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ナノマシンとのんびり異世界冒険譚~魔力ゼロでも超能力でなんとかします~  作者: 阿良あらと


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第八話


 ラベルダは生粋の人殺しだった。

 魔物や魔族、獣人、エルフ、その他全ての他種族に興味を持てない、ただただ同族を殺すことに快感を覚える男。


 そんな彼にも、つい半世紀前までは居場所があった。

 人族同士が覇権を取り合う戦乱の世。同族を殺せば殺すほど称賛された彼にとって、天国のような時代だった。


「なんで終わったんだろうなぁ……最悪だよなぁ……」


 殺した青年の皮膚を奪い、顔を変える技術。昔は潜入工作における神のようなスキルだと称賛された。

 だが、今の平和ボケした世の中では最低だと、サイコパスだと糾弾される。

 ましてや同族を〝たった数人”殺して以来、指名手配され、十人を越えた頃には「殺人鬼」として全大陸で居場所を無くした。


「俺は何も変わってないのに。最悪だと思わないか?」


 ベリベリと音を立ててディレイのデスマスクを剥ぎ取りながら、ラベルダは二人の少年少女に問いかけた。

 受験生の中でも突出した魔力量の持ち主だが、戦争時代ではざらにいるレベルだ。少しは楽しませてくれるだろうか、と彼は深く刻まれた目じりの皺をさらに伸ばした。


「リリィ、こいつはたぶん〝違う”」


「うん、私もそう思う。どうする?」


「……ほう?」


 強めの殺気を当てたはずだ。ラベルダは感嘆の声を漏らした。

 少年少女に耐えられるようなプレッシャーではない。大人でも腰を抜かすレベルだ。


「つまり、それだけ強いという事か、のっ!」


 ぷっ、と老人とは思えぬ肺活量で、口から針を飛ばすラベルダ。

 狙ったのはリリィと呼ばれた少女。本気で殺し合うなら魔力量の高い少年を残した方が面白そうと判断したからだ。


「〝リリィを狙うことは分かってた”」


 パキィンと音を立てて針が軌道を変えた。

 近くの木に刺さり、刺さった個所を猛スピードで腐らせる猛毒が広がる。


「全方位の結界を無詠唱で張るとは、優秀な子供達だな」


 ラベルダは自身がだんだんと気分良くなっていくのを感じた。あの頃と同じ緊張感、あの頃と同じ高揚感が脳を支配していく。


「毒使いラベルダ。貴様らの死神だ」


「ちっ、やはりそうか。この大陸の指名手配書は全て確認していたが、人相が違ったので判断が遅れたな」


 アルビィはわざとラベルダに聞こえる声で興味を引き、言葉の途中で風の刃を彼に放った。

 同時にリリィがアルビィの魔力の動きを誤認させるために、上空に魔力の塊を放つ。


 二人が魔物狩りの為に考え抜いた必殺の連携だった。理論上、どんな生物でも風の刃を感知する事は出来ないレベルに仕上げたと自負していた。


 だが、ラベルダは避けた。

 刃を弾いた訳でも、受け止めた訳でもない。存在を認識し、半歩ずらすだけで的確に避けたのだ。


「なっ!?」


「なんで気づいた、という顔だな?」


 ラベルダの口の端がにぃと上がっていく。死神と名乗るに相応しい、他者を不快にさせる表情。少年少女の顔が初めて恐怖に歪んだ。


「戦場ではあらぬ方向からあらゆる武器が飛んでくるもんでな。魔力を放出して感知する技術は常識なのよ。一流の冒険者でも使える者は多いだろう。君達の驚く顔が見えて私は嬉しいよ」


 ビュンビュンと、ラベルダの言葉を遮るように風の刃が飛び交ったが、彼はグネグネと軟体動物のように身体を動かしながら喋り続ける。

 決定的な経験の差。人を殺してきた数の違い。


「アルビ――」


「遅い、ねぇ?」


 ラベルダの問いかけがリリィの耳元で囁かれた瞬間、


「あっ……」


 少女の小さな吐息と共に、鮮血のシャワーが吹きあがった。


 リリィの身体が崩れ落ちる――否。

 崩れ落ちたのは、ラベルダの身体だった。


 首がパックリと平行に裂け、支えを失った頭部が空を見上げるように折れ曲がっている。辛うじて魔力回路は繋がっていたが、血の噴出を抑えれば生きていることがバレてしまう。亜空間に潜ませていた輸血パックで強制的に増血するしかない。


(なんで……気づかな…か……った)


 口から血の泡を吹きながら、ラベルダの思考が明滅する。

 魔力感知は怠らなかった。足音も聞いていた。

 周囲の受験生や監督官を担っている冒険者の位置も把握していた。


 少年少女の近くには、魔力を持たない、体つきも戦闘に相応しくない青年が一人いただけだ。

 だから、風景の一部として認識から除外していた。


「あっ、もしかしてこの人って試験官だった?」


 黒髪の青年は、虫でも払ったかのような手つきで、少し気まずそうに言った。


 ラベルダがその青年を見た瞬間、彼の瞳の奥にある〝何か”を覗いた――いや、覗いてしまった。

 そこにあったのは、一つの戦場の恐怖をかき集めて煮詰めても得られない何か。

 まるで一人を何千回何万回も拷問し、殺し、生き返らせ、精神を壊し、直し、また壊した先に存在する化物を目の前にしたかのような感覚。

 絶対的な終わり。


「……しに………がみ」


 ラベルダの最後の言葉は誰にも届かず、空へ向かって消えていった。


 

インフルで倒れていました。コメントのおかげで早めに立ち直れたので、これからまた更新頑張っていきます!よろしくお願いします!

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