よ。
「私が、私が好きなのは一ノ瀬くんなのよっ!」
「は、はぁっっっ!?」
1度落ち着きかけた俺の心臓が、驚愕でまたもやバクバクしてきた。
里奈が言った一ノ瀬とは、我が校一の有名人であり、来るもの拒まず去るもの追わずなヤリチンヤローだ。
良いのは顔と身体とあっちのテクだけという噂の奴だ。
「お、お前正気かっ!?一ノ瀬ってあの、一ノ瀬譲だよな?あいつの噂は耳にしてんだろ?」
「もちろん噂は知ってるけど……………」
「じゃあ何でだよっ!少しの間遊ばれて、ポイされた子が何十人も居るの知ってるだろ!?」
「そんな事は悠大に言われなくても分かってるわよっ!でも………でも好きになっちゃったんだから、仕方無いでしょ!」
「何でそんな奴を好きになるんだよっ!好きになった理由が知りたいっての!」
「………………前に先生に頼まれた大量のプリントを運んでいる時、彼が何も言わずに全部持ってくれたのよ………」
「……………………………………………ん?」
ええっ?も、もしやこいつ、そんな事であのヤリチンヤローに惚れたのか?本気で言ってるんだったらチョロすぎだぞお前!!
「で?」
「ええっ?で?って、何よ?」
「いや、その他に何かあったんだろ?その、お前が恋に落ちる位だからさ」
「…………………それだけだけど?」
「マジかっ!?俺が言うのも何だけど里奈…………お前チョロすぎだな」
「ち、違うのよ!!その、悪い噂ばっかり聞いていたから、手伝ってくれるなんて思わなくてその、ギャップが…………………」
「はあっ…………女ってそういうギャップとかに弱いんだよな~」
「んもうっ!悠大にそう言われると思ってたし!でも悠大が告白してくれたから、私もそう言われるのを覚悟して告白したんだからねっ!」
うぐぐっ………。そう言われると、俺は強くは出られん……ちくしょう!俺の事を熟知してやがる。
「はあ…………俺はそんなヤリチンヤローに負けたのか…………………」
「ちょっと、そんな風に言わないでよ。あれで一ノ瀬くんは優しいのよ。ちゃんと最初に直ぐに飽きるって宣言しているって事は、俺に本気になるなよっていう予防線でしょ?だから彼と付き合うのは割り切った考えの子ばっかりだし………」
「いや、何人も泣かせてるって……さっき俺が言ったじゃ…………」
「シャラップ悠大っっっ!!!」
「………ひぃっ!」
な、なんだ。里奈の奴、すっかり骨抜きにされてやがんぞ?一体どう解釈すればそう好意的な考えに至れるのか?
これが恋は盲目ってやつなんだな、多分。
……………………だとすると、俺の里奈への気持ちは恋では無かったのだろうか?
だって…………一ノ瀬の事を熱く語る里奈を見ていると、湧いてくるのは嫉妬心ではなく可哀想な子を見るときに浮かぶ感情、そう憐れみだ。
もちろん悔しい気持ちはあるにはあるさ。でもなんか直ぐに乗り越えられそうだ。
里奈が綺麗になった原因はもしかすると一ノ瀬なのかもしれない。俺はまんまとそれに踊らされただけなのかもな。
「…………分かった。もう良いや。告れてスッキリしたし…………里奈が無謀な相手に恋してるってのも分かったし」
「無謀って言わないでよねっ!もしかすると私にもチャンスがあるかもしれないじゃない?」
「……………………………………………」
「何で黙るのよっ!!」
いや、お前……夢見すぎだろ。俺のようにもっと現実を直視しろよ。
まぁ、痛い目を見て泣かされたらザマァとは言わず、慰めの言葉ぐらいは掛けてやっても良い。
「………………………………じゃあなっ!」
「あっ!ちょ、ちょっと!!」
これ以上一ノ瀬の話なぞ聞いてられない。俺は里奈に振られたのだから。
俺は里奈をその場に置き去りにしたまま走り去った。
走る俺の背に里奈の非難めいた声が聞こえたが知るかっ!!
