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日替わりクエスト!  作者: ゴロフォン
8/19

天知る地知る人知る吾知る     神知る

天知る地知る~が何故か頭を巡ってこうなった。マイルドな展開を思いつくまでの仮の展開です。こういう展開に行かないと決めたのにどうしてこうなった。

神知るはつけたら駄目なはずなのに妙にしっくりきました。

『好きにしなさい』

『私は私の選んだ貴方の味方でいるでしょう』



「吐け」

「ここに来たばかりの旅人にここで暴れている盗賊団の情報を吐けというお前の頭を疑うな」

「おい、キリア様にそれ以上のふざけた口を聞いてみろ」

「ここで盗賊団が暴れ、街を荒廃させている。原因を調査し、事実を明らかにせよとある高貴な方から命令があった。ここで拷問なり、殺害なりした場合、この街全体が盗賊団の味方であると判断が下され……どうなるか分かるな?」

 口八丁ここに極まれり。そもそもこの街に来て初めて盗賊団の事を知りました。

「……どこだ?」

「お前よりは遥かに上さ。それこそ天にもおられる、な。俺の持ち物を見たはずだ。一介の旅人が持てる道具ではないものがいくつか混じっていたはずだ」

「ふん……リル。今は余計な危害を加えるな」

「……は」

「事実を解明しに来た。盗賊を探しているらしいお前達の目的に本来は、合致するはずだよな? そもそも三か月も盗賊団を一人も捕まえられない。無能か、あるいはこのセーラ私設自警団が犯人か、だ」

「貴様!」

「その言葉、軽々しく吐いた物だな。お前の後ろにいる誰かが致命傷を負いかねないぞ」

「問題ない。3日だ。3日で解明しよう」


「お前らが犯人の一味だ」

 勘と言うあいまいなそれとそれとは別におそらくという怪しい点。まあ今はここを抜け出すのが先決だ。正直あやふやでしかないが俺は無駄口だけは一人前だ。



「あ、兄貴。大丈夫だったんですか!」

 装備を『小細工つきで』返してもらって外に出る。まあ何かついているのは間違いない。服ははがれていたのので取られたのはジャケットと快眠マスク、寝袋に。マジックアイテムばかりだ。後は革袋だが正直中身は見ない。

 そんな俺をガナッソが不安で仕方ない、と言う目をして見てくる。一瞬その視線が後ろを向いたのを確認して

「そこでおっかない目をした監視者がいなければ文句なしの結果だったんだがな」

 帰れ、という意思を込めて言った言葉を

「お前が不審な行動を取らないよう監視している、それだけだ」

 黒髪の女、銀髪の確かキリアと言う女の後ろにいた女は聞く様子は無かった。



 サブクエスト

 アルメスタの盗賊の正体を解明する。あるいは自白させる。貴方がそれを望むのなら応えましょう。貴方がそれらの事実を提示するのなら応えましょう。


 荒事の解決の目星は、ついた。



 メルシナ家は代々女系だという。当主も女、もちろん跡取りも女だ。つまりセーラなわけだが。代々セーラ家はある一つの性癖があった。女好き、つまりレズだ。男と女に対する温度差は激しく、つまりそれはセーラ私設自警団の人員にも言えた。


 だからガナッソに耳打ちで聞いたのだ。自警団に捕えられた男は皆男ではないか、と。

「ええ、そうですよ。皆男ばっかりでさ。女なんかちょっと事情聞いたら罪はない、ですぜ。しかもその中には有力な商売の名家まで何人もいたという話でさ。何か女にちょっと強い口調で話せばその時点で自警団が飛んできますよ」


 だろうな、と思った。一つ思いついたことがあった。有力商家が疑われている状況で自警団を設立したのに3か月成果が無い。団員の一人すら捕まっていない。ならば、その盗賊団は、女の集まりではないか、と。つまり、セーラ自警団は、犯人を既に特定している。その上で見逃しているのだ。


 もう一つ聞いた。ここ最近の盗賊団の被害は皆男ばかりではないか? と

「良くわかりましたね」

 たぶんクロだ。少なくとも自警団の上層部はクロだと思う。でないと俺が困る。

 タイムリミットが近い。男が商売している店を軒並み潰してもう相手がいない、となればたぶん、無実の男連中を盗賊団に仕立て上げる可能性が、高い。


 最後に聞いた。

「この辺で女が良く集まっている、あるいは女だけが働いている店は無いか」

「女だけっていや二つですね」



「いらっしゃいませ…うわ」

 全く歓迎されていないようだった。店のウェイトレスのの一人であろう金髪の少女は、ガナッソを見ると顔をしかめ帰れとばかりに手を振る。

「うちの物に手を出した屑は店を立ち入りを禁じてるんだ。今すぐ」

 いかにもな威圧感を放つ元は冒険者らしき剣呑な雰囲気を漂わせる女主人がこちらも見ていう。客は女しかいない。昔は男が多かったらしいが最近の自警団の男狩りで著しく減ったという。

