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ナノマシンとのんびり異世界冒険譚~魔力ゼロでも超能力でなんとかします~  作者: 阿良あらと


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第四話

 ブラックドラゴンの解体が思うように進まず、黄金の休日は野営することとなった。

 魔法により土壁を作り、草原の草で屋根を作っていく。

 超能力と違い、家ができるまでの全ての作業を一枚の魔法陣に収めているので、巻物に魔力を込めれば全自動で完成するという。


「メグルはウチとニーニャが一緒に寝るから」


 すっかり気に入られてしまったが、流石に異性と寝室を共にできる勇気はなかったので、丁重にお断りをしてバルトと寝ることになった。


 バルトは鎧を脱ぐと筋肉質な身体が剥き出しになり、数多くの古傷は中二病の心を強く揺さぶった。こんな男に俺はなりたい。


 窓から二つの月、青と赤の奇麗な衛星が見える。

 草のベッドに寝転んでいると、バルトが声をかけてきた。


「なぁメグル、自由を手にした今、お前は何がしたい?」


「あー、逃げるのに必死で何も考えてなかったけど、そっか、何でもできるのか……」


 中学一年生で人生が停滞している。身体は少しばかり成長したが、心は中学生のままだ。できる事ならやはり――。


「学校に行ってみたいかな。この世界にも学校ってある?」


「ああ、もちろんだ。魔法学園、騎士育成所、冒険者学園。戦争のない現代社会では全ての国民が自由に職業を選べるんだ。もちろん多くの職業が学校を卒業し、試験に突破する必要はあるがな」


「魔法……か。俺にも使えるのかな」


『メグルの体内には魔力の源となるマナが存在しません。残念ながら魔法を使うのは不可能でしょう』


 枕元で丸くなっていたナノ子が、すまなそうに答えた。


「そっかー、騎士育成所を卒業したら何になれるの?」


「ほとんどの生徒が故郷に帰り、その土地の貴族に忠誠を誓うだろうな。中には国王に仕えたり大陸騎士と呼ばれる特権を持つ騎士になる奴もいるがな」


「うーん、ちょっと想像つかないな」


「だったら、冒険者学園に通ってみるか? ちょうど募集期間だし、この世界の常識を学べるぞ」


『ナノ子も推奨します。同年代と学ぶことはこの世界で生きる上で貴重な経験となるでしょう』


「……じゃあ、そうしようかな」


 ポンと、バルトの大きな手が俺の頭に触れた。


「俺が保護者になってやるよ。これでもA級、いやブラックドラゴンを討伐したからS級の冒険者になるかもな」


「バルトが俺の父親ってこと?」


「そんな年齢じゃねぇよ!? 兄貴でも良いだろ?」


「うん、ありがとう、バルト兄さん」


「じゃあ、今日からお前はメグル・クロノスだ。西の大陸に実家があるんだが、一応は貴族の家名だ。貴族の子とトラブった時に役立つかもしれないからな」


「クロノス。メグル・クロノス……」


 なんてカッコいい響きなんだ。中二心が天井知らずに昇っていく。

 俺はこの日、研究所に送られて以来、久々に良い夢を見た。


 顔も思い出せない家族が俺に手を振り、別れを告げている。

 その表情はお互いに明るく、向かう先は別々の道だったけど、少しも寂しくなかった。未知の先にはバルトや黄金の休日のメンバーがいて、俺を笑顔で迎え入れてくれた。


 ◇     


 翌日、ブラックドラゴンの解体を終えた俺達は、中央大陸でもっとも大きな国へと帰還した。


 神聖アルディア王国。


 丘を越えた瞬間、俺の視界いっぱいにその偉容が飛び込んできた。

 見上げるほど高い白亜の城壁がどこまでも続き、その内側には無数の尖塔と色とりどりの屋根がひしめき合っている。


 人口百万人を越えるという大都市、王都アルディア。


 空を見上げれば、荷物を抱えた飛竜便が編隊を組んで飛び交い、街の至る所から魔法の光が淡く立ち上っている。

 風に乗って流れてくるのは、活気あふれる喧騒と、どこか甘いスパイスのような異国の香り。

 円形に広がる市街地の中心部、その心臓には、雲を突くような巨大な王城が鎮座していた。朝日を浴びて輝くその姿は、かつて俺がゲームやアニメの中で夢見た「ファンタジー」そのものだった。