さっきはちょっと強がって直ぐに乗り越えられそうだ……とか思ったけど、やっぱり流石に直ぐには無理だ。
惚れた女の前ではカッコつけたかった。でも限界だった。
走り去る俺の両目からは止めどなく涙が溢れ、頬を伝い落ちていた。
「ちくしょうちくしょうちくしょう~!!」
そして俺とした事が、うっかり失念していた。俺と里奈の家はお隣同士だということを。
次の日には俺が里奈へ告白して、撃沈した事は両家の知ることとなり、兄貴や姉貴に散々からかわれ、両親には慰められ、里奈の親父さんとお袋さんには気まずそうな視線を送られ、いたたまれない事この上無かった。
どうやら失恋の情報源は、姉貴の深雪であり里奈とはツーカーの仲なので、そこから漏れたらしかった。
里奈に口止めしなかった俺も悪いのだが、歩くスピーカーと称される姉貴に言うとは…………里奈の奴………俺に止めを刺す気だな。ちくしょう!!
その後、延々と3日間に渡り、ずっと周りで毎日騒がれたため、我慢の限界をむかえてしまい爆発するように「失恋でハートブロークンなんで、いい加減ほっといてくれよっ!!!」と、俺が叫んでしまったのは致し方が無い事であったと思う。
そしてその3日後の放課後、俺は意外な人物に呼び出される事となるのだが、それはまた別の話なのである。
里奈視点
幼馴染みの佐野悠大に告白された。
悠大の事は昔からやんちゃな弟程度にしか思って無かったので、そんな相手からの突然の告白に私は驚いた。
悠大の事は決して嫌いでは無かったので、もしも現在私が誰にも恋をしていなかったのならば、付き合うくらいはしてたかもしれない。
でも現在私は他の人に恋をしてしまっている。
多分告白すれば直ぐに付き合えるとは思う。なんたって相手は来るもの拒まず去るもの追わずな男、一ノ瀬譲くんである。そして飽きたら一方的にポイ。
そんな最低の噂がある男を私は本気で好きになってしまった。
好きになった原因が大量のプリントを運ぶのを手伝ってもらっただけなのだから、自分でも恋に落ちるポイントがお手軽過ぎだと思っている。でも好きになってしまったのだからしょうがない。恋は惚れた方が負けなのだから。
私は悠大に告白されたのを切っ掛けに、自分も一ノ瀬くんに告白をしてみようと思った。
もしかして私が頑張って彼に本気で愛を伝えたら、彼は他の子と違い私にだけは本気になってくれるかもしれない。
いやいやそれが私の希望的観測だってのは、十分承知の上ですけど、だからこそ求願ってみたくなるものじゃない?
一応告白するのに年長者の意見を聞いておくことにした私は、長年お隣同士で姉妹みたいに仲良くしている悠大のお姉ちゃんの深雪ちゃんに色々相談した。
「ふ~ん。ついに今日、我が愚弟に告白されたのか~」
「えっ?ついにって深雪ちゃん、悠大が私に告白するって知ってたの?」
「はっ!私はアイツの姉よ?しかもあんなに分かりやすい態度をとられちゃ、気付くなって方が無理よ」
「そ、そんなに分かりやすかったんだ………」
「大分ね」
「うん、そっか。でも他の人には内緒にしてね?深雪ちゃんだから話したんだから。それになんか恥ずかしいし」
「あっは!まかせて!他人には言わないよ……他人には、ね」
「そう?ありがとう!」
深雪ちゃんはドンッと、自分の胸元を叩くと誰にも言わないと誓ってくれたので、ひと安心だ。
「で?今度は里奈が他の奴に告白をするって事だったわね?相手ってどんな奴なの?」
ふわっ!そうそう、ここからが本題だった。
「そうなの。彼の名前は一ノ瀬譲くんって言って、ワイルドな魅力溢れるイケメンなんだけど、時おり気紛れに見せる不器用な優しさがステキなの!」
「ああ………そっか。そりゃあ我が愚弟とは180度正反対なタイプだね」
「うん、悠大とは別なタイプ。そんなワイルドな彼がふとした時に見せる優しさに私は心を奪われちゃったと言いますか…………」
「ははぁ……なるほど!ギャップ萌えってやつだね。うんうん、女子はそこを突かれると弱いからねぇ……」
「そうなの!それで悠大に触発されちゃったから、今度は私が彼に告白してみようと思って!」
「――――――――――――――――勝算はあるの?」
さっきまでは一緒にキャーキャー盛り上がってくれていた深雪ちゃんが、不安そうに聞いてくる。
勝算というか、多分拒まれない。だって彼は来るもの拒まず去るもの追わずなのだから。
「………………………うん、多分」
あくまでも噂なので、ここは謙虚な返事をしておこう。
「そう………だったら里奈の気持ちをそのままストレートに伝えれば良いんじゃない?里奈は可愛いし、性格もそんなに悪くないし」
「そんなにって………」
「いやあ、まあちょっと打算的な部分もあるってだけで…………」
「…………それは……そうだけど」
「って!否定しないんかいっ!!」
「えへ?」
私が深雪ちゃんにペロリと舌を出してとぼけてみせると、深雪ちゃんは「恐ろしい子っ!」と言いながら青い顔をしていた。
***
そして次の日の朝、眠い目を擦りながら階下へと降りると、両親が何か言いたげな表情で私をジーーーっと見つめてくる。
一体何なのでしょうか?
