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日替わりクエスト!  作者: ゴロフォン
10/19

護衛奴隷を連れて旅に出る

読みにくくなりました。

 古き神々の後に新たに生まれた世界を管理する女神は古き神に比べれば脆弱だった。基本は世界の住人任せ。

 それで良いと女神は思ったし、自分は世界の危機にのみ手を出せばいいと楽観視。

 ある時世界を滅ぼす魔王と呼ばれる存在の危機があった。それを救ったのは女神ではなく命をもって救った世界の住人である勇者。

 世界はやはり自分が手を貸さなくても彼ら自身の力で何とかなるのだ、と女神は思った。


 魂だけとなった彼らに少しでも報いようと彼女は言った。世界を救った勇者達よ、何か望みはありますか?

 勇者は言った、戦いのなく平和で平穏な人生が欲しいと。

 悩んだ神はある神が作り上げた今は無き古き星を模した、ある世界に彼らは生まれ変わらせた。彼らは望み通り変わり映えは無くとも平和な生活を送りはじめた。己の世界よりときのながれが遥かに遅いそこは少し、様子を見に来ただけで向こうでは時がたつ。彼らに報いただろうと女神は帰った。


 彼女の世界では数百年が経ったある時危機が再び訪れる未来を見た。解決するのだろうか、と少し不安になりながらも彼女は脆弱な力を使って予知をする。だが楽観的な彼女はこの時点でも信じていた。大丈夫、必ず世界の住人が危機を救うだろう。


 滅亡寸前の世界。なのに危機に対して立ち上がる勇者がいなかった。勇者がいない。人の希望になるものがいない。これでは世界は滅びてしまう。


 女神は決断した。かつての勇者を呼び戻そうと。自分の都合で呼び出した勇者のせめてもの助けになるようにと幾人かの現地の協力者を拾い勇者と同時に彼女は彼らを送り込んだ。


 貢献には恩恵を害悪には呪いを。未来の読めぬ彼らが、朧げにしか読めぬようになった勇者が世界を救う事を彼女は祈る。未来の読めぬ不確定因子の彼らがそれゆえに未来を変える一助となることを彼女は望む。




「御使い様、それでどこに行かれるので?」

 街を出てそのまま真っ直ぐ歩き続けていると、右隣を歩く布製の衣服のみを身に着けた身軽そうな、悪く言えば貧乏そうな耳のとがった釣り目がちだがそれでも今は無きセーラ自警団の面々にも引けを取らない整った顔立ちの小柄な赤髪の少年、ではなく少女が無表情で聞いてきた。筋肉が凄いという訳でもないがしなやか何だろうなと思わせるいかにも手練れそうな雰囲気を持った少女だ。手持ちには小さなナイフしか持っていないが魔法主体の彼女には重い武器は逆効果なのだろうと思う。

「何度もそう呼ばれて思うんだが御使い様は本気でやめてくれ、名が鍛冶、姓が六道だが、名で呼ぶのが抵抗があるならロクドウで良い。御使い様だけはやめてくれ」

「でも神の使い様なのでしょう? 俺には恐れ多くてとても名前など、いえ、奴隷が生意気申しました、お許しください」

「……ああ、別にそこまで気にしていない。御使い様はやめてくれればいい」

「承知しました。ロクドウ様。それで、どちらに向かう予定で?」

「そうだな……」



 それなら良いのがいますよ、という話の後やってきたのが一人の少女だった。初めに見た時は女じゃなくて男だと俺と言う一人称も相まって思っていたのだが、勘違いされやすいんですがこいつはこう見えて女なんですよ、という説明を聞いて正直驚いた。

 人間の主人と奴隷のエルフの相の子でしてね。こう見えてもう40になるんですが、まあエルフは最長で400は生きる長寿だから人間の年齢に換算すればでハーフは大雑把に考えれば20くらいなんでしょうが、戦闘能力は折り紙付きですよ? ちょっと乱暴者で抱こうとしたら主人にも噛みつくような奴ですが、それ以外には基本従順なので問題ありません。処女ですしね。

 処女とか奴隷でそんな馬鹿なと思ったが、乱暴な上に隙を見て性器を封印の術を施して中に入れようとしても入れられないようにしたんですよ。まあ、処女のまま売り出せば値段も高くなるだろうってんでそのままにしておいたんですがね。長くはもたないで主人死亡って形で良く帰ってきますしね。何度でもとその先は続けなかった。


 そんな説明の後、彼女が引き渡された。神の使いたる貴方ならきっと大丈夫ですよ! と言ったがこれ、見目は良いけど安値になって来た厄介者を厄介払いしただけ……まあ腕が立つなら気にしないようにしよう。

 ただ奴隷商売してるとそのうち勇者様が来て大立ち回りがあるんじゃないかと思ったが奴隷商人が最後にこう言ったのだ。帝都では貴族院主催の奴隷市がありますから新たな奴隷が入用なら私の名前出してください、なんて言ってたからこの世界では奴隷制度は違法でも何でもないのだろう。正直セーラ達と地球の日本人の俺の主観では大差ない気もしたが、釘は刺したのでそれなりには自重するはずだと信じたい。


