第71話 皇宮到着
「ここが、皇宮か──そういや初めて来たかも」
どこか古めかしいながらも近代的な設えの半開きの門を見上げながら俺は呟く。ただ、所々に大きめの傷や焦げ目がみえていて、そのさらに上空には無数のモンスターが空を舞っている。
「先輩、私はここまでです」
「たみちゃん、ありがとう。絶対、無事に帰ってください」
「もちろんです! 先輩こそ、御武運を」
「巫烙印さん、送ってもらってありがとうございます」
「はい。山門さんの活躍を間近で見られないのは残念ですが、私もせいぜい暴れて来ます」
そういって槍を掲げて良い笑顔を浮かべる巫烙印さん。
聞いたところによると、巫烙印さんはこのあとは、ここに迫ってきているモンスターのうちの一群に、撹乱をかけに行くのだとか。
俺は、なんとなく伸ばした錆丸を巫烙印さんの方に捧げるように差し出す。
最初不思議そうにそれを見ていた巫烙印さんだったが、すぐに満面の笑みを再び浮かべて、俺の差し出した錆丸へ自分の槍を軽くぶつけてくる。
かーんと良い音が響き渡る。
それはまるでこれからの巫烙印さんの活躍を祝福するかのようだった。
そのまま、巫烙印さんは颯爽とバイクで去っていく。
出会ってからの時間はとても短かったが、どこか自分と通じるものがあるのか、その背中を見送るのが少し寂しい。
──そりゃそうか。これが今生の別れかもしれないんだしな。さ、俺も気合いをいれなければ。
俺が気を引きしめていると、橘さんと鏡を抱えたエミリーさんは早速その姿を隠連慕で消している。
そして俺の耳元で、橘さんがささやく。
「──ずいぶんと巫烙印さんと仲良くなられたんですね。思水さん」
「え、いや、そんなことは、無いですよ? 橘さん」
「一緒にバイクに乗られている間もとても親しげに見えました」
「いやいや、ほら、それはバイクの運転の邪魔にならないようにね。巫烙印さんがああしろと……」
「言われるがままだったんですね」
「ご、語弊が──」
「はい、お二人ともじゃれ合うのはそれぐらいになさってください。来ましたよ」
姿を消したエミリーさんに止められる。
その止め方に腑に落ちないものを感じながらも、俺も気がついていた。
半開きの皇宮の入り口の門が完全に開き、そこからモンスターが溢れるようにしてこちらへと迫ってきたのだ。
それは、楽しい楽しい撲殺タイムの始まりだった。