「情報を聞きに来ただけさ。ガナッソ外で待っておけ。確認を取る」

「はぁ、分かりやした」

「情報?」

「盗賊団と言う生きる価値も無い屑を探しに来たんだ。ゴミ屑で存在する事すらあり得ない塵のな」


 馬鹿だと思った。煽りにこいつら弱え。ウェイトレス全員か……二人ほど眉をひそめただけで終わった奴がいたが目が殺意に満ちているのに気付いていないんだろうか? まあ予想通りだ。人の目は悪意だけなら口より良く語る。悪意のこもった眼なら地球で見覚えありすぎて覚えたしな。

「へえ、盗賊団を。知らないね」

 さすがにこちらは動揺した様子も無い。

「そうか。すまなかったな。ゴミ屑で生きる価値も無い存在すら」

「その汚い口を閉じな」

「それは悪かったな。では帰るよ。用はもうないから二度とここには来ないから安心してくれ。出来れば二度とお前達に合わないことを願っている」

 まあ来るだろうな。少なくとも女主人はこちらの意図を見抜いていたと思う。黒髪の女はブルブルと震えた手でこちらを睨んでいた。こちらはたぶんシロだ。盗賊やれるほど猫がかぶれない。



 もう一つもクロだった。おそらく後いくつかはあるだろうが……多いな。まあ泣ける事情があるのか無いのか知らないが。


 男嫌いの美人よりは虐げられる男の方を俺は今は味方する。まあ男女平等であるのが一番だがな。



「ガナッソ。お前だけは今は離れるなよ。たぶん来る」

「来るって? えっとそういや何か女疑ってた様子でしたけど」

「お前が通ってた酒場な。あれ盗賊団の面々だよ」

「……は?」

 もうこそこそ話は問題ない、どうせ後は荒事だけだ。たぶん、いきなり魔法叩きこんで即死とかは来ない。

「おかしいとおもわなかったか?」

「……もう内緒話は終わりか」

「もう、見当はついたからな。お前に聞かせていなかったのは単純にお前が盗賊団の一味だという可能性があったからだ」

「……斬るぞ。私は短気だ」

「天知る地知る人知る吾知る  神知る、だ。まあお前は違うだろうな、とは判断している。盗賊と言う性分には見えん」

「当たり前だ」

 鼻を鳴らしてこちらを睨んでくる。……妙に気性の荒い牛に見えた。

「上は盗賊団と繋がっているだろうさ。おそらくお前の上司もな。斬るなよ。予想を聞け」

「話し終わるまでは待ってやる」

「まず、有力な商家が疑われているという話は知っているな?」

「ふん。根も葉もない噂だ。セーラ様もそれで迷惑しておられる」

「……で当たり前だがその噂は払しょくしたほうが良い。だからセーラとやらは私設自警団を作った。様づけしろと言う下らん横槍はやめろよ」

「で?」

「少なくとも調査はしたはずだ。なのに盗賊団の一人も捕まっていないというのはどういうことだ? 調査をして、お前は怪しい奴を捕まえたと言った。それは全て男だという話だな。果ては街に入ってすらいない旅人を検問で理不尽に捕えて盗賊団呼ばわりだ。もちろんこの事は上に報告する。というより使い捨ての魔術道具で報告した、が正しい。圧政状態のこの街にいずれ調査が入るだろう」

 全部でたらめだが。

「なっ!」

「自業自得だ。外部から見ればこの街はいま女による過剰な圧政状態にあると見えるだろう。女より男が立場が低い、と言うのはまだいいが行き過ぎは害悪でしかない」

 ぽろぽろとこぼれる、減らず口が。

「お前もほんの僅か程度にはそれを自覚はしているだろう? おそらくは自警団の大半は外部からの冒険者、傭兵で構成されているはずだ。お前もおそらく外部から来たのだろう」

 口を噤んでの沈黙が来た……たぶん間違ってはいない。と言うよりこの街生まれでその上美人でしかも腕まで立つ、なんて恵まれ過ぎた人材がそんな沢山いるわけがない。セーラが自分の気に入る人材を外部から呼び寄せたのだろうなと言うのは何となく想像できていた。

「男を手あたり次第逮捕、投獄。その一方でろくに聴取を受けていない人種も存在する。他の有力商家、じゃないよ。もっと大勢いるだろう。……女だよ。女というだけで基本的に自警団の態度は軟化してしまう。お前のところの一番上が女性好きで男嫌い、というからそういう人材が集まったのだろうが。なら簡単だ。自警団を結成したはずなのに犯行はやまず、おそらく盗賊の一味の一人も捕えられていない。構成員が全員女なんだよ。そしておそらくそれをセーラは知っている。で、嫌いな男で商売の邪魔になる相手を軒並み潰した後は、おそらく男全体で盗賊行為を行っていた、なんて話になるんだろうよ。良く最後まで怒鳴らなかったな? てっきり話の腰を折ると思っていたぞ?」

