第41話 新たな仲間
俺たちが壺にレッドオーガの魔石を入れた瞬間だった。
ぴかぴかっと短く壺が光る。
この前の、ベノタンが出来たのと、同じ光だ。
「反応しました! 反応しましたよ、思水さん!」
「そうだね」
橘さんのテンションが高い。
自分一人で試したときに何も起きなかったことの反動だろうか。
俺の両手を掴んで、ぴょんぴょんと跳ねながら子供のようにはしゃいでいる橘さんは、まあ、可愛らしいとは言える。
なぜかベノタンまで、その橘さんの足元で同じタイミングでぴょんぴょんと跳ねていた。
「やっぱり、思水さんとじゃないとダメみたいですね」
「えっ──あ、ほら。壺から出てくるよ」
しっとりと湿った視線を感じて、思わず話題を変えてしまう。
実際、壺から何かの頭が出ているのは本当だった。
ベノタンは、出てきた時から橘さんに従属している雰囲気だったが、次もそうとは限らないだろう。
いざという時はと、俺は緊迫感を持って事態の推移を見守る。
俺と手を繋いだままの橘さんが、そんな俺の拳をそっとさする。
「ありがとうございます、思水さん。でも、この新しい子も、大丈夫です」
俺が考えていることはバレバレらしい。もしかしたら、僅かに拳に力が入ってしまっていたのかもしれない。
「──わかった」
見上げてくる橘さんに、苦笑して告げる。
「はい。ね、きみもおいで」
俺の手を離した橘さんが、壺からよっこしょっと抜け出したそれに向かって手を差し出す。
とことこと近づいてくるそれは手のひらサイズのミニチュアな牛だった。
まるでぬいぐるみのような見た目。
「思水さん、この子の種族は牛頭みたいなんですけど──お名前はどうしましょう?」
そういって手のひらに乗せた牛頭を見せてくる橘さん。
──牛頭って、牛の頭をした鬼じゃなかったっけ? サイズ以外は牛のぬいぐるみにしか見えないんだが……というか、名付けるのはやっぱり俺なんだ……
自分のネーミングセンスが壊滅している自覚がある俺は、これはどんな罰ゲームかと思いつつ、フッと思い付いたことをそのまま口にしてしまう。
そしてすぐに恥ずかしくなってくる。
「ゴズゴズ、とかは」
「ふふっ。かわいいですね、思水さん。ゴズゴズ、よろしくね?」
「ぶもっ」
何だか俺が可愛いと言われたような気がしたが、そこは、気にしたら負けだろう。
ただ、ゴズゴズはその名前を受け入れたようで、橘さんの手のひらの上でのんびり鳴いていたのだった。




