プロローグ『さようなら地球』
【閲覧制限:主任研究員A 生体認証ロック済】
【件名:実験体888号(日本人)に関する経過ログ】
西暦20XX年 4月10日
また計測器が壊れた。限界値を突破し、内側から破裂したのだ。
まったく、予算がいくらあっても足りない。
それにしても、最近の日本のガキ共はどうなっているんだ?
若年層における超能力の発現率が異常に高い。
やはり、あの国特有の「ゆとりある教育」とやらや、アニメだのゲームだのといった妄想を肥大化させるコンテンツが影響しているのか?
まあ、学術的な興味はどうでもいい。
こいつのエネルギー量は桁違いだ。感情が少し揺らぐだけで、大陸プレートごと研究所が沈みかねない。
早急に「制御装置」をつけなければ、私の命が危ない。
西暦20XX年 6月15日
ようやく思考制御デバイス『首輪』のインストール手術が終わった。
脳と全身にナノマシンを寄生させ、思考ごとがんじがらめにする最高の拘束具だ。
自殺しようとすれば強制的に生かされる。これでようやく、彼を安全な「モルモット」として扱えるというわけだ。
そういえば、上層部からつまらない通達が来た。
「これ以上、日本人の未成年を誘拐するのはリスクが高い。今いる実験体を丁重に扱え」だと。
現場の苦労も知らないで勝手なことを言ってくる。
まあいい、『首輪』の完成が間に合ってよかった。これで補充の心配なく、思う存分使い潰せる。
西暦20XX年 12月24日
世間はクリスマスらしいが、私は実験室だ。
連日の耐久テストで888号の精神はボロボロだが、能力値は安定している。
『首輪』の学習機能は素晴らしいな。暴走の予兆を0.01秒単位で摘み取ってくれる。
もはや、こいつに自我なんてものは不要だ。
明日の最終調整が終わったら、人格データを初期化して軍に引き渡す。
これで私も昇進間違いなしだ。
最高のクリスマスプレゼントになりそうだ。
西暦20XX年 12月25日(自動音声記録データ)
「……おい、なんだこれは。バイタルが消えている?」
「心停止? いや違う、センサーが対象を認識できていない!」
「予備電源だ! 早く対象を落とせ!」
《システムエラー:管理者権限が剥奪されました》
「ログを見ろ! 外部ハッキングか!?」
「ち、違います……内部です! デバイス直結……メインスクリーンに文字が!」
『¶§†‡µΩ≈ç√∫˜µ≤≥÷×±¬˚∆˙©ƒ∂ßåœ∑´®†¥¨ˆøπ“‘«¡™£¢∞§¶•ªº–≠åß∂ƒ©˙∆˚¬…æ≈ç√∫˜µ≤≥÷åß∂ƒ©˙∆˚¬…æ≈ç√∫˜µ≤≥÷¶§†‡µΩ≈ç√∫˜µ≤≥÷×±¬˚∆˙©ƒ∂ßåœ∑´®†¥¨ˆøπ“‘«¡™£¢∞§¶•ªº–≠åß∂ƒ©˙∆˚¬……
……プロセス実行』
「は? 誰の悪戯だ!」
「ダメです、デバイス『首輪』が全システムを掌握……早すぎる、こちらの演算が追いつかない!」
《警告:局所的重力崩壊を検知。座標、実験室中心点》
「重力崩壊だと!? 空間が歪んでいる……まさか、こいつら何をする気だ!」
「エネルギー値、測定限界突破! 止めないと研究所が消し飛びます!」
「止めろ! おい888号、貴様ァァァ!!」
『合意ヲ確認。
空間切断プロセス……承認(Accept)。成功。
検索:ホモサピエンスの生存ニ適シタ座標。
……No.No.No.No.
条件緩和:ナノマシン補正ニヨル生存可能領域マデ拡張。
……No.No.Yes.No.Yes.No.
選別:マスターノ嗜好データト照合。
>未知ノエネルギー:検出
>巨大生物:多数
>多様ナ亜人種:確認
>マップ広域性:地球比3000%
最適解)ヲ発見。 マスター好ミノ世界デアルト判断シマシタ。 コレヨリ空間転移ヲ実行シマス。
空間転移ニヨル肉体ノ欠損リスク:許容範囲内
空間転移ニヨルナノマシンノ欠損リスク:許容範囲外
マスターノ肉体オヨビ精神面ノ安定ヲ優先。
実行開始。
警告:転移反動ニヨリ、半径5キロメートルガ消滅シマス。
職員ノ皆様。コレハ、マスターヲ虐待シタ報イト認識シテクダサイ。
――ゴキゲンヨウ』
「ひ、光が……身体が透けて……」
「嫌だ、助けてくれ、たすけ――」
(記録終了:当該時刻、研究所を中心とした半径5キロメートルの空間が消失。クレーター等の痕跡はなく、地盤ごと『抉り取られた』状態で発見される)
SF風に始めましたが、普通に異世界ライフを楽しむ系のストーリーにしたいです。応援よろしくお願いします。




