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正直な話、苦戦していた。
相手は茶髪でひょろ長い、少し虚ろな目をした、恐らく男子高校生。少年とも青年とも言えない曖昧な顔立ちをしているから、消去法で高校生と判断した。
この辺りでは見ない顔。つまり、こいつは新参だ。
茶髪のこいつは背丈が百七十五センチぐらいで、結構ほっそりして痩せている。
おそらく、体重は五十五から六十キロぐらいだろう。
そして、こいつと俺が何をしているか、俺が何に苦戦しているかと言うと、
「よく……続くな……!」
「はい!」
振り下ろされるのは剣。こちらが振り上げるのも剣。
何をしているかと言えば、模擬戦だ。模擬戦。データ採取のための、模擬戦。その模擬戦で、新参相手に苦戦している。
というか、考え事をする余裕は、正直、あんまり、ない。
痩せ茶髪の力がやたら強いから攻撃を弾くだけで精一杯だ。
新参には負けたくない。
これだけ力を出しているんだから、すぐにバテるだろう。それまで相手をしよう。開戦当時はそう思った。
結果的に言えば、その計算が甘かったのだ。
……こいつ、滅茶苦茶なぐらいにスタミナがあるのだ。異常どころじゃないってぐらいに。
左、左、右、左、右、左、右、右、右。次から次へと矢継ぎ早に繰り出される斬撃は全て上から振り下ろす攻撃だ。普通、フルパワーでこんなに動きまわっていたらすぐにバテて動けなくなるはずだ。
それなのに痩せ茶髪は全く疲れる様子を見せない。鬼か。悪夢か。そう。まさに悪夢だ。
何のひねりもないシンプルな攻撃が全力で繰り返されて、こちらには殆ど余裕がない。意味がわからない。斬撃が繰り返されて、消耗するのは俺の体力だけ、だなんてまさに悪夢。悪夢だ。
その昔、とある先輩は言った。『頭を使わない攻撃はただの暴力だよ』
痛かったなあ……先輩の頭突き。
…………なんて感傷に浸っている場合じゃない。この状況をどうにかしないと。
とにかく全部弾いているけれど、もうそろそろキツい。
それにしても、全力で滅茶苦茶に剣を振り回すなんてナンセンスだ。それじゃあまさしくただの暴力だし。力のある者は、武器を手に取る者は、優しく、そして賢くないといけない。
なんでこんなことを言うのかって?
それは、二人とも改造人間だから。




