第2話 はいはい最初の村、はいはいヒロイン?
いざ書いてみると難しい
まずは持ち物の確認を始めた。やはりモブみたいな格好に片手剣と盾、あと見た目よりも容量が大きいカバン。
いざ異世界に来るとテンプレでもワクワクした。
次にステータスを確認しようと
「ステータスオン!!」
「ステータスオープン!!」
とか叫んでみたが何も出ない。
そういえばあの女神からなんも伝えられてない。
女神を呼んでみたが風の音しか聞こえない。
そういうヤツない作品もあるか……とりあえずは最初の村を探すべく一本道を歩いて行った。
大体すぐにチュートリアルみたいな感じでスライムとか出てくるだろうとワクワクしながら歩いていたが、一向に何も出てこない。
安全なのは嬉しいけどなんか物足りない。その後、3時間歩いたが何も起こらず日は暮れていった。
流石にしんどいし、なんか凄くお腹が空いてきた。
そういえばたしか死ぬ前は夜飯を食べる前だったが、胃の中は引き継がれるのか…近くに食べれそうなものもないし、村を見つけるしかないとそのまま歩いていった。
が、限界を迎えて倒れてしまった。
あーこのまま2回目の死を迎えるのか。
と2度目の人生の短い走馬灯を見ていると、前から馬のような足音が聞こえてきた。
「ん、あえっ死体!?!?」
死体と勘違いされてしまったので、最後の力を振り絞って
「タスケテ…」
と細い声で助けを求めた。
見上げるとそこには美しい銀髪の少女が居た。
あ、これヒロインだ。絶対ヒロインだ!あの女神よりも女神だ!とか考えてたら気を失ってしまった。
目が覚めるとベットに横たわっていた。辺りを見渡していると、部屋にさっきの少女が入ってきた。
「あ、やっと目を覚ました!」
ぱっと顔を上げた銀髪の少女は、ほっとしたように胸をなで下ろした。やっぱりヒロインだ。間違いない。
「ここは……?」
「村の診療所だよ。森で倒れてたでしょ? 本当に死んでるかと思った」
村という聞き覚えのある単語に、心の中でガッツポーズを決めた。
「で、なんであんな所で倒れてたの?」
「村を探してて……」
そう答えると、少女は一瞬だけきょとんとした。
「君が向かってた方向には、馬で走って二日間は何もないよ?」
「え」
「逆に、君が来た方向に村があったんだけど……」
そりゃ見つからないわけだ。
「まぁいいや。そういえば名前は?」
「あ、ええっと……」
ここで日本人っぽい名前を出すのはなんかまずい気がした。
咄嗟に口をついて出たのは、生前使っていたハンドルネーム。
「ハ、ハイトです」
「ハイトね。僕はリル」
ボクっ娘ヒロインとか最高かよ。テンプレ異世界も悪くない。
「で、ハイトはどこから来たの?」
「えーっと……東の小さな国だよ」
テンプレ回答。ここは深掘りされないのがお約束――
と思ったのに、リルは少し首を傾げた。
「東って……どの国?」
「あ、え?」
聞かれると思わなかった。
「えっと……名乗るほどの国じゃないというか……」
「そうなの?」
リルはあっさり納得したように頷いた。
「ハイトって、変な人だね」
「そ、そうかなぁ」
ギリギリで耐えた。変な人で済んでよかった。
「まぁいいや。それより次は、ちゃんと目的地決めてから移動したほうがいいよ」
「ごもっともです…」
「疲れてるだろうし宿に移動してお風呂でも入って休みなよ」
異世界にお風呂ってあるんだ…とか思ったが言われた通り宿に行くことにした。
宿に着いたが、よく考えたら俺は一文無しだった。
「リル…俺お金もってなくて…」
「しょうがないなぁ じゃあ私と相部屋でもいい?」
「……はい?」
今、なんて言ったのか一瞬理解できなかった。
「え、相部屋?」
「うん。部屋余ってないし」
この子大丈夫か?危機管理が甘すぎやしないか?
俺が思考停止している間に話は勝手に進み、気づけば二人で同じ部屋に案内されていた。ベッドは二つ。ちゃんと二つ。よかった。最低限の理性はこの世界に残っていた。
「先にお風呂入っておいていいよ」
「え、いいの?」
「倒れてたし、疲れてるでしょ?まだ僕やる事あるから」
優しさがヒロインすぎる。俺は言われるがまま浴場へ向かった。
異世界の風呂、正直なめてた。
木の浴槽に、ちゃんと温かいお湯。普通に気持ちいい。
肩まで浸かってぼーっとしていると、背後で戸が開く音がした。
「え?」
「入るよー」
軽い声と同時に、足音。
「ちょ、リル!?」
「なに?」
普通に入ってきた。衝撃で脳がフリーズする。
まずい、このままではR指定作品になってしまう。
「い、いやいやいや!ここ風呂!」
「うん」
「一緒に!?」
「相部屋なんでしょ?」
理屈が強引すぎる。
「いやそれでも――」
そこで、違和感に気づいた。
リルの大事なところが、致命的にテンプレ外だった。
俺のヒロインは男だったみたいだ。いや、女の子と勘違いした俺が悪い。残念だと思った自分が憎い。
風呂からあがってベッドに入ったがなかなか寝付けなかった。
隣のベッドから聞こえてくる寝息を聞きながら、俺は一つ確信していた。
この異世界、俺が思ってたよりずっとテンプレ通りに行かない。飽き飽きしたテンプレ異世界を、俺は少し恋しく思うようになっていた。