 そんな訳で蘇生の祝福を失って保険が無くなった俺の身を守る護衛としてやってきたトンガリ耳のハーフエルフのラムナという少女だが、……愛想が無い。後同行しているのが嫌そうな雰囲気が眼に見えてしまう。

「女が好きなのか?」

 と聞いたら別に好きでもないしそういう趣味も無いと言う答えが返ってきた後で

「ただ、最初の主人が10にも満たない俺に欲情するような変態だったので、物心つかない頃から拒絶していたせいか男の方が苦手なんですよ。態度が悪いのは重々承知していますが、直すのが難しいので嫌なようならお捨てになってください」

 とのことだった。正直この態度の悪さで良く今まで奴隷として生きて来れたな、とは思ったがまあそこは戦闘面での腕の良さとやらが理由だろう。回復魔術も使えるしな! 御使い様に必要なので? 何て言わないで大怪我したら使ってくれ、普通に死ぬから。




「どこにいくかな」

 御使い様! 御使い様! の声に追われるように出てきたはいいが目的地を考えていなかった。今から考えようとしたときふと思い出した。いろいろ人と話して余裕が無かったせいか長い間クエスト帳を開いていないことを。


 サブクエスト アルメニタ介入 達成! その優しさは世界を救う小さな助けになる

 あの演説での貴方は正直別人に見えましたが、貴方の拙い演説は案外と審判の暴力と再生の威光に彩られ、力となるでしょう。貴方が思っている以上にそれは世界を救う一助となっているはず。

 報酬、能力獲得心理誘導。慣れない演説をされたことでしょう。次はもう少し人の心を動かしやすくなるはず。ただ、貴方の今回の行動は貴方に呪いと言う形で再生の祝福を失わせました。うかつな行動は恩恵ではなく呪いをもたらす可能性もあるので気を付けましょう。


 これ、微妙に洗脳能力じゃないですか? 後誰だこれは自分でも思っているから言わないでほしい。

 ……にしてもこれが一体いつ出たクエストだったのかさっぱりだ。あと、呪いか……この言い方だと何か変に悪い意味で暴れたら不運が来る可能性があるのか。

 これ、地球人が好き勝手につえー出来ないような仕組みだな。他に散らばった俺と同じ地球人、あるいは勇者もこういう制約がついているんだろう。


 まあ基本神のお告げに近いクエスト通りに行動していたら問題は無さそうだ。そういう意味でこの能力を選んだのはたぶん間違っていなかったんだろう。



 1、方向を決めよう。アルメニタからいくつか目的地候補がありますが、方向が違います。まずは目的地を決めましょう。以下に候補を挙げるので受け取りと同じやり方で選んでください。


 レルンベルン。帝国首都です。3つの候補の中では距離としては二番目に近いものとなります。アルメニタから南に進んだ場所にあり、周辺は平原に囲まれた見晴らしのいい場所に立っています。首都と言うだけはあり、強力な防護魔術のかかった高い城壁で町全体を覆っています。今回貴方は貴族の商人と縁が出来たため彼から与えられた金の紋章を見せれば問題なく入ることは可能です。推定所要日数15日。


 15日って長いな。これで二番目か……

「ロクドウ様?」

「ん、ああ。どうした?」

 見ると不審そうな顔立ちで目の前にラムナがこちらを見上げていた。

「いえ、先ほどから立ち止まって動かれなくなったので何かあったのかと」

「いや、どこにいこうかちょっと考えていてな、レルンベルンに行こうか、他の場所に行こうか、ちょっと考えていてな」

「レルンベルンですか。この国の首都ですね。物資が多く集まっていますが御使い様は何かお探しで? 奴隷市もあるので新しい奴隷でもお求めでしょうか?」

「いやいや、君がいるのにそれはないな。私も飲み食いは出来てもそこまで金の余裕はない。銀のナイフやらなんやら高価そうな道具は貰ったが奴隷を気軽に買えるほどではない。君で十分さ。ただ安心したまえ。君を夜のあれこれなどの用途で使う事は無いだろう」