「すげぇ……本当に、異世界なんだ」


 圧倒的なスケールと、溢れ出す生命力。

 俺の第二の人生は、この輝ける場所から始まるらしい。


 王都アルディアは東西南北中央の五つのエリアに分かれており、バルト率いる黄金の休日は南部エリアの冒険者ギルドに所属している。

 南部エリアは人種関係なく居住出店が可能である為、アルディアの玄関として人と馬車で溢れていた。


「アルディア冒険者ギルド南エリア支部へようこそ! って、バルトさん!」


 受付嬢がバルトの姿を確認するなり、手元のベルを思い切り振り回した。するとギルドの奥から大量のスタッフが飛び出してきて、ギルドメンバーの武器や荷物を運び始めた。


「ああ、びっくりしたか? 一応俺達はこのギルドの筆頭パーティだからな。対応も特別なんだよ」


 バルトが鎧を脱ぐと、スタッフが手早く回収し何も言わずに去っていく。俺をメンバーの一人だと勘違いしたスタッフが両手を差し出すが、特に渡すものがなくて戸惑っていると、バルトが口を挟んだ。


「こいつは特に荷物はない。俺の養子にするから書類を用意しておいてくれ」


「かしこまりました」


 スタッフは表情一つ変えず、深々とお辞儀をして去っていく。異世界の仕組みはもっと雑で大らかだと思っていたから驚きだった。

 呆気に取られていると、ギルドの奥から赤髪ロングの美しい女性が飛び出してきた。フィットした黒のパンツに胸が飛び出しそうな白のブラウス、両手に着けた皮の手袋が色気を強くしている。


「よぉ、バルト。そんなにボロボロってことは任務失敗かい?」


「勘弁してくださいよ、カミラさん。失敗ならもっと早く救援要請出してますよ」


 バルトの言葉に、ギルド内にいた冒険者やスタッフがピタリと止まる。


「おい、マジか……」

「聞いたか?」

「ということはまさか……」


 ゴクリ、と。皆がバルトの言葉を待つ。

 バルトは深く息を吸うと、建物の端どころか奥の部屋にまで届く声で、


「ブラックドラゴン討伐成功だ!」


 と、ギルドメンバーが持っていた角を掲げた。

 うぉおおおおおおっ、と建物を揺らすような歓声が上がった。


「すげぇ! やるじゃねぇか!」

「ついにS級討伐! おめでとうございます!」

「こりゃあお前らがS級パーティになるのも夢じゃねぇな!」


 冒険者達が次々に賛辞を送ってくる。どうやらギルドとは会社で冒険者は社員のような仕組みらしい。嫉妬しているギルドメンバーはほとんどいないようだ。


「……そうか、それは素晴らしいな」


 カミラと呼ばれた女性、バルトの態度や言葉遣いから明らかにギルド内でも地位の高い人だろうことは分かるが、彼女は少し考え込んだ後、


「よし、執務室へ行くぞ。……その少年も一緒だ」


 と、なぜか俺についてくるように指示を出した。


「え、良いんですか? ついていって」


「ああ、カミラさんにはバレている。だから説明しないとな」


 なるほど、そういう事か。

 ギルドの中で唯一、俺の超能力でも一撃で倒せそうにない人物だとは思っていた。身体の周囲に魔力によるものだろうか、何重もの障壁が張られており、精神感応も阻まれている。


 この人は理解している。黄金の休日ではブラックドラゴンを倒せない事も、俺が代わりに討伐したことも。


 ルール違反を問われたら俺が罰を受けることで黄金の休日は守ろう。

 痛みや苦しみには慣れている。兄貴は俺ほど痛みに強くないからな。

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