怪訝に思ってい首を傾げていると、ポツリと母が一言呟いた。
「悠大くん………可愛いのに勿体ない」
母の呟きに肝を冷やしました。
何故母の口からその台詞が出てくるのでしょうか?
悠大が母言ったのかな?いや、でもあの意地っ張りな悠大が母にそんなことを言う筈が無い。
だとすると、犯人は………………1人しか居ない!
――――――――――――――――そう、深雪ちゃんだ。
嘘ぉ!な、内緒にしてって約束したのに!な、何でなの?
私は本人に確認するためにスマホのアプリ、ライソを起動して深雪ちゃんに確認をした。
【ちょっと深雪ちゃん!?悠大との事、お母さん達に喋ったの?内緒にしてって言ったのに!酷いよっ!!】
数秒もしない内に返事が返ってくる。
【うん?私は約束通り内緒にしたよ?】
深雪ちゃんはしゃあしゃあと嘘をつく。
【嘘だぁ!だってお母さん物凄く意味深な台詞を呟いてたんだけど?】
【ええっ?でも、私は他人には喋って無いよ?】
【えっ?他人にはって………じゃ、じゃあ誰に喋ったの?】
【う~ん………身内には喋ったけど。兄さんとか父さんとか母さんとか?】
【うっぎゃあっ!!!それアウトだよ!うちのお母さんと深雪ちゃん家のお母さん、物凄く仲良いじゃん!そこから今回の件は露見したんだよ。ううっ………内緒にって約束したのに……】
【だから~私は約束通り、他人には内緒にしたって。でも身内には言うなって言われなかったし~?】
ふんだっ!深雪ちゃんの屁理屈を聞くのはもう飽き飽きなので、私は既読無視でライソを終了し、物言いたげな両親の視線もあえて無視をしながら足早にその場を後にしたのであった。
***
学校に到着後、同じクラスの悠大と気まずい雰囲気の中、昼休みまで何とか過ごすと私はなけなしの勇気を振り絞って、隣のクラスの一ノ瀬くんを人気の無い場所まで呼び出した。
一ノ瀬くんはいつも漂うワイルドな威圧感を霧散させ、どこかボンヤリした表情で私の呼び出しに応じてくれた。
うん。な、なんだか今日の彼はボンヤリしているせいか、告白しやすい雰囲気を醸し出している気がする。
これって……もしかするともしかするかもしれない。
実は彼も私の事が気になっていて、呼び出されて喜んでたりして…………なんてね?
私は心臓がドキドキし過ぎて、今にも破裂しそうなほどに緊張していたけど、昼休みの時間は無限ではなく、有限なのでそろそろ勇気を出して告白しなければならない。
私は少し震える声で彼に話し掛けた。
「と、突然ごめんね?」
「………………………………ああ」
彼はやはりボンヤリして、気もそぞろな様子で返事を返した。
「あ、あの……私は隣のクラスの加藤里奈と言います」
「知ってる」
きゃあっ!し、知ってるって!あの一ノ瀬くんが私の事を知ってるってぇ!!!
「そ、それでね………貴方に伝えたい事があるの」
「何?」
頑張れ私!口に出しさえすれば後はどうとでもなる筈だ。よ、よ~し………言うぞ。言っちゃうぞ。
「あ、あ、あのっ………そのっ………よ、良ければ私と付き合って下さいませんかっ!?」
「い……………………」
はううっ!「いいぜ」それとも「いやだ」なの?何で「い」で止めるのよ。
焦らしてるの?ど、どっち……どっちなの?
私の焦りとは裏腹に彼はまたボンヤリと虚空を見詰めるとゆっくり口を開いた。
「…………………や、無理だな」
「そ、そう………です……か?」
ポツリと溢されたその簡潔な言葉に、私は振られたのだと直ぐに理解した。
理解はしたが振られた理由は何だったのでしょうか。最後に聞いたらそれぐらいは教えてくれるかしら?
