第74話 地下の広間
「さすがに、橘さんたちはこれじゃあ通れないよなー。仕方ないから、全部片付けるか」
雪崩のように階段から落ちてくるモンスターの奔流は、いまだに健在だった。
ちゃちゃっとジャンプで階段をショートカットして降りるのが、早すぎたのかもしれない。
なので、俺は錆丸を振るう速度を一段階引き上げる。
空間を縦横無尽に行き来する錆丸の軌跡。
高速で移動するそれで、階段の下に、まるで半球状のバリアのようなものが擬似的に現れていた。
モンスターがその縁に触れるそばから撲殺され、煙へと変化していく。
──これだと、錆丸を振り回す速度が速すぎて、殴っている感覚すらないな。つまんないわ……。
命を捧げてくれているモンスターさんたちには悪いが、俺はそれをあまり楽しめていなかった。
──やっぱり一撃一撃、殴り応えのある敵を殴り殺すのが一番楽しいんだよな。願わくば、この扉の先にそういう敵がいてくれると良いんだけど。
そんなことを考えていると、ようやく雪崩れ込むモンスター達の姿が完全に消える。
そして、階段の上の踊り場の所の一部に、視線が向けづらい場所が出来た。たぶん、そこに橘さんたちがいそうだ。
「橘さんたちは大丈夫ですかー?」
俺が声をかけると、姿が見えないままに二人の声が近づいてくる。
「──流石ですね、思水さん。あれほどひしめき合っていたモンスター達を、傷一つ負わずに、しかもこの短時間で殲滅するなんて……」
エミリーさんの驚いたような声。
「思水さん、また強くなりましたか? それとも私といるときは、遠慮して動かれていたのでしょうか?」
「ほらほら、いちかさん。拗ねてはダメですよ」
「だって……」
なんだか橘さんとエミリーさんが仲良くなっている気がする。何かあったのかもしれない。
「あー。ここ最近、調子が良いのと、橘さんがしっかり休憩をとるようにしてくれたお陰かな」
「まぁまぁっ」「──」
俺の回答に、なぜかエミリーさんの声だけがして、橘さんからは返事がない。特に俺は何も変なことは言っていないはずだ。
何で無言なのだろうと悩んでいると、不自然な無言の間が出来てしまう。橘さんから伝わってくる気配に、少し違和感を覚えてしまう。
「──あー、このドアの先が目的地みたいなんだけど、二人とも準備はいいかな?」
「もちろんです。思水さんがここまでの道を切り開いて下さったので、いつでも行けます」
「私も問題ありません。ベノタンも準備できています」
「──よし、じゃあ開けるよ」
違和感は気のせいかなと思って、俺は目的地たる背後のドアを開ける。事前に見た地図によると、広間のようになっているはずだ。
開いたドアの先。そこは、たしかに事前に調べた通り、広間っぽい作りの地下室が広がっていた。
その広間の中央。そこに、仲良くこちらを向いて立っている一匹のモンスターと、一人分の人影。そして、なぜか複数の撮影ドローンが飛び回っていた。