「……お前の声自体が不快だ。お前の声を聞き流すのに苦労したぞ?」

「そうか……さて、じゃあおいでになってもらうかね」

「へ?」


「セーラ家に行くのさ。おそらく入れるよ。ガナッソ、離れるなよ。たぶん人質候補はお前しかいない」



「リニーシャ様とセーラ様がお待ちです。どうぞ」

「ほ、本当に入れましたね」

「俺の後ろに誰がいるのか、気になって仕方ないんだろうよ」

「こちらです。お召し物をお預かりします」

 嫌そうな顔でそれでも着ているものを預かろうとしている。なるほど、ジャケット狙いか。ということは細工は出来なかったのか。まあ日数制限付きとは言え神様の制作アイテムだしな。


「いえいえ、お気になさらずに、貴方の主君の前ではこの程度の服装のままが相応しい」

 煽ってばかりなんだが移動中に見かけた街の男達の覇気のない様子と俺が受けた仕打ちがこう、憎まれ口をだな。

「そうですか」

 顔を伏せて表情を見せないことで彼女は使用人としての面目を保った。






「あら、どこかの上級貴族の使いと言う割には礼儀のない恰好で来たのね」

「天知る地知る人知る吾知る神知ると言いまして、まああれですよ、犯罪者には礼儀は必要ないでしょう?」

 空気が凍った気がする。ガノッソが冷や汗を流しながら「ちょっ煽るのはやめましょうよ」と言う、はずなのに小さくガッツポーズしている右手だけがそれを裏切っているような気をしていた。


「あらあらわがメルシナ家を何の根拠も無く犯罪者呼ばわりなんて」

「貴方がいかに演技が上手であろうとも、貴方の部下が下手だった。もう少し、私程度の憎まれ口についうっかり口を滑らせる、という失態はしないように教育しておくべきでしたね。まあ貴方程度だから部下も程度が知れている、ということでしょうか」

「お母様。もう殺していい?」

「まだ駄目よ」

「ああ、私の後ろにいるのは誰かを聞きたいんでしたね」

「ええ、皆の前で聞かせてくれないかしら?」


 予想通り、今日見た顔が見事に揃っていた。あの銀髪普通にいるのか。その後ろの美人集団はそう言う事なのだろう。

「まあ、あんたの挑発に反応したこっちが下手を打ったね。あんたの薄汚い口をさっさと閉じておけば良かったよ」

「貴方のドブの目つきよりはましですよ。ああ、思い出しました。100万殺せば英雄だとか言ってた狂人の方でしたっけ。まあ貴方程度覚えていませんからそんなこと言ったか覚えていませんが」

 殺気が満ちる。

 判定はまだか。

「で、まあこういう口の悪さでボロ出させたわけですが、おとなしく投降する意思は?」

「投降なんて男なんかにするわけないでしょう? 女が常に正しいの」

「盗賊団も正しいと」

「ええ、男の物を女が有効利用してあげる、正しい姿だと思わない?」


 達成! 口が非常に悪いですが、貴方の怒りも理解出来ないわけではありません。彼女達の世界に対する貢献よりも害悪が大きいと恣意的に判断しました。排除に問題ないと判断。私は彼女より『私が選んだ貴方』を選びます。


 報酬・審判<受け取る>

 問題なし。



「聞きたいと言っていましたね。私の後ろに誰がいるのか」


「最初に言った。天知る地知る人知る吾知る     神知ると」


「え?」


「審判の時が来た」



 一方的だった。抗う事すら出来ず残った人間は俺を含めて4人。


「セーラ? ……どうして?」

 杭に打たれて死んだ我が子を呆然と女は見ていた。あの何重にもかぶっていた猫はもうどこにもない。

「神は貴方達を排除して問題ないと判断しました。貴方の行為は世界に害をなす可能性があると判断しました。抗えないのは貴方達がこの世界の人間で、神の被造物に過ぎないからですよ」

 怪しい牧師そのものの物言いだった。が、事実がこうなんだから仕方ない。

「そんな、神が」

「貴方に事情が無かろうが。こうなったのはきっと単純です」

「神、が?」

「私を貴方が敵にしたからですよ」

 一人と無実の一人が残ったのはきっと最後はお前が手を汚せと言いたいのだろう。



「お前だけは残ったな。いや、お前だけは知らされていなかったんだろうな」

「お前は……」

「初めから言った。俺の後ろにいるのは天におられる方だと。盗賊団の事を圧倒的優位を過信して自白した。これを起こすのには条件があったんだよ。これを起こすのは相手が事実を認めた場合に限る、と」

「お前は!」

「男嫌いはもう辞めろ。男だろうが女だろうが気に入らん奴は気に入らんし気に入る奴は気に入るの物さ 俺はお前が本気で気に入らんがな」

「私も貴様は大嫌いだ! 忌まわしい神の使者を名乗る狂人め!」

「だったらお前が世界を救って見せろ。俺が呼ばれる必要が無いようにお前が世界を救って見せろ。世界を滅ぼす魔王くらいお前が倒して見せろ。それなら俺はお役御免で帰ることになる」

「魔王! ああこの世界を闇を覆うという魔王か! 倒してやる! 倒した後にはお前を、忌々しいお前の後ろにいるか」

 杭が打たれた。


 私は彼女より『私が選んだ貴方』を選びます。

 短くその言葉が手帳には繰り返されていた。



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