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不器用な森田の素敵な日常

作者: コラソン
掲載日:2026/10/02


ある時から、天使の源次郎の家に

お邪魔するとき、

「ただいまー。」と抑揚もなく言うようになった。

森田哲也35才


昔から、抑揚もくそもない。実家にいた頃は

無意識で、子供のころからそうだった。


源次郎は普通に

「お帰り」と、返してくる。


俺が、大志と酔っぱらって

路地裏で潰れていた時に

介抱してくれたのが、くそジジイのゲンサンだった。


何がくそジジイかって?


二日酔の俺と大志に

目の前の老人が、

天使の源次郎だと名乗ってきたから。


俺達は、本気でゲンサンの事を

明るい認知症のジジイだと思った。


くそなところは、まだある。

天使の呪文がクソダセェ。

尿漏れに悩んでいる。

服を後ろ前に着る。指摘してもずっと

後ろ前のまんま。


ある日、ゲンサンの家に忘れ物をした。


夜取りに行く、と連絡した。


げんさんは、「何時くらいにくるかの?」

と聞いてきた。


「19時くらいかな。

ゲンサンなんか食いたいもんあったら、買ってくから。連絡して。」

そう伝えた。


仕事が終わって、会社から出たら

雨が降っていた。


まぁ、電車だし多少雨に濡れたところで

大したことはない。


たこ焼きを買って、ゲンサンの家の近くの

最寄駅で降りる。


ホームに降りた時、

「思ったより雨に当たったな」

髪や肩が濡れていた。


改札へ向かう人混みの中、

のど飴も買えばよかったかな、

なんて思いながら改札を抜けた。


あれ?ゲンサン?


何気なく急いで、

ピッと電子音を鳴らし速足で改札を抜けた。


フワッとした笑顔のゲンサンが

傘を2本持っていた。


「てっちゃん、お帰りー、雨がふってきてなぁ

てっちゃんが濡れて風邪ひいたらって

心配で、ワシてっちゃんの傘買ってきた。ほら」

と、言いながら

ゲンサンが、傘を1本渡してきた。


ゲンサンが、俺を迎えに来ていたんだと

この時、理解した。


「ゲンサンありがと!!

けど、最近喉の調子悪いって言ってただろ?

ゲンサンこそ、雨の日に出歩いて!

風邪引いたらどうすんだよ!」

と、可愛げの無いことをゲンサンに言った。

照れもあったから。


「ワシの方が大人だから、当然

子供の世話は、しないとな」

ゲンサンは顔をくしゃっとして、笑った。


「ゲンサン、大人じゃなくて、老人だろ!

俺が、正真正銘の大人ですぅー!」


何て言いながら、ゲンサン家に向かう


ー自分で、大人だと言ったわりに

「ありがとう」も上手に言えなかった


そのかわり、

「ゲンサン喉の治り遅いんだから、

明日病院いけよ!!」

俺はゲンサンにキツめに言った。


長生きしてくれ。ゲンサン。


森田哲哉35才

未だ独身。

だけど

こんな日常は、悪くない。




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