 何だろうな、どうも話し方に困る。ガナッソあたりだったら普通に乱暴な物言いでも大丈夫だったのに正直どういう話し方が正しいのか分からん。

「はあ、それはありがたいですけど、では何の用で?」

「まあ君たちは過剰に持ち上げてくれたが、所詮力を与えられた凡人さ。気の向くまま、が正しい。それが結果として世界を救う一助になれば、それで良い」

「何だか捻くれた言い方ですね。素直に世界を救うために活動しているんだ、で良いんじゃないですか?」

「そういう高潔そうな物言いになると胃が痛くなってくるんだよ。心は凡人だからな」

「その小さな優しさは今の闇に覆われようとしている世界を救うほんの小さな助けになる、と」

「やめてくれ。気取った物言いだったとちょっと後悔しているんだ」

 この腹黒エルフは俺の心でもえぐりたいのか。あの言い方ちょっと変だったかなと思ってるんだよ。後で思い出したら頭を抱えそうだ。

「いやいや、良い言葉じゃないですか」

 本気で言っているのかからかっているのかわからない無表情で言ってくるトンガリエルフ。ただ妙に耳は動いている気がしないでもない。

「俺が言ったら胡散臭くて困るんだよ」

「……へぇ。でもまあ、良いじゃないですか、偶にはそう言うらしくないことを言うの事も。それが『世界を救う一助になれば良い』んでしょう?」

「……あ、ああ。そうだな」

 何だかやり込められた気がした。確か奴隷は主人にある程度逆らえないように呪術がかかった首輪をしているがこんな態度で本当に良く処女でやってこれたよな。


 じゃなくて今はクエスト帳だよ。

「まあそういう訳でちょっと今考えているから無防備になる。その間の俺の守りは頼んだぞ、本当に頼んだぞ。身体能力は本気で大したことないからな」

「承知しました。俺は戦闘はそこそこ自信があるのでお任せください」

 少年のような胸をとんと叩いて頼もしい返事が返って来た。貧乳だな、とどうでも良い感想もついでに浮かんだが忘れよう。


 マルクアト。アルメニタと同じ商業が盛んな街です。アルメニタの没落で流れた商人達も加わり、非常に活気があり、おそらくこの国で最も人が多い場所でしょう。ただし、ここから最も遠い街なのでたどり着くのはかなりの日数がかかるでしょう。推定所要日数27日。およそここから南西に真っ直ぐ直進すれば4日程は短縮できますがその場合街を通ることはありません。さらなる短縮手段に移動馬車を使うという手もありますが、マルクアトに向かう商人を狙った盗賊に襲われる可能性が非常に高いので護衛をさらに多く雇う必要性があるでしょう。推定必要人数貴方を含まずに4人。



 一月じゃないですか。後馬車で4人はちょっと常時付き合うには俺にはきつい。どう接すれば良いのかでストレスで禿げそうだ。ラムナでさえ話し方が分からないのにそれは無理だ。ぼっちが気楽で良いです。

「ロクドウ様」

「ん、どうした?」

「立ち止まってるんなら荷物おろしたらいかがですか?」

「あ、うん、そうだな」

 そういえばそうだった。

「やっぱり俺が持ちましょうか?」

「腕力はエルフの君よりはこっちが高いからこっちが持った方が良いよ。と言うより戦いで頼りになるのは君の方だからね。身軽な動きが出来ないで戦えませんでした、じゃちょっと。まあ最近そこそこ体力もついてきたんだ。体力を更につけるために頑張ってみるさ。本気で戦いは君に任せたよ」

 荷物は全部俺が持っている。どう見てもラムナに重い荷物は厳しそうだ。ならいっそ戦いに集中してもらった方がずっといいだろう。俺に出来るのはこう言う事しか基本ないしな。

「分かりました、でもロクドウ様が動けなくなったら守りにくくなりますから危険になった時は重い荷物は捨てて出来るだけ身軽になってくださいね」

「分かっている」


 で、話はひと段落したので見るのを再開する。最後の候補地か。


 ドルミラ。ここから3日と一番短い距離の街です。ただし、現在近くに強大な魔族が発生しており、街は混乱中です。推奨目的地。ただし、危険と判断すれば他の目的地を選んでもかまいません。



 どうして推奨、をつけるのか。あとどうして何日もかかる場所しか他に候補が無いのか。最後にわざわざ出すのもあれだ。深い溜息が出た。




「ドルミラに行くんですね?」

「まあ、な。様子を見に行くだけだよ」

「御使い様として魔族を倒しに行かれるので?」

「この姿にどこにそんなことが出来る力があるんだよ」

「神罰があるじゃないですか」

「あれはもう無理だ。ちょっとこう貢献ポイント的な何かが無くなったから無理だ」

「貢献ポイント?」

「……気にしなくて良い」



 俺の方をあの時選んだ女神を俺は信じようと思う。意味も無く無駄死にさせるために推奨を付けたわけではないと信じよう。


 達成! 信じる者は救われる、という事は必ずしもありませんが私を選んだ貴方に可能な限り報いることは誓いましょう。報酬、能力獲得一度の無効。致命的攻撃を一度だけ無効にする。




日刊2位ありがとうございます。しっくりこないなと首を捻りながら今日の分を書き終わり他の方の小説を見るかと思ったら2位にこの小説が入っていて心臓が止まるかと思いました。


この小説では明るく行こう明るく行こうと思っていますが基本場当たり的に書いているので唐突に天知る地知る~のような展開が来ることもあるかもしれません。

未完で終わらないようにだけは頑張ります。


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