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日替わりクエスト!  作者: ゴロフォン
15/19

レルンベルンへの道

 賞金が貰えないのが致命的だとラムナに怒られ

 思い返してみれば自己満足だったとだいぶ後悔

 ドルミラで高位魔族を倒していれば今頃金に困っていなかったのにと愚痴られ

 自業自得だが肩身が狭い

 レルンベルンに行って奴隷を買うと決めたはいいが、予算が足りる気がしない


 選択を間違えた。




「時間が経ったら何か間違った気がしてきた」

 よくよく考えたらあれは駄目だったのでは無いか、そんな気がふつふつとしてきた。まあアルメニタの時ももっと穏便に出来たんじゃないかと似たようなことを考えた覚えはあるのでたぶんこれから何かするたびにこれで合ってたのかと悩むことにはなるんだろうが。


 旅をしていて不安になるときになんて大抵決まっている。

 金が心許ないと気付いた時だ。

「今更言っても遅いです。あの魔族を封印してある程度の時間の安全は稼げた、という事で少ない報奨金は貰えましたけど、神様の啓示通りにやってればたぶん魔族倒せていましたよね?」

 あれからだいぶラムナの態度が冷たい。正直に話さず、これが神の啓示だったのさ、と誤魔化した方が良かったのかもしれないが後の祭りだ。

「あ、うん……」

「確かにアルメニタでだいぶお金は貰えましたよ? そこそこ贅沢しても1,2年は旅をするのはたぶん問題ないはずです。でも、地下聖堂で実際に戦闘して気づいたはずです。俺だけじゃロクハラ様を守るには不安だって。せめて一人、傭兵か奴隷を雇えばずっと楽になるのに、当てにできたはずだった魔族討伐を放り出すなんて……運良く本当に運よく大した魔物に遭ってませんけど、ご主人様ですから身を挺してお守りしますけど、死んでも不思議ではない、ということは覚悟しておいてください。多人数相手は本気で厳しいですから」

「はい」

 言われてみればろくに今まで戦闘らしい戦闘をしていない。アルメニタでは神頼み、ドルミラ何て俺大声ではったりかましただけだったよ。もしあの神官に付き人か何かがいたらおそらく俺の危険度は跳ね上がっていただろう。

 攻撃役と俺の守備役がいないと護衛は厳しい、俺の身体能力を考えると回避ではなく盾で攻撃を防ぐ防御寄りの戦士か結界術を使える神官がいるのが一番だろう。回復術が使える神官の方がたぶん安全だ。



 奴隷か傭兵だろうが、正直裏切りが来たら俺では抵抗も出来ないので反抗が出来ない奴隷がベストなんだろうが……


 ラムナさんの言うとおりでした。



 たぶん数か月かけて身体に叩きこもうとしているいつもの健康クエストを終えて、偶に花を詰んだりして襲撃が無いという意味では平和に、というより時折現れる危険な生物だか魔物に発見→奇襲→瞬殺のコンボを決めるラムナのお陰で戦闘も問題なく終わり、奴隷市があるというレルンベルンまでおそらく3日では無いか、という所まで来た。

 何て言うと俺は楽そうに見えるが、ラムナはあれから

「こうなったらもうロクハラ様にもある程度動けるようになって貰わないと駄目です」

 何て言って恐ろしいほどのスパルタで俺を鍛えるようになったので正直厳しい。

 何が厳しいって? 疲労回復速度が恩恵でかなり早くなっているのを普通に知られたからだ。

「いやぁ、これなら少しくらい無茶しても大丈夫ですね!」

 何て普段の無表情からは信じられないいい笑顔で言っていたのを俺は忘れることは無いだろう。そして実際戦闘で俺がまともに動けないと俺自身の命に関わるので訓練なんてやだーと駄々をこねられないのが悲しい。


 ああ、そうか。クエスト帳の指示はまだずっとぬるかったんだな、とその時漸く気づいた。


 気づくのが遅かった。ラムナに触発されたのかここ十数日健康クエスト後のクエストが運動ばかりでしかも運動内容が厳しくなっていく、というのがさらに悲しい。ラムナさんも神様もロクハラ様に身体を鍛えろって仰せになっているんですよ、と笑顔で言っていた……最近こういう時だけど凄く良い顔で笑顔をするようになった気がする。一応美少年の笑顔だがこれは何か違う。


 今回は移動中は特にやらせることが無いのか毎回運動クエストばかりで報酬内容が疲労軽減疲労軽減疲労軽減頭脳疲労軽減ばかり。

 24時間働けますか?

