★7.また笑って
だって、泣いたら、負け。
元カノに負けちゃう。
「じゃあねっ…」
走った。涙を見られたくなかったから。陽太に見せたくないから。大丈夫だ。明日来る。陽太は必ず。信じてるもん。陽太のこと。
pipipi…
「よかった〜。起きれて」
なんか嫌な気が…。
用意は昨日やったから、着替えたりするだけ…。
あたしは朝ごはんを食べてから着替えて、歯をみがいてるとき、ふと思った。
「断りメールなんて来てないよね」
あたしは急いでみがいて、ケータイを見た。
「新着メール一件…。嘘でしょ?!」
あたしは急いで受信ボックスを見た。
春花だぁ…。安心っ!春花どうしたんだろ…?
『今日頑張れ!応援してっから!』
陽太が来るとかは、かいてなかった。
あたしに気をつかったのかな。泣く、つもりなんてなかったのに。涙が出てしまった。
よーく見れば、電話も来てた。あたしって電話あんまり出ないから、メールにしてくれたんだ。たった20文字くらいでも、凄い伝わった。頑張れを何万回言われるよりも、応援してるを何万回言われるよりも。
あたしは手でケータイを握りしめて、泣いてた。気がつくと、八時五十分で完全に遅刻。
「っ〜最悪っ!髪セットしてないし、目が真っ赤〜」
でもまぁ遅れるよりマシだね。
服の下に水着を着ていこうと思っていたけど、時間がないからやめた。自転車で、猛スピードで走った。
「九時…っ十五分。陽太…っ帰ってないよね…」
入口のところに行ってみた。怖かった。だって、陽太がいないかもしれないから。
いなかった。あたしが遅いから帰ったんだ。
絵里と一緒なんて、ありえない。となんでもいいほうへ考えてた。プルルル
電話。陽太だぁ!
今日、遅れる。とかかな。
『もしもーし。沙知だよ』
『あっ…いきなり悪いんだけど』
『んっ?なになに』
嫌な予感…。
『今日、行けない』
やっぱり。
『なんで?どうして?』
『絵里のお母さんの具合いが急に悪くなってさ。ごめん』
『なんなの?!絵里、絵里ってさ!約束したくせに。絵里がそんなに好きなわけ?元カノなのにさぁ!』
『好きだ…よ。大事だけど。沙知も好き』
『な…何?!好きな人が二人もいるわけ?!二股??よかったねぇ。こんなに使えるバカとあんなにカワイイ子。二人を彼女にしてさ』
『っ〜〜。今から行くから。待ってろよ』
『いい!来るな!陽太なんて…陽太なんて消えちゃえ!死んじゃえ!』
プッーーーーー
切れた。来なくていいって言っちゃったけど、消えちゃえって言っちゃったけど、来てほしかった。
でも陽太は来れなかった。あとひとつの横断歩道を渡れば、待ち合わせの場所に来れた。
簗木陽太というあたしの彼氏はプールの、待ち合わせ場所の、あたしの前で本当に死んでしまった。
トラックにひかれて、運転手の信号無視が、事故の原因で。
来なくていいって言ったのに、来てくれた。
ねぇ、陽太また笑ってーー…。
最・終・話でした★1話目からずっと読んでくださった方々、ありがとうございました。感謝です。本当にありがとうございました。