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雨色クロスフェード  作者: ゆいる
序章 ◇とある噂 ―girl‘s talk―
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(1)

 雨。

 じっとりと、まとわりつくような雨の中。

 文字の通りに姦しい声が響く。


「あちゃー、すっかり遅くなっちゃったねー。やーまいったまいった」

「なにを他人事みたいに。『あと一回、あと一回だけだから!』ってセリフ、何回聞いたことやら」

「きゃははっ、てんねーん」

「む、あんたにだけは言われたくないかも」

「はぁ? なにをー?」

「うぇー、そこでとぼけますかー?」

「はいはい、そのへんにしときなよ。雨も強くなってきたみたいだし、早く帰らないと怒られるんじゃないの?」


 気付かない。


「う、そうだった。連絡すんの忘れてたぁ……あのクソ親父、自分はいっつも家にいないくせに、こういうときはうるさいんだよねぇ。ったく、うざいってーの」

「へぇ、ご愁傷様」

「わたしも忘れてたー。やばいかもー」

「……その割にはずいぶんと落ち着いてるじゃん」

「えへ。いまさらだもんねー。っていうか家族とかどーでもいいし?」

「ああ、そう。気楽でいいね」


 ソレは、――歩く。


「雨、かぁ。……そういえばさ」

「ん? なにか忘れ物でもした?」

「あは、そそっかしいもんねぇ」

「……アンタだって人のことはあまり言えないじゃん。で、なに? まさか本当に忘れ物ってわけ?」

「違う違う。あれよあれ、〝雨亡霊レイニー・ゴースト〟の噂。知ってるっしょ?」

「もっちろん! ……え、また出たの? マジで?」

「らしいよ。今度見たのは一年生だって。次はあたしたちかもねー。なんつって」


 歩く。


「キモい」

「キモいとか! あははなにソレウケるー!」

「あーもう二人ともひどーい」

「るさいなぁ。口じゃなくて足動かしてよ」

「あー、ごめーん」

あやってばやけに冷たいじゃん。あたしなんかしたー?」

「べつに」

「や、あきらか機嫌悪いじゃん? フツーに考えて」

「べつにって言ってるじゃん」

「……あそ。ま、いいけどさ」


 歩いて歩いて歩いて――、


「……〝雨亡霊〟、まさかね……」

「彩、なんか言った?」

「……なんでもない」


 気付かない。

 さしかかる十字路。

 そして。


「……あはっ」


 ソレは、にぃっと唇をつりあげた。

 ソレは、実に楽しげにわらったのだ。


 降りしきる雨が、一瞬だけやんだ。

 人影がひとつ倒れ、立ち尽くす残りはみっつ。

 続く音は、悲鳴と――、


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