 を俺に最後らへんはやらせていたように思う。疲労回復ポーションは味その他いろいろな意味できつかった。


 そんなある意味地獄のような行軍も終わり。俺達はようやくやって来た。早く奴隷を、と街の一つも通らずにやって来たかいがあった。


 帝都レルンベルンに着いた。



 達成! レルンベルンに着きました。装備を整えても良いし、新しく仲間を雇ってもいいかもしれません。ですが仲間を雇うには予算が心許ないかもしれません。

 報酬レテメトラ銀貨10枚


 アルメルタのトップから貰った金の細工で特に問題なく中には入れた俺達は一番の目的である奴隷購入のために奴隷市場を探すことにした……ら、あああそこだねと普通に市民らしき男が教えてくれた。貴族院主催と言っていた言葉通り違法でも闇に隠れているわけでも何でもないらしい。


 買う事に決めたわけだが、いつも思うが通貨報酬は割と気前が良いよな、これで買えるんじゃないか思った。

 が、最後の一文が気になった。仲間を雇うには心許ない? 気になったのでラムナに聞いてみる。

「そういえば俺はラムナは譲られたって形になるから実際には買ったことないんだが奴隷っていくらくらいが一般的なんだ?」

「え? ああ、大体銀貨10枚ですね」

 なんだ、今ので買えるじゃないか。




「何の技能も持たない一般人でそれぐらいですね。戦闘も出来る奴隷となると大体そこそこのでその20倍くらいじゃないですか?」

 銀じゃなくて金行くんですか……ラムナさんのかつての怒りが身に染みた。



「神様のお心遣いで銀貨10枚。まあいざと言う時の肉の壁としてはもうそれで良いんじゃないですか?」

「いや、正直それは精神的にな」

「ほうしょうきんがでてればなー。あるていどはえらびほうだいだったんですけどねー」

 その通りだがもうそれ以上抉るのはやめてください。

「まあ、見に行ってみますか? 俺みたいに問題のある訳ありの奴隷とか安く手に入るかもしれませんし」

「いや、その前に道具を買いに行こう。俺用の」

「俺用?」


 アルメニタは商売人が壊滅状態になっていたのと、ドルミラはそもそも街そのものが無かったことで買い物なんてできるわけがない。

「閃光弾?」

 って何? と言いたげなラムナに無いかな、と思いながら説明はしてみる。

「こう投げたら強い光を放って目をくらませる道具とか、そういうのを探してるんだ。俺達だと敵と遭遇したら逃げる、と言う選択肢も多くなりそうだからな」

「まあそうですけど。うーん、たしかありましたよ。神官や魔術師の光球の効果を閉じ込めた魔力球で確か紙銭3枚もあれば一個買えたはず」

 少し考えたそぶりを見せた後、俺の要求に会った道具があったのだろう。小さく手を叩くとそう説明してくれた。

「10個は欲しいが銀貨3枚か……」


「銀貨2枚で買えたから良かったのか」

「まあ普通は魔術師がいれば事足りますからね。魔術師や神官じゃない、戦士あたりが基本緊急時の手段として買うだけで10個もまとめ買いする人は珍しいんじゃないかなと。店主にもう10個買わないか? って勧められるままに衝動買いとかしなくて良かったですよ」

 銀貨1枚節約出来てよかったよ。後ろにある山を持って来てもっといらないかね? と笑顔で言って来たのは困ったが。

「後はこの際装備でも新調しますか? 筋力も上がったし、もうちょっと重くて堅いの持てる気がしますよ?」

「鎧って言ってもそもそも戦わないから前に出ないしなぁ。むしろいざと言う時の使い捨ての結界の護符とかあれば良いんじゃないか?」

「そういうのは魔道具屋に行くと買えると思いますよ」




 レルンベルンは来たことないので、とどこかしかめっ面をしているように見えるラムナの案内は当てにできず、俺達は散策がてらレルンベルンを歩き回った。道具屋はすぐ見つかったのに魔道具屋は表通りには無いのか道が分からない。東西南北の門から中央の巨大な城を中心に挟んで十字に交差する東大通りから外れた裏道に魔道具屋はあった。