理由もなく振られたんだったらどうしよう?
「あのっ!私がむ、無理な理由を聞いてもいいかな?」
だって貴方はあの、来るもの拒まず去るもの追わずな一ノ瀬譲だった筈よね?
それとも噂は所詮噂に過ぎなかったのでしょうか。
「………………………そうだな。お前を振った理由、か。――――――――――――――それは自分でも信じられないんだが………」
彼は一瞬苦しそうな表情をすると
「俺はどうやら昨日、人生で初めての恋をした様だ。そいつが脳裏から離れないから、お前とは付き合えない。それが理由だ」
は、はあっ!?えっ?どういう事?昨日彼は初恋をしたって事?
だとすると、私って何てタイミングで告白しちゃったのかしら!
そ、それに高校生で初恋って、遅くない?
今まで相手に恋愛感情を抱けなかったからヤったらポイだったのかな?
だったら納得……………って、納得してどうする、私っっっっ!!!
そ、それで相手は一体誰なのっ!?
こんな悪いタイミングであの一ノ瀬くんを恋に落とした間の悪い女はぁぁぁぁぁ!!!
私はまだボンヤリしたままの一ノ瀬くんに詰め寄った。
「で?誰なんですか?貴方が初めて恋をしたという相手は?」
「…………………………………佐野、佐野悠大……………」
「はっ!?」
な、何ですって?今、彼はなんて言ったの?
聞き間違えじゃなければ佐野悠大って言わなかった?
ええっ?悠大ってあの悠大?
だって悠大は…………悠大は男ですけども?
「えっ?あの……その……悠大は男だよ?身長は低いし、どちらかというと中性的な容姿だけど歴とした男だよ?」
「…………知ってる」
聞き間違えたのか、それとも勘違いしているのかと思って聞いたのだが、どうやら間違えてはいなかった模様。
「あいつが男か女かなんて、そんな些末な事は気にしてない。ただ…………昨日見たあいつの本気で悔しそうな泣き顔が忘れられないだけだ」
ぐあっ!!反則!反則だよっ!
その憂いを含んだ眼差しで切なそうに言うのは狡いよっ!私の事を思って言っているんじゃないのに、ドキドキしちゃうから止めて欲しいんですけど。
それにしても…………悠大が泣いてたなんて全然知らなかったし、それを偶然目撃した一ノ瀬くんが悠大に惚れてしまうのも想定外だ。
間の悪い女ってなじったけど、男だったとは……………しかも相手は悠大ときたもんだ。
Oh!ノー!?こ、この後私は一体どうすれば良いのよぉぁぁぉぉぉぉぉぉ!!!
途方に暮れた私は頬を染めながら、嬉しそうに悠大の魅力を語る一ノ瀬くんの言葉を、昼休みが終了するまで私は延々と聞かされ続けたのであった。
一ノ瀬譲視点
俺はこれまで生きてきた人生の中で、自らの意思で欲しいと思った物や者に出会った事は無く、これまではただ惰性で生きてきた。
特に物にも者にも全く拘りも無く、適当に時を過ごしてきたのだが、そんな俺に運命の瞬間は予告もなく訪れた。
高校2年のとある放課後、いつもの様に人気の無い場所でヤることヤった後、帰ろうとした俺の目の前を、走りながら横切った男の泣き顔に雷に打たれた様な衝撃を感じた。
家に帰ってもその衝撃は尾を引き、そいつの泣き顔を思い出す度に今度は胸が大きく高鳴るのを感じた。
最初は何かの病気かと思い、家で数人の友人と麻雀をしていた母に問い掛けた。
するとその症状はとある病に該当する事が判明した。
母と友人達の見解ではその病気は恋の病だと言うそうだ。
初めての感覚に少し戸惑っている俺に、母はこれは悪い病気では無く、人として当たり前の事であると優しく諭された。
ついでに俺がちゃんと誰かを好きになれる事が分かり、母や友人達までもが物凄く嬉しそうに喜んでくれた。
俺が他の子供と違ってた事を少しは心配していた様であった。
因みに夕食は特上寿司を頼むというほどの喜びようであった。
(代金は母の友人達が出してくれた)
***
夕食後、たらふく特上寿司を食べた俺は自室のソファでボンヤリして居ると、またも浮かんで来るのはあいつ………………確か隣のクラスの佐野悠大の泣き顔だった。
あの悔しさと悲しさと切なさの入り交じった表情と、頬を伝って流れ落ちる涙の美しさは、何度思い返しても俺の胸を高鳴らせる。
佐野の事は他人に殆ど興味が無かった俺でも、一応知っている。
クラスが隣なので、体育の授業が一緒であったし、他の奴らよりも頭ひとつ分ほど身長が低いせいで、ある意味目立っていたからだ。
たがその時はこいつ小さいな………位の認識でしかなかったのだが、現在では泣き顔が魅力的で今度は俺があいつを泣かせてみたいとまで思ってしまった。
はあ……この病は重症だな………。
次の日になっても俺の脳内は佐野一色であった。
授業内容なんか全く耳に入ってこず、ずっとあいつの泣き顔を反芻して過ごした。
昼休みになる頃には俺のこの気持ちを佐野に伝えるべきか、伝えないかで葛藤まで起こっていた。
そんな時に女に呼び出された。また付き合ってくれとの告白かと思って呼ばれるままに後を付いて行った。
相手を良く見ると確か隣のクラスの加藤里奈だったか?
