第47話 錆
もぐら叩きを初めてからしばし後。
「慣れてくると、これはこれで楽しいかもしれない。……きりがないけど」
もぐら系のモンスターは絶えることがないのかというぐらい、次々に沸いてくる。それを俺は錆丸で叩き潰していた。
ただ、すぐに地面の中にモンスターの頭が引っ込むので、無駄打ちも多い。そうすると叩く感触が単なる土になるので、叩く楽しさは半減といったところだった。
──橘さんは……うん、大丈夫そうだな
見ると、橘さんはちょうどアイスピック状のナイフで、顔を出したもぐら系モンスターを串刺しにしていた。
刺されたもぐら系モンスターは、激しく痙攣するも、すぐに動きを止めている。煙にならないところをみると、ベノタンの毒だろうか。
──麻痺させた?
橘さんがアイスピック状のナイフを使って、地面の中から麻痺させたモンスターをほじくり出している。
「──思水さーん! 何か、地面の中に、繋がっていますー!」
俺の方へと手を振りながら、ほじくり出したもぐら系モンスターの方を指差す、橘さん。
「──でかしたっ! こいつら、もぐらじゃないのか。植物だな、これは」
俺は沸き続けるモンスターの攻撃の隙間を狙って、橘さんがほじり出したモンスターを確認する。
明らかに根のようなものが、その体に繋がっていた。
どうやら、俺がもぐらだと思っていたのは植物の根菜みたいな物なのだろう。
「だとすると、どこかに本体の植物があるはず……」
俺は橘さんがほじり出したモンスターの根のつきかたと、これまで叩き潰したモンスターの場所を頭の中で合わせていく。
叩き潰した記憶は、とても鮮明に記憶に残るので、数が多くてもそれはさほど難しい作業ではない。
「──たぶん、ここだ」
俺はそれらを合わせて推測される本体の場所へと移動する。
それはちょうど先ほどの、ぬかるんでいる場所だった。
「小賢しいな。少しだけぬかるんでいる場所と乾いた地面があれば、普通は避けるって算段かね?」
俺は思いっきりぬかるみに錆丸を突き刺す。
「錆丸。貫け」
手のなかで、錆丸がまるで剣のように鋭く尖りながら、その刃が伸びていくのが直感的に、わかる。
──収納するときだけじゃなく、本当に俺の意思に従って形を変えるんだな、錆丸……そうか。錆丸が普段、攻撃時に金属の塊なのは、俺が鈍器を望んでいるからか……
その時、何かを貫いた、はっきりとした手ごたえが伝わってくる。
地上部分に出ていたモンスターが同じタイミングで全て、煙へと変わっていく。
「やりましたね、思水さん!」
「──おお、倒したみたいだ」
俺は橘さんへ答えながら錆丸を普通の大きさに戻すと、ぬかるみから引き抜く。
すると不思議なことが起きていた。
錆丸を覆っていたはずの錆が少しとれて、所々、鈍い輝きを発しているのだった。