「いらっしゃい」

 店主はいかにも老いた魔女と言わんばかりの老婆だった。目が悪いのか細めながらラムナの方を見てそう言った後首輪を見てラムナが奴隷だと気付いたのだろう。重そうな荷物を背負っている俺の方が主人なのをお前が主人? とあからさまに不審がられながら

「いらっしゃい。何か用かね」

 とこちらに向き直った後改めて言われる。


「あー神官の結界の効果を閉じ込めた札とか無いかな。安いと嬉しいんだが」

「使い捨てだっていうんだったら紙銭3枚。大量に買うならおまけしておくよ」

「10枚でいくらになるかな」

「銀貨2枚5紙銭と言ったところかね」

「じゃあそれで。後は、こう相手を眠らせる効果がある札とか」

「銀貨1、買えるのかい?」

「……高いな」

「そりゃ高等魔術の一つを封じてるんだ。高いに決まってるさ」

 高等魔術! まあ相手を昏倒させるなんて強力な効果に決まってるよな。聞くか聞かないかともかく。

「そうか……」

 ふと思いついたことがあった。

「奴隷の首輪外せる道具とか無いか? 見たら分かるが俺はいつ死んでも正直おかしくない弱さだからな。まあ解放のために持っておいた方が良いか、と思うんだが」

 老婆は目を見開いた。珍しい注文なのか。

「……金の無駄です。やめときましょう」

 思ってはいたのだ。いや、ラムナに言われてようやく完全に自覚した、と言うべきか。

「珍しい物だね。わざわざ奴隷を解放する解呪の道具を求めるなんて。奴隷を買うような輩は大抵裏切らないというのを目当てに買うやつばかりだからね。そういう道具も無い事は無いけど埃をかぶったままだったよ、わざわざ開放するなんて物好きだけさ。まあ偶に奴隷解放すべし! なんて叫んで奴隷市場襲撃するくらいのお人よしはいるけどね……まあ結果は言わないけどさ」

「恐ろしい警備員がいる貴族院主催の奴隷市場で暴れる馬鹿がいたんだな。ははは、いや、まあただの思い付きでしかないさ。一応聞いておくがいくらで?」

「銀貨1。変わったものという事で仕入れたけど売れる気配無いしねぇ。まあ気まぐれで解放しようと思っても普通は解呪は高位神官様にお願いするものさ。大体同じ値段かこれより少し高い値段でしてくれるよ」


「二つ買って銀貨4枚5紙銭。何してるんですか?」

 凄まじく、白けた顔でこちらを見ているラムナさん。

「そもそも俺のところの奴隷商が説明していましたよね? 何故か死んですぐに帰ってくる、って。つまり俺はそういう手段取れるので意味、殆どありませんよ?」

 ……そうでしたね。忘れてました。奴隷に裏切りは無いとか言った馬鹿は誰だよ。

「もう一つは新しく買う奴隷用に、何でしょうけど。する意味が分かりません」

「……まあ死んでもおかしくないからな。正直あっさり死んでもおかしくは無い、と思っていたさ。そもそもアルメニタで俺は一回死んでるじゃないか?」

「……ええ」

「後腐れのないようにしておくのも悪くないかな、と思っただけさ。まあ死んだ後まで拘束することに『意味は無い』さ」

「……奴隷買う金が足りなくても知りませんよ?」

 その美少年めいた中世的な顔は基本的にいつも浮かべている無表情だった。


ランキング1位を一瞬取ったのを見た時は驚きすぎてすぐに閉じてしまいました。

皆様本当にありがとうございます。

本気で心臓が止まる気がしましたが多くの方に評価頂けて嬉しいです。

どうやっても完結させるという目標にむけて頑張りたいと思います。

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