第72話 撲殺開始
俺は縦横無尽に錆丸を振り回し、手当たり次第にモンスターを叩き潰していく。
なんだかどこかで見たことのあるモンスター達のオンパレードだった。
──本当に各地のダンジョンから出てきたみたいだなー。俺に撲殺されに来てくれるとは親切なことで。
周囲四方八方からだけでなく、上空から鳥やらコウモリみたいなモンスターも来てくれるし、虎っぽいどこかで見たことのモンスターも飛びかかってくる。
お陰で、錆丸を一振りすると数匹のモンスターをまとめて撲殺できるので、とてもお得だ。
──何より、橘さんたち以外、周囲に人が誰もいないのが最高だよな。撮影ドローンの画角を避けるのに比べたら、モンスターの攻撃を避ける方が格段に気を使わずに出来るし。
軽く体を回転させながら錆丸を振り回すだけの簡単な撲殺。
その分、ちょっとずつ物足りなくなってきさえしてしまう。
──いかんいかん。モンスターさんたちが自ら命がけで撲殺されに来てくれているのに、退屈だなんて思うなんて。お相手に失礼だし。
どうやら、遠慮なく撲殺していたせいで、門からモンスターが出てくる速度を撲殺する速度が上回ってしまっていたようだ。
モンスターが襲ってくる密度が落ちて来ていて、それが退屈に感じてしまう要因だった。
──そうだ。進みながら殺っていこう。そうしたら目先も変わるし、モンスターの襲ってくる密度も戻るかも。
俺は錆丸をぶんぶん振り回しながら皇宮へと入っていく。
──たぶん、橘さんたちはあそこら辺だな。視線が向けにくいし。
橘さんのユニークスキル隠連慕の特性から逆算した二人の位置から、ちゃんと着いてきてくれるのを確認すると、俺は心置きなく皇宮の中でも撲殺に勤しむのだった。




