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彼らはまだ何もしらない

 これは昔の話だ――


 あるところに一人の少女と二人の少年がいた。

 一人の少女には神様に愛されたとでもいうかのような才能があり、少年たちにはそこまでの才能はなかった。

 簡単に言ってしまえばただそれだけの話だ。



「アルバ、ほらたてよ。くんれんのつづきをするぞー」


 黒髪の少年棒切れを振り回しながら、そんなことを元気よく言った。

 その少年に立つことを促された赤髪の少年は膝を擦りむき、零れそうなほどの涙をためた目を手で強くこすってから涙が出たことを誤魔化すように笑いながら立ち上がる。


「ルード君は強いなぁ。でも、もう今日はやめようよ」


 すると黒髪の少年は、拗ねたように口の先を突き出して言った。彼の手は相変わらず棒切れを振り回している。


「なにいってんだよ! もっとくんれんしないとリアにおいつけないだろー」

「リアちゃんは神童だって町の人は皆言ってるよ、追いつけっこないよ」

「ぜってーおいつく、ぼくはすっげーまじゅつしのぼうけんしゃになるんだ!」


 興奮したように棒をぶんぶんと振り回した後、黒髪の少年は胸を張り、そう言い切った。


「だから、きょうもまだまだとっくんするぞ、アルバ!」

「えー、僕もう嫌だよー」


 赤髪の少年はまた泣きそうになる。


「こらー! ルゥ! またアルバ君をなかしてる。だめだよ!」


 すると、赤髪の少年の背後から声がして、二人の少年は声の方向を向く。


「リア!」


 そこには少女が夕日を背に受けて立っていた。鮮やかな金髪が夕方の日の光を受けて、橙色に染まっている。

 少女の姿を見た赤髪の少年は明らかに安心したような顔をして、その場にお尻を着いた。


「なかしてねーよ! なぁ、アルバ!」

「えっ、あ、うん」


 反対に黒髪の少年は不満げだ。

 彼の怒ったような声に赤髪の少年もつい頷く。


「泣かしてるよ。今日はもうおそいから、とっくんごっこは明日でもいいでしょ。どうしても相手がひつようなら私が相手になってあげる」


 少女は、文句ないでしょ? とでもいう風に自信ありげに腰に両手をやって胸を張る。


「リアにおいつくためのくんれんなのにリアとやったら、いみねぇじゃん! もういいひとりでする」

「ちょ、ちょっと、ルゥ! 待ってよう」


 一人で別の場所に行こうとして、夕日の方へと進む黒髪の少年の背を少女が追う。

 赤い髪の少年はそんな二人の様子を眩しそうに見ていた。





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