クラスの連中が可愛いと騒いでいたので覚えていた。
だが、今の俺には昨日の佐野の泣き顔の方が100倍そそる。
と、俺が佐野の泣き顔に思いを馳せてまたボンヤリしていると、俺を呼び出した加藤が自己紹介をしてきた。
一応名前などは知っているので適当に返事をした。
すると真っ赤に顔を染めながら上目使いに、俺の事を好きだと告白してきた。
いいぜ。
と、いつもの調子でオーケーしてしまうところだった。危なかった。癖って怖えな。
断ったらションボリしていた。そして何で自分が無理だったのかを聞かれた。
それはそうか………これまで俺は告白してきた相手はよほど変な奴以外は全てオーケーしてきたからな。
何で自分が無理だったのかってやっぱ理由は気になるか…………。
まぁ別に俺は困らないから理由を伝えてやっても良いか。
俺が理由を告白すると、加藤はすごく驚いていた。佐野は男だけど?と確認するように聞かれたが、だからなんだ?そんな事は知っている。
そんな加藤に佐野の泣き顔の魅力を昼休み中ずっと語って聞かせてやったのであった。
加藤に昼休み中語りまくったお陰で俺は決心した。佐野に俺のこの燃えたぎる気持ちを告白する事を。
ノーと言われてもイエスと言わせてみせる。この俺のテクでな。
その後のオマケ
佐野悠大→里奈の事なんかもう既にどうでも良い。今は自分の貞操を守り抜く事だけに全力を尽くしている。振り向けば奴が居るっ!!状態。
数回ほど押し倒されているが、機転を利かせて難を逃れているが、そろそろ持たない。開眼するのかしないのか。
加藤里奈→最初は失恋のショックで悠大に八つ当たりしていたが、最終的には一ノ瀬の応援をするようになる。大学で若い助教授とでき婚する。それとこの名前……下の字が違うけどA○女優に居たね。うっかりしてた。でも普通は分からないから、そのままでいっか。名前は可愛いし。
一ノ瀬譲→悠大に惚れるまでの行状が嘘のように禁欲的な生活をする。たまに爆発して悠大を襲うが、1度も成功はしない。いやしたらあかんのやけどな。
何度もトライ(言い方をマイルドに)している内に、悠大の反応に徐々に手応えを感じつつある今日この頃。
一ノ瀬の禁欲生活はいつまで続くのか?それとも悠大が堕ちてしまい禁欲生活に終止符を打つのか?
こうご期待!!
って続かんよ。妄想でどうにかしてくだしゃい。
オマケのオマケ
深雪→ゴシップ紙の敏腕記者になる。日夜芸能人や著名人や政治家の噂を嗅ぎ回る。ハイエナ女狐と、動物同士をミックスした造語で呼ばれる。
ちょこちょこ大事な情報を家族に漏洩するが、その嗅覚は本物。
一ノ瀬の母→息子が男に走った事を知ってもあっけらかんとしている。
自身も若い頃に好き勝手してきたせいなのか、色んな事に対して理解がある。むしろ譲が人を愛せた事が嬉しくてしょうがない。
根っからのギャンブラー。麻雀と競馬と競艇と競輪を愛する。影で女帝と呼